物ぐさ太郎は、鬼退治をして打出の小槌を手に入れようと決意した。そこで、鉢かづきにお椀と箸と針を持ってきてほしいと頼んだが、持ってきたものは茶碗と箸と針だった。
「わしは、お椀と言ったはずぢゃぞ。ちゃわんと聞いていなかったな」と、夫婦になったとたんに調子に乗って親父ギャグをとばす物ぐさ太郎。
「余分なお椀がありませんでしたので、どうか茶碗でがまんしてください」
浮かぬ顔をしている物ぐさ太郎に、申し分けなさそうに言う鉢かづき。いやいや、それは親父ギャグがスルーされたせいだと思うよ。
麦藁の鞘に針の刀を納め、箸の櫂を手に持って、茶碗の船を川に浮かべ、いよいよ出発ということになった。鉢かづきは別れを惜しみ、なかなか茶碗から手を離すことができずにいるようだ。
「そうぢゃった。行ってきますのチューを忘れておったな」などと言って、鉢かづきの唇に顔を近づける物ぐさ太郎。すると、鉢の隙間から、きらりと光るしずくがほろりと落ちて、物ぐさ太郎の顔へとかかる。
「何ぢゃ、泣いておるのか」
「いいえ、そうではありません」
涙のしずくと見えたものは、ふるふるとふるえながら物ぐさ太郎の頭を包んでいって、玉の形となって固まった。
「こ、これは、何ぢゃ!」
物ぐさ太郎は、不思議な玉の中で叫んだが、それは独特の甲高い声となって聞こえる。この意外な出来事に驚いて思わず手を離してしまった鉢かづきは、流れ始めた茶碗の船に向かって、一言。
「どうか御無事で」
「…と、そのようなわけで、鬼退治に出発したのぢゃが、この不思議な玉から頭を引っこ抜こうとしておるうちに、大きな岩にぶつかって、転覆してしもうたのぢゃ」と、一寸法師になったうえに不思議な玉から頭が抜けなくなって独特の甲高い声となった物ぐさ太郎が説明している。
川べりで、それを聞いているのはピンクの豚。一寸法師になったうえに不思議な玉から頭が抜けなくなって独特の甲高い声となった物ぐさ太郎が川に流されているのを逸早く発見して救出したのであった。
一寸法師になったうえに不思議な玉から頭が抜けなくなって独特の甲高い声となった物ぐさ太郎の頭から外せない不思議な玉には「目」の文字が浮かびあがっている。それをじっと見ていたピンクの豚は首をかしげて、頭上に大きな「?」マークを浮かべた。
そこへ×××姫がやってきて同時通訳を始めた。
「確かに、あなたは丸頭ですが、私の知っている丸頭ではありません」
そこへ、猿や熊や馬や禁太郎や河童の姫が集まってきて、一寸法師になったうえに不思議な玉から頭が抜けなくなって独特の甲高い声となった物ぐさ太郎を取り囲んで、「何だ何だ」「どうした?」「一寸法師ですか?」「あっ、この玉は…」「まあ、かわいい!」と口々に言い合った。「新しいなまかだ!」「でも、こいつ裸だぞ」「うーん、どこかで見たような…」「何が好物だろうなあ?」「きっとキュウリよ!」
そして、一寸法師になったうえに不思議な玉から頭が抜けなくなって独特の甲高い声となった物ぐさ太郎を川から助け出したピンクの豚が例の踊りを踊り始めたのを見て、一寸法師になったうえに不思議な玉から頭が抜けなくなって独特の甲高い声となった物ぐさ太郎の頭から不思議な玉を外してやろうと考えた×××姫が幣を取り出して例の〔お祓い〕を始めた。
「これは、面倒くさいことになってしまったなあ」と、菰で作った屋根の下に寝転がったままの物ぐさ太郎は思った。「それに、さすがに腹も減ってきた」と、手で弄んでいた残り一個の餅を口に放り込んだ。パクリ。

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