カラフルな立方体

 酒場の店主が、本棚の奥から何やらカラフルな立方体(以下、「ルービックキューブ」と書く)を取り出した。
 「このところ、残念な物語が考えられなくなるという原因不明の症状が続いているので、今回は、このルービックキューブの話でもしてみようかと思います」
 前から少しおかしなところがあるとは思っていたが、いよいよ残念な兆候があらわれてきたようた。誰もいない店内で、店主は以下のような話を口走った。

 ルービックキューブが日本で発売された1980年、僕は浪人生をやっていました。雑誌の記事で面白そうな立体パズルがあると知り、百貨店の玩具売り場や玩具専門店を捜し回って、ようやく現物を手に入れました。それは使っているうちにシールがはがれてしまうという粗悪な模造品でしたが、構造は本物と同じだったので特に問題はありません。

 さて、僕が手にしているこのキューブは(実は現実の世界では僕の目の前に現物はないのですが)、立方体を3×3×3個に賽の目切りにしたような物で、大きな立方体の表面は、それぞれ異なる色に塗り分けられています。(図1

 大きな立方体の同じ面を共有する小立方体(3×3個)は、表面中央の小立方体と裏面中央の小立方体を結ぶ線を軸にして(90度ずつ)自由に回転できるような構造になっています。回転軸は3本あります。何回か軸を適当に変えながら回転していくと、小さな立方体の位置が変化して、大きな立方体の各面の色は入り交じった状態になってしまいます。
 論理的には、「今やったこと」を逆の順番で逆に回転させて行けば元の状態に戻る筈ですが、見かけの単純さにすっかり騙されて、うかつにも「今やったこと」を記憶も記録もしていなかった僕は元に戻す手順が分からず、さらに出鱈目に回し続けるしかありませんでした。そして、何日間か闇雲にいじくり回しているうちに、偶然、元の状態に戻すことができました。

 多くの人が知っているルービックキューブについて必要以上に詳しく説明してしまいましたが、それはこの立体パズルのシンプルな美しさを頭の中に思い描いてもらいたかったからなのです。

 僕は、偶然元に戻せただけでは納得できず、この難しいパズルの正体を突き止めてやろうと思いました。いつでも最初の状態に戻せるように紙に記録を取りながら、「少し崩しては戻す」という操作を、しつこく繰り返しました。その当時の記録も手元にはないのですが、展開図の各面を9分割して色を表わす記号を書き込んだものでした。(図2

 例えば、赤の面を右に90度回した場合は、図3のように変化します。こうやって、何度も回転しては同じような図を書いていきました。

 今にして思えば、ルービックキューブの解法を調べるのために何十枚も図を書く必要はありませんでした。図2図3だけあれば充分だったのです。

 ここで、店主は口を噤み、どこかへ出て行った。たぶん現実の仕事の時間が迫っていたのだろう。


(図1:大きな立方体の展開図)

     
     

 

(図2:最初の状態)

      w1 w2 w3
      w4 w5 w6
      w7 w8 w9
g1 g2 g3 r1 r2 r3 y1 y2 y3 o1 o2 o3
g4 g5 g6 r4 r5 r6 y4 y5 y6 o4 o5 o6
g7 g8 g9 r7 r8 r9 y7 y8 y9 o7 o8 o9
      b1 b2 b3
      b4 b5 b6
      b7 b8 b9

 

(図3:赤を右に90度回した状態)

      w1 w2 w3
      w4 w5 w6
      g9 g6 g3
g1 g2 b1 r7 r4 r1 w7 y2 y3 o1 o2 o3
g4 g5 b2 r8 r5 r2 w8 y5 y6 o4 o5 o6
g7 g8 b3 r9 r6 r3 w9 y8 y9 o7 o8 o9
      y7 y4 y1
      b4 b5 b6
      b7 b8 b9
| コメント(2) | トラックバック(1)
WebMoney ぷちカンパ

トラックバック(1)

トラックバックURL: http://homeposition.net/mt/mt-tb.cgi/170

ホームポジションのブログ - ルービックキューブ (2009年9月26日 21:21)

 以前から、解法を暗記して6面完成の速さを競うことに疑問を感じてましたが、今、あらためてこのパズルの面白さに取り憑かれてしまいました。  「こういう結果にする手順は?」というような「詰めキューブ」みたいなことができたら面白いなと妄想中です。... 続きを読む

コメント(2)

かみかずしげさま

ハマってますね、、、& 、、、尊敬です!

無風凧は、どうも立体には弱いらしく、Rubic Cube(以下RC)はついぞ手にしたことがありません。大学の時に、古川先生(RCをPrologで解いた方)の講義を受けましたが、Originalのゲーム自身が判らず、残念!な単位となりました。

 うーん、それは残念!
 無風凧さんもハマってくれると思っていたのに…。これは、6通りの関数の加算と減算だけで指定された結果を作るという数学パズルなんですけど。(笑)

コメントする

カレンダー

<   2009年9月   >
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      

Twitter

Powered by Movable Type 4.261

このページについて

このページは、かみ かずしげが2009年9月25日 05:31に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「四つの数字」です。

次のブログ記事は「シンプルなパズルの表記法」です。

最近の記事はメインページで、過去の記事はアーカイブで閲覧できます。

最近のコメント