2011年1月アーカイブ

あけお あけおめー。

ことよ ことよろー。

あけお そんなわけで、ぼくが新年あけお。

ことよ そして、わたしはあけおの嫁のことよちゃんです。ウサギ年生まれの12歳です、びょん。

あけお そうそう、ことよちゃんは今年、年女ですねー。

ことよ あけおさん、あけおさん。

あけお はいはい、何ですか。ことよちゃん。

ことよ あなた、また突っ込み忘れてますよ。

あけお ああっ、しまった。そうでしたか。

ことよ もう、しっかりしてくださいよ。

あけお ごめん、ごめん。すぐに突っ込みますから、ちょっと待っててくださいね。

(短い間)

あけお いくら何でも、12歳はないでしょう、ことよちゃん。

ことよ 遅いですっ。

(短い間)

ことよ こう見えてもわたし、本当は24歳なんです。

あけお そうそう、ぼくと同い年なんですよ。

ことよ わたしがウサギ年で。あけおさんがタヌキ年。

あけお 同級生なんですけど、僕の方が早生まれで、干支が違うんですよ。

(間)

あけお おいおい。来年は、タヌキ年じゃないよ。

ことよ 遅すぎますっ。

(短い間)

あけお 遅いといえば、あのカメっていうやつは足がのろいですね。

ことよ どうしてそんなにのろいのかー、ぴょん。

あけお あーっ、ことよちゃん、どうしたのその頭。長ーい耳が生えてるよ。

ことよ 今ごろ気付いたの、あけおさん。最初っから、ずっとつけてたでしよ。これはウサギさんの耳です、ぴょん。

あけお ウサギさん、ウサギさん、どうしてそんなにお耳が大きいの。

ことよ それはね、赤頭巾ちゃんの声がよく聞こえるようにだよ。

あけお さてはこいつ、オオカミだな。よーし、こうなったら頭に葉っぱを乗せて猟師に化けて鉄砲でズドーン。

ことよ うわっ、こういうときだけめちゃめちゃ早いわ、このひと。

(短い間)

ことよ タヌキのやつめ、覚えてろよー。

あけお そんなわけでウサギは、タヌキに仕返しをしようとたくらみました。

ことよ よいしょ。よいしょ。あー疲れた。

あけお どうしたんですか、ウサギさん。

ことよ リュックが重くて、もう歩けません。

あけお あーっ、ことよちゃん、どうしたのその目。真っ赤になってるよ。

ことよ 大晦日からずっとテレビを見てたから寝不足で、じゃなくて、これはカラーコンタクト入れてるの。

あけお なんだそうだったのか。

ことよ なんで今まで気づいてくれなかったの、あけおさん、話すときには、ちゃんとわたしの目を見て。

あけお ごめん、ことよちゃん…。

(長い間)

ことよ そんなことよりタヌキさん、この荷物を運ぶの、手伝ってください。

あけお こりゃあ、ずいぶん大きな荷物ですね。どっこいしょと。予想以上に重いぞ、これは。

ことよ 大丈夫ですか、タヌキさん。

あけお なあに、これくらいへっちゃらです。どこまで運べばいいんですか。

ことよ この山の麓にあるブックオフまで。

あけお こんなにたくさん本を持ってるなんて、

ことよ カチカチ。(と、チャッカマンで火を付けようとする)

あけお ウサギさんは読書家なんですね。

ことよ カチカチ。

あけお あれっ。さっきから背中の方から「カチカチ」って音が聞こえるけど。何だろう。

ことよ タヌキさん、それはカチカチ山のカチカチ鳥の鳴き声ですよ。

あけお おいおい、このへんにそんな山はないし、そんな鳥もいませんよ、ウサギさん。

ことよ あのー、そこには突っ込まないでください、あけおさん。

あけお ごめん、ごめん。また突っ込むところを間違ってしまいました。

ことよ もう、しっかりしてくださいよ、あけおさん。

あけお はい。次はもう間違いません。

(短い間)

あけお なんだ、そうでしたか。

ことよ カチカチ。

あけお カチカチ山のカチカチ鳥だから「カチカチ」と鳴くんですね。

ことよ そうですよ、タヌキさん。よーし、火がついたわ。

あけお おや、何だか背中が熱くなってきたぞ。

ことよ そうですか。

あけお それに、何だか背中の方から今度は「ボーボー」という音が聞こえてきたぞ。

ことよ それはきっと、ボーボー山のボーボー鳥の鳴き声ですよ。

あけお なんだ、そうでしたか。ボーボー山のボーボー鳥だから「ボーボー」と。熱い。熱いっ。あちちちちちち。(と、リュックを投げ捨てる)

ことよ 大丈夫ですか、タヌキさん。

あけお あーっ、ことよちゃん、どうしたの、その服。なんで網タイツなんかはいてるの。

ことよ 今ごろ気づいたの、あけおさん。

あけお ごめん、ごめん。

ことよ どう、色っぽいでしょう。

(間)

あけお わかった、わかった。すぐに突っ込みますから。ちょっと待っててくださいね。

ことよ 今はだめ。あ・と・で。

あけお むふふふふふー。

ことよ うふふふふふー。

(長い間)

 二人、無言のまま深々と御辞儀をした後、いちゃつきながら退場。

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 むかし、むかし、あるところに、桃太郎のおばあさんが、ひとりぼっちですんでいました。

 桃太郎は「また鬼退治に行く」と言って電鉄に乗って旅立ったきり一度も帰って来ないし、おじいさんも、隣りのきびだんご屋の強欲じいさんと商標権を巡って争っているうちにポックリと旅立ってしまいました。

 ある日、おばあさんは、いつものように川で選択をしていました。
「今日のごはんは和食がええかいの、それとも中華がええかいの」
 一人暮らしをしていると、頭の中で思っていることをつい声に出して呟くようになるものです。

 すると、川上から、いろんな人たちの呟きが流れてきました。
「おやまあ、たまげたなあ。こんなものまで流れておるわ。このごろはやりのデジ樽とかいうものに穴でもあいて、またどこぞから流れ出したのかのう」
 おばあさんは、流れてきた呟きの中からおいしそうなものをすくいました。
「晩飯は、これで雑煮にしようかの」

 その夜、おばあさんが呟きのお雑煮を食べていると、どこからともなく桃太郎の声が聞こえてきました。
「オレだよ、オレ。桃太郎だよ」
 ちょうどそのとき、おばあさんは柔らかいお餅を口の中に入れたところでした。こんなときにあわててはいけません。もぐもぐとよく噛んでから、ゆっくりとお餅を飲み込みました。そして、どっこらしょと立ち上がり、玄関ドアの覗き穴から外の様子を伺いました。
 家の外には誰もいないようです。

「桃太郎や、どこにおるのかい。かくれておらんで出ておいで」
 おばあさんは、部屋の中を見回しながら、そう言いました。桃太郎が小さかった頃、よくそうやってかくれんぼをしていたものです。
「ばあちゃん、オレは今、遠くのくにで、鬼退治の支度をしているんだよ」
 おばあさんは驚きました。桃太郎の声は、おばあさんの頭の中から聞こえていたのです。
「わしゃとうとう気が変になってしもうたか」
 ショックを受けたおばあさんは、寝込んでしまいました。

 その夜更け。おばあさんは、ドアを叩く音で目を覚ましました。
「こんな遅うに誰じゃろね」
 覗き穴から覗いてみると、美しい娘が立っていました。おばあさんはすぐにドアを開けてやりました。
「おやまあ、そんな恰好で、どうしたんじゃね」
「山越えの途中で日が暮れて、道に迷うてしまいました。どうか一晩だけでも…」
「それはそれは冷えたじゃろう。早うお入り」
 おばあさんは、娘を招き入れました。

「残りもんだけど、おあがり。あったまるぞ」
「ありがとうございます」
「それじゃ、悪いけど先に休ませてもらうよ」
 呟き入りのお雑煮を平らげた娘は、おばあさんが敷いてくれた布団を畳むと、その上に自分の荷物を広げて、何やら始めました。

 翌朝、おばあさんが目を覚ましたときには、娘の姿はありませんでした。食器はきれいに片付けられています。
「あの娘さんは、夢じゃったのかのう」
 おばあさんがそんなことを呟きながら布団を片付けていると、また頭の中から声が聞こえました。
「おばあさん、おばあさん。聞こえますか」
「おやまあ、その声は」
 おばあさんはかかえていた布団を放り出してしまいました。
「ゆうべは本当にありがとうございました」
「わたしゃまだ夢を見ておるのかのう」
「急に、おばあさんの声が聞こえてきたので、わたしもびっくりしました」
「そうなのかい。不思議なこともあるもんじゃねえ」
 おばあさんもだんだん慣れてきたようです。
「どうか驚かないでください」
「とっくに腰は抜けとるわ。何でも言うておくれ」
「わたしは以前、おじいさんに命を助けられたサギなのです」
「そういえば、じいさんがそんな話をしておったような」
「ゆうべは、そのときの御恩返しに伺ったのです」

 一方そのころ、桃太郎はというと、犬・猿・雉と一緒に適当な番号に電話をかけまくって、鬼退治のための資金集めをしておりました。
 そして、おばあさんの頭の中から桃太郎の声が聞こえることは、二度となかったということです。

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