一寸法師にも×××魂

 垢を落としすぎて一寸法師になった物ぐさ太郎を見て、鉢かづきが嘆いている。念のために言っておくが、一寸法師になったのは物ぐさ太郎の体の一部ではなく全身である。そのような下品なことを妄想する読者はいないと思うけれども、作者は、どちらにするか昨日一日かかって迷いに迷った。


【店主からのお願い】
 心ある読者の皆さんは既にお気付きかと思いますが、このタイトルはマッド・アマノさんの『パロディって何なのさ。』に収録されている、あの作品のキャプションをもじったものです。以下の内容には、その作品のネタバラシが含まれておりますので、万一、原典をまだ御覧になっていないという方がいらっしゃったら、うっかり読まないように御注意ください。


 「そんなに嘆かないで。ほら、この通り、垢を落としてさっぱりしたのだから」
 「しかしそのようなお姿になられてしまっては…」
 「なあに、そんな心配はしなくても大丈夫」
 「どこへいらっしゃるのですか?」
 「今日はうっかりして観音様にお参りをするのを忘れていたので」
 そう言うと、一寸法師は、茂みの中に分け入って行った。

 そこには美しい観音像がひっそりと佇んでいた。これまで参拝する人もいなかったのだろう。一寸法師は近くの湧き水を手で汲んで自身の体を清めた後、観音像をゆっくりと丁寧に洗い始めた。すると観音様がほんのりと薄桃色に染まった美しいお顔を現わしたので、特に優しく念入りに撫で摩った。
 ほどなく、地面がゆっくりと揺れ始めた。転ばないように気を付けながら、上から下へ、下から上へと洗っていくうちに、足元がぬかるんできた。つるつると滑りながらも観音様に抱きつくようにして必死にこらえているうちに、一寸法師は次第にむくむくと大きくなってきた。一寸が二寸となり、二寸が四寸となったとき、ついにその重みに堪え切れず、つるりと滑ってしまった。
 観音様の足元には、いつの間にか小さな洞が口を開いていた。一寸法師はその中へ頭から落ち、ずっぽりとはまりこんでしまった。洞の壁は柔らかく温かく、こんこんと湧き出る水でしっとりと濡れていた。一寸法師は全身をくねらせて奥へ奥へと進んでいった。しかし、息苦しくなって引き返した。大きく息を吸っては奥へと潜り込む。潜り込んでは引き返す。そんなことを四半時ほど繰り返すうちに、一寸法師は六寸ばかりの大きさとなっている。
 洞の壁が急に引き絞るように狭くなるため、ときどき体が締めつけられる。一寸法師の全身を脈打つ血潮が駆け巡り、ますます力が漲って、素早く体を動かして、行きつ戻りつを繰り返す。さらにまた四半時ほど経った頃には、一寸法師は八寸あまりの大きさとなっていた。
 ここで一寸法師は向きを変え、腰から下を洞に入れ、洞の外に両手を置いて上半身を支えるようにした。大きく体を沈めては、両腕に力を込めてぐいっと持ち上げる。すると目の前には観音様の御姿があるので、その度ごとに腰から上を前に倒して深々と頭を垂れて御参りをする。
 このようにして御百度参りをしているうちに、一寸法師の背丈は一尺となり、鬱血した両脚がぱんぱんに膨らんで、ついにある一つの器官と化していた。その器官からこみあげてくる甘美な調べに酔いながらも、一寸法師は、歯を食いしばって、さらに御参りを繰り返す。目はかすみ、意識も朦朧としてきて、ときには観音様の御顔に思わず頬をすり寄せたりなどして、さらにまた四半時ほど耐えに耐えた。
 そして、ついに、洞の壁から早鐘のような脈動が伝わってきたかと思うと、何度も何度も繰り返し力強く引き絞られた。一体化した下半身の器官は、この波動をあますところなく受け取って、歓喜の津波に変換して背骨に送った。その津波が背骨の中を電撃となって駆け上り、脳天に達した瞬間、一寸法師の全身は大きく反り返った。一体化した器官の奥から熱く煮えたぎったものが吹き出して、元は太ももだった部分の内側を奔流となって通過した。その奔流は、太ももから膝、膝からふくらはぎ、ふくらはぎから足先へと、凄まじい摩擦をものともせずに駆け抜けて、足先の隙間から勢いよく迸った。
 一回、二回、三回…。
 間歇泉となった器官が脈打つたびに、洞の壁が激しく痙攣して呼応する。
 四回、五回、六回…。

 翌朝、物ぐさ太郎から鉢かづきに送った歌。

呉竹の世にあふられて燃ゆるとも露惑ふまじ地にも潜らむ
(世の風に煽られた火が燃え広がっても少しも迷わず地の底までも潜り込みましょう)

 鉢かづきからの返歌。

なよ竹のよながきうへに起きゐても極楽にこそ行かまほしけれ
(秋の夜長を起きて過ごすのなら地の底よりも極楽に連れていってください)

 このようにして、物ぐさ太郎と鉢かづきはめでたく夫婦となった。


【店主からの御提案】
 この作品の映像化を御希望の方は、吉村文庫にメールを送りましょう。半分は冗談ですが、真に受けて送ってみるのも一興です。(笑)

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このページは、かみ かずしげが2009年7月 5日 00:00に書いたブログ記事です。

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