ジョナサンは氷の上で鼻血を流しながら薄れていく意識の中でメアリーが書いている話の続きを読んだ。
鼻の怪物を追いかけていた男の過去が語られている。そうか。俺はこの鼻の怪物になっていたのか。道理で鼻以外の感覚がないわけだ。この怪物は確か犬橇に乗って北極方面に逃げていたんだよな。過去なんか語っていないで早く追い付いてくれないと、俺は氷の上で鼻血を流しながら死んでしまうことになるぞ。
さらに続きを読むと、この男は自分の幼い弟を絞殺したのは鼻の怪物だと思い込んでいるようだ。それで必死になって追いかけていたわけだ。そうすると、この男に追い付かれても助けられる見込みはない。このままではやっぱりまずい。
ジョナサンはメアリーの話を改変しようかと思った。しかし、紙の上に書いたことがそのまま現実になったり頭の中の夢や妄想が実体化したりするだけでは面白くない。かといって作者を監禁して話を変えるように脅迫するのも能がない。このまま冷凍保存されていつの日か発掘されるのを待つというのもありがちな話だし、突如宇宙からやってきた知的生命体に救助されるなんていうのも御都合主義だ。何かうまい解決法はないものだろうか。
そこへ昨夜言い争いをしていた女の一人がやってきた。そしてジョナサンの鼻にストローを挿し込んで血を吸い始めた。誰の血を吸ったのか分からない牙で首筋に咬みつかれるよりも衛生的で安心だ。こんなときにわざわざ言うほどのことでもないが、たぶん吸い方は伯爵に教わったのだろう。

コメントする