――鉢かづきは、物ぐさ太郎を導きながら、次のように語った。
これから参りますところは、私がお仕えしている御方の御殿です。このような姿になって家を追い出され、行くあてもなくさまよっていた私を、その御方が拾ってくれたのです。
この鉢は、母上が亡くなるときに手箱から取り出して私の頭に乗せてくださった形見の品です。不思議なことに、どんなに引っ張っても頭から離れないのです。母上は観音様を信心しておりましたので、何かいわれがあるのだろうと思います。
母上を亡くしたうえに娘の私までこんなことになってしまったので、父上は長く嘆き悲しんでおられました。ところが、継母が来てから、父上は急に私につらくあたるようになりました。そして、とうとう私は追い出されてしまいました。
私を見た人は、おかしがって笑うか、気味悪がって逃げるかするばかりです。亡き母の許へと思ったことは幾度かありましたが、それも果たせずにいるうちに、さる御方の御殿に連れて行かれました。何の取り柄もない私は湯殿で働くことになり、朝から晩まで掃除をしたり水汲みをしたり火を起こしたりと慣れない仕事に追い立てられて暮らしておりましたが、清水寺の縁日があると聞いて、今日は一日だけお暇をいただいて観音様に願をかけて参りました。
こんな私を見て、笑いもせず恐がりもせず、太郎さんは面白い歌で笑わせてくださいました。思えば母上が亡くなってから、笑ったことなど一度もありませんでした。太郎さんが嫁さがしをしておいでだと聞いて、これはきっと観音様の御導きだと思いました。
これがその御殿です。さあ、こちらの門からお入りください。
――そして、鉢かづきは物ぐさ太郎を湯殿へと案内した。

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