世にも奇妙な暴言おばはん

 昔、とてもアホな娘がおりました。びっくりすると、じょじょじょーっとおもらしをしてしまいます。

「そうや、海の中ならバレへんやろ」

 その日から娘は海の中で暮らすことにしました。

 「この話、どこかで読んだことがあるような気もするけど、何だったか思い出せない」――そんな奇妙な物語を読んだことはありませんか。そうです。たとえば、あなたが今読んでいるこの話です。

 ある日のこと。アホな娘が、いつものように頭を空っぽにして海の中を泳いでいると、いきなりゴツンと何かにぶつかりました。

 じょっとおもらしをしましたが、海の中なので誰にも言わなければバレません。

「びっくりしたなあ、マッコリクジラか」

 それを言うならマッコウクジラです。そんなものにぶつかったら、大変なことになってしまいます。でも、クジラにしては小さすぎます。

「えーっと、何やったっけ、これ」

 うっかり考えてしまったので、娘は息が苦しくなって、じょじょっと勢いをつけて浮上しました。

 海面から顔を出し、大きく息を吸い込んで頭をからっぽにしてから、娘はまた海の中に潜りました。

 さっきぶつかったものをよく見ると、「蛸壺」と書いてありました。でも、アホな娘には「蛸」も「壺」も難しくて読めません。

「……」

 娘は何も考えず、そのまま蛸壺にもぐり込みました。どういうわけか、中は広々としていて快適でした。

「へへへへへ」

 しばらく何やら呟いていたかと思うと、いつの間にか娘はすやすやと眠っていました。

「あんた、ひとのうちで何してんねん」

 いきなりの大声で、娘はじょっと眼を覚ましました。娘が蛸壺から顔を出すと、タコのおばはんがいました。

「早う出ていってんか」

 でもアホな娘には別のものに見えたようです。娘は身を乗りだして叫びました。

「テレビで見て、ずっと憧れていました。ダイオウイカさん」

「誰がダイオウイカやねん」

 豹柄になったタコのおばはんが頭にねじり鉢巻きをして額に青筋を立てて激怒しています。

「ここは額やないし、ねじり鉢巻きなんかしてへんって何べん言うたら分かるんや」

 娘は何を言われているのかさっぱり分かりませんでしたが、そのあまりの恐ろしさに、じょじょっと蛸壺から飛び出しました。

「あっ、臭っ。汚いやないか」

 蛸壺から出てみると、巨大なダイオウイカだと思っていたのは、ただの小さなタコでした。さっきまで怒っていたタコのおばはんは動揺しています。

「な、なんや。なんで急に巨大化すんねん」

 なんでやろ。遠近法のせいやろか。娘はそこまで考えたところで息が苦しくなって、じょじょじょーっと海面まで上がって行きました。

 空気を吸って冷静になると、お腹が減っていることに気がつきました。

「そうや、さっきのタコ。へへへへへ」

 娘は何か思いついたらしく、また海に潜りました。

 それから数分後、娘が蛸壺をかかえて、浜に上がってきました。

「ふふふふふふん、あーいーちゅー」

 ご機嫌で鼻歌を歌っていると、突然サイレンが鳴り響いて浦島太郎が駆けつけました。

「こらこら、勝手に獲ったら駄目やないか」

 浦島太郎はそう言って、娘から蛸壺を取り上げました。

「えーっ、たこ焼きにして食べよう思うてたのに」

 蛸壺を覗きこんだ浦島太郎が言いました。

「これはヒョウモンダコやないかい。フグと同じ猛毒や。こんなもん食うたら死んでまうで」

 アホな娘は、物凄くびっくりしました。

「じょじょじょじょじょじょじょじょじょーっ」

 その勢いで、娘は空の彼方へと飛んで行きました。

 蛸壺の中から顔を出したタコのおばはんが言いました。

「助けてくれてありがとな。飴ちゃん食べるか」

 浦島太郎は、今のは聞かなかったことにして、蛸壺ごと海に帰してあげようと思いました。

 そのようなわけで、昔から大体このあたりでは、蛸壺漁とたこ焼きと飴をもった豹柄のおばはんが多いといわれてるのです。

「あの店はあかんやろ。小便臭い小娘しかおらへんし。うっかり手ぇ出して、えげつない目におうたロリコンがおるっちゅう噂や。悪いこと言わへん。うちとこにしとき。サービスするで……」

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このページは、かみ かずしげが2013年7月 7日 00:00に書いたブログ記事です。

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