カテゴリ「夜話」の記事 (4)

 ある村に、嘘つきの少年がいた。

 ある日、少年が「娘が来たぞ! 若くてきれいな娘が来たぞー!」と叫ぶと、村中の男たちが目の色を変えて飛び出して来た。それが面白くてたまらず、何度も同じ嘘を繰り返した。

 男たちは、どうせまた嘘だろうと思いながらも、ひょっとすると今度こそ本当かもしれないぞ、という本能の声には逆らえず、何度も同じ嘘にひっかかっていた。

 そういうことが何度も続くうちに、さすがにだまされる男の数も減り、少年は次第に誰からも相手にされなくなっていった。

 そんな、ある夕暮れのこと。少年の体に異変が起こった。嘘ばかりついていた報いで、とうとう娘の体になってしまったのだ。少年は叫んだ。

 「イヤァァァァァァァン!」

 妙に艶めかしく、どこか懐かしい娘の声が村中に響き渡ると、矢も楯もたまらくなった男たちが、ぞろぞろとやって来た。

 暗くなりはじめた空では、上弦の月が妖しく輝いている。

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 昔、昔、あるところに、お爺さんと、お婆さんが住んでいました。

 お爺さんは、ゴルフ場へ芝刈りに行き、お婆さんは、うちで洗濯機を回しました。

 お爺さんが芝を刈っていると、穴に首を突っ込んで抜けなくなり、パタパタともがいている鶴がいました。かわいそうに思ったお爺さんは、鶴を助けてやりました。すると鶴は、嬉しそうに飛んで行きました。

 お婆さんが洗濯をしていると、洗濯機の中から変な音が聞こえてきました。ドンブラコ、グルングルングルン。ドンブラコ、ゴロンゴロンゴロン。フタを開けてみると、大きな桃がぐるぐる回っていました。お婆さんはびっくりして洗濯機を止め、大きな桃を拾いあげました。お婆さんは大きな桃を冷蔵庫に入れてから、もういちど洗濯機を回しました。

 お爺さんが芝を刈っていると、穴に首を突っ込んで抜けなくなり、バタバタともがいている亀がいました。かわいそうに思ったお爺さんは、亀を助けてやりました。すると亀は、嬉しそうにゆっくりと歩いて行きました。

 お婆さんが洗濯をしていると、洗濯機の中から変な音が聞こえてきました。ドンブラコ、クウェクウェクウェ。ドンブラコ、クワックワックワッ。フタを開けてみると、変なアヒルがぐるぐる回っていました。お婆さんはびっくりして洗濯機を止め、変なアヒルを抱えあげました。冷蔵庫はいっぱいだったので、仕方なく変なアヒルを逃がしてやりました。すると変なアヒルは、嬉しそうにワルツを踊りながらヨタヨタと歩いて行きました。

 仕事を終えたお爺さんが帰ってくると、お婆さんが冷蔵庫から大きな桃を取り出しました。お爺さんとお婆さんは、その大きな桃を二人で分け合って仲良く食べました。すると、お爺さんとお婆さんは、すっかり若返ったような気分になりました。

(中略)

 トントントンと戸をたたく音でお爺さんが目を覚ましました。こんな夜ふけに誰だろうと戸を開けてみると、そこには若くて美しい娘が立っていました。「今日、ゴルフ場で…」と言いかけた娘の口を、お爺さんは慌ててふさぎました。振り返ると、お婆さんは疲れてぐっすり眠っているようです。お爺さんは静かに娘を招き入れ、自分の部屋に連れ込みました。

(中略)

 トントントンと戸をたたく音でお婆さんが目を覚ましました。こんな夜ふけに誰だろうと戸を開けてみると、そこには若くて美形の男が立っていました。「今日、ゴルフ場で…」と言いかけた男の口を、お婆さんは慌ててふさぎました。振り返ると、お爺さんの姿がありません。お婆さんは静かに男を招き入れ、自分の部屋に連れ込みました。

(中略)

 お爺さんと若い娘は、困った状態になってしまいました。この非日常的なシチュエーションに興奮しすぎたために招いてしまったことなのですが、ここまで注意深く読んでこられた大人の読者の方々には、これ以上語らなくても、だいたい想像はつきますよね。

 お婆さんと若い男も、困った状態になってしまいました。以下同文。

 するとそこへ、一列につながなった人たちが、ぞろぞろとやって来ました。お婆さんが逃がした変なアヒルは、成長して金のガチョウになっていたのです。

 さあ、みんなで掛け声をかけましょう。

 うんとこしょ、どっこいしょ。
 うんとこしょ、どっこいしょ。

 うんとこしょ、どっこいしょ。
 うんとこしょ、どっこいしょ。

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 「今日からあんたが乗せてくれよ」と熊が言うと、馬は「別に構いませんよ」と快諾した。
 そんなわけで、禁太郎と河童の姫は馬の背に仲良くまたがっている。ぽっくりぽっくり。
 熊には猿が乗っている。のっしのっし。犬神の背には×××姫。すたすたすた。

 道中、河童の姫がいろんな話をした。自分が姫と呼ばれているのは大金持ちの娘として生まれたせいであり、河童の社会は王制ではないこと。河童は衣服を着ないこと。河童の雌が気に入った雄を追いかけて抱きつくのは普通だということ。などなど。
 ぽっくりぽっくり。のっしのっし。すたすたすた。

 猿は、河童の次になまかになるのは、やっぱり猪だろうなと予想していた。しかし、あの鹿の話から、あの勇敢な姫の話につながらなかったことが、どうも腑に落ちない。伏線が何本も張ってあったんだけどな。今こうして俺が考えているということは、このネタは没になったということか。残念だなあ。
 ぽっくりぽっくり。のっしのっし。すたすたすた。

 夜になった。

 ぐーぐーぐー。すやすやすや。むにゃむにゃむにゃ。
 もぞもぞもぞ。はあはあはあ。あっあっあっ。
 こそこそこそ。ちくちくちく。あっ、いたいっ。

 夜が明けた。禁太郎は目を覚ました。きれいに畳んだジーンズはあったが、腹掛けが見当たらない。河童の姫は静かな寝息を立てている。ジーンズをはいて、あたりを捜していると、朝もやの中から×××姫が現われた。禁太郎の腹掛けを持っている。禁太郎は、×××姫が黙って右手で差し出した腹掛けを受け取った。
 綻びたポケットが、不器用に繕ってあった。
 「直してくれたんだね。ありがとう」
 そう禁太郎が言うと、×××姫は右手を差し出した。
 「そういえば、禁太郎飴をまだあげていなかったよね」
 ×××姫は何度も頷いた。
 「でも、困ったことに、何が好物なのか全然見当もつかないんだよ…」
 すると×××姫は、こう言った。
 「××××××!」
 「あっ、そうか。その手があったか」

 禁太郎は、腹掛けから禁太郎飴を取り出した。
 「ほっぺたのところには、××××××が入ってるよ」
 ×××姫は喜んで、禁太郎飴を食べ始めた。よほど××××××が好きなのだろう、夢中になって、ずっと背後に隠していた左手を出している。その指には包帯が不器用に巻いてあった。
 ×××姫が繕ってくれた腹掛けを見ながら、今までよく分かんない人だと思ってたけど、いいとこあるんだな、と思っていると、×××姫が腹掛けの下の方を指差して、厳かにこう言った。
 「禁×袋!」
 やっぱりよく分かんないな、と禁太郎は思った。


“他一篇”は、18:30頃から、適当なBGMを思い浮かべながらお読みいただくと、気分が出ます。


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 垢を落としすぎて一寸法師になった物ぐさ太郎を見て、鉢かづきが嘆いている。念のために言っておくが、一寸法師になったのは物ぐさ太郎の体の一部ではなく全身である。そのような下品なことを妄想する読者はいないと思うけれども、作者は、どちらにするか昨日一日かかって迷いに迷った。


【店主からのお願い】
 心ある読者の皆さんは既にお気付きかと思いますが、このタイトルはマッド・アマノさんの『パロディって何なのさ。』に収録されている、あの作品のキャプションをもじったものです。以下の内容には、その作品のネタバラシが含まれておりますので、万一、原典をまだ御覧になっていないという方がいらっしゃったら、うっかり読まないように御注意ください。


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