カテゴリ「逸話」の記事 (2)

 ジョージ・ワシントンが少年だったときの話。ある偉人の伝記を読んで感銘を受けたジョージは、自分も何かインパクトのあるエピソードを作っておこうと考えた。そして、父親が大切にしている桜の木とかいうものを切り倒しておいて、後で正直に告白するという筋書きを思いついた。

 こっそり斧を持ち出してみたものの、どれが桜なのかが分からない。これは困ったなあと、庭のあちこちを歩きながら思案しているうちに、持っていた斧をうっかり池の中に落としてしまった。

 すると、池の中から女神が現われて、こう言った。
 「あなたが落としたのは、金の斧ですか、銀の斧ですか、それとも鉄の斧ですか?」

 ジョージは、これはどこかで聞いたことのある話だと思った。欲張って嘘を吐くと何も返してもらえず、正直に答えれば金の斧がもらえるのだ。しかし、金の斧では桜の木を切り倒せない。なんとかして鉄の斧を取り返す方法はないものだろうかと考えてみたけれど、妙案が浮かばない。

 そこで、ジョージは、この経緯を洗いざらい女神に打ち明けてみた。

 ジョージの話を聞いた女神は、にっこりと微笑んで、こう言った。
 「よく正直に話しましたね。今日は特別にプラチナの斧をあげましょう」

 こうして、プラチナの斧を手に入れたジョージ少年は、これでやっと桜の木を切り倒せるぞと思った。しかし、どれが桜の木なのやら、さっぱり分からない。仕方がないので、何も切らずに家に帰った。

 斧が別の物と入れ代わっているのが見つかってから言い訳するよりも、進んで告白した方がいいだろう。鉄の斧をプラチナの斧と交換したのだから、褒められることはあっても叱られることはないはずだ。ジョージはそのように考えた。

 その夜、ジョージはプラチナの斧を父に見せ、今日のできことを正直に話した。すると、ジョージの父は、激怒した。
 「この大馬鹿者! 桜の木なんか、このあたりに一本も生えておらんぞ! 嘘を吐くなら、もっと巧い嘘を考えろ!」

 ジョージ・ワシントンの生家には、激昂した父親がプラチナの斧を振り回して付けた傷が、今でも残っているという。

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 その後もジョナサンは馬人の夢を繰り返し何度も見た。最後に見た悪夢のような奇怪な現象が起きることはなくなったが、ジョナサンにとっては、むしろ現実の方が悪夢だったのかもしれない。晩年のジョナサンはよく馬の嘶きのような鼾をかいていたというが、おそらくそれは、夢の中で馬人たちと楽しく語り合っていたのが寝言となっていたものと思われる。

 ジョナサンは子供のころに見た無邪気な夢の続きをたまに見ることがあった。年を取るにつれて夢の内容は多少変化していったが、ジョナサンの空想力は時間や空間を軽々と飛び越えるのだった。自由自在に空を飛び、時を越え、宇宙を駆け巡っていたが、ジョナサンは決してそのことを誰にも話さなかった。

 火星に二個の衛星があることを、その発見以前にジョナサンが知っていたことは、長年のあいだ謎だと考えられてきたけれども、それらの衛星が実はジョナサンの空想の産物であるということを否定する材料を、天文学者たちは未だに発見していない(少なくとも公式には発表していない)。

 今からちょうど三百年前(1709年)にジョナサンが日本を訪れていたことを知る人は少ないが、長崎県立美術博物館には「ジョナサン・スウィフトが踏むことを免除されたキリスト像」(一般には『青銅のピエタ』と呼ばれる)が所蔵されていた。これは南蛮鋳物師の萩原裕佐によって製作されたものであり、美術的にも歴史的にも価値のある作品だった。しかし、2005年に同館が長崎県美術館と長崎歴史文化博物館に分割された際、「出島に行こうかそれとも立山に残ろうか」と思案橋あたりで悩んでいる姿が目撃されたのを最後に、行方不明になってしまったのは、返す返すも残念なことである。

 行方不明といえば、ジョナサンが眠るときに身につけていたドングリが誰の手に渡ったのかも分からない。どこかのオークションに出品されるのではないかと期待されているようだが、ジョナサンが嫌っていたヤフーではないことを願うばかりだ。

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