「月火水木土天海冥2 テレビまんが20年のたくらみ」

(2007-10-20)

マッド・テープって何なのさ?

 僕に関する限り、ことの発端ははっきりしている。時は、1970年代にさかのぼる。そのころ仲間うちで流行っていた「タイムボカン」の“今週のハイライト”の部分を、僕は毎週録音していた。テープ代を節約するため本筋はすっとばすという荒技だ。主題歌も当然、中身をすっとばす。あるとき偶然、頭と尻がぴったり合って、始まった途端に終わってしまうアレが出来てしまった。さっそくこれを友人たちに聞かせたら受けた。それで、味をしめた。

 流行歌を無理やりメドレーにしたような「ソウルこれっきりですか」とか「演歌チャンチャカチャン」という曲が流行っていたので、これにテレビから録音したCMなどを切り貼りして遊んだりしていた。

 この趣味は高校に入ってからも続いた。「宇宙戦艦ヤマト」がブームになれば歌詞のすり替えをやり、「ルパン三世」のテーマに歌詞が付いたら曲を重ねて微妙な音程になるのを面白がった。アニメに限らず、山口百恵の「プレイバックPart2」とか、ピンクレディーの「透明人間」なども切り貼りした。このテープも今もどこかに眠っている。

 その当時、こういうことをやって楽しんでいた人は他にもいたんじゃないかと思うんですけど、どうなんでしょう? ハウサーの中に大勢いそうな気がするけども。

「たくらみ」のはじまり

 そういうテープを、どのタイミングで吉村に聞かせたのかは思い出せないけれども、とにかく聞かせたに違いない。それで、次の「月火水木土天海冥」はカセットテープにしようということになったんだと思う。

 吉村のEPやLPのコレクションから録音したものを素材にして、過去に作ったものでも一から作り直した。タイトルは、このときに使った「テレビまんが主題歌のあゆみ」のもじりだ。僕の記憶では「たくらみ」というのは吉村が考えついた。絶妙のネーミングだと思う。

メーキング

 テープの切り貼りは、紙の切り貼りとは違って一発勝負の世界だ。テープを物理的に切ったり貼ったりせずに、ダビング中にポーズしてつなぐというやり方だったから、つなぎに失敗すると前に戻ってやり直すことになる。ヘッドホンを付けて黙々と作業する。一曲出来たら相手に聞かせて反応を見る。そういうことを徹夜で繰り返した。

 これまでどの曲をどっちが担当したのかは公表していないので、ここでも黙秘するけれども、吉村が作ったものの方が理屈抜きに面白い。特にアレのタイミングとか、アレの間奏部分とか。

 切り貼りばかりじゃつまらないので、混ぜたり切り換えたり回転数を変えたり逆回転にしたりと、考えつく限りの手を使った。完成した時は、ここまでやったぞ(もうこれ以上は無理)という達成感があった。

意外な展開

 ところが、マスターテープが完成した後も、作業は続いた。安売りのカセットテープをまとめ買いしてきてダビングする。ジャケットと歌詞カードをコピーして手作業で折り畳んでケースに入れる。周囲にいる人をどんどん巻き込んでいくのが吉村の凄いところだ。コミケに参加し続けて、着々と「たくらみ」を広めていったのも全部吉村だ。

 校内放送で流して機器のトラブルだと思ってあわてて停めたところがあるとか、運転中に聞いていて事故りそうになったとかいう話を聞いて、僕はただ喜んでいるだけだ。意外な人が「それ知ってる」とか「ダビングを持ってる」とか言っていたなんて話も伝わってきて、予想以上に広まってるんだなと思っていたら、そのうちに「たくらみ」とか「マッドテープ」という言葉がWebの一部で飛び交うようになってきていた(というのがまた一昔前のことになってしまったか)。

 誰でもパソコンを使えば、音声や映像を素材にして、こんなことやあんなことまでできてしまう。そういうソフトを見て、また何か作ってみようかなという気になることもあるけれど、あれ以上に面白いものができなきゃ意味がないので、結局、本気で作ろうとまでは思わない。僕が思いつく程度のことならどこかで誰かがとっくにやってるという気もするし。


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