カテゴリ「頓智話」の記事 (5)

 ある日、一休さんが歩いていると、橋の前に立札があった。

この橋、渡るべからず
真ん中に大きな穴があいています

 しかし一休さんは、いつものように橋の真ん中を歩いて渡った。幸い、へべれけだったので穴には落ちずに済んだ。


 別のある日、一休さんが歩いていると、橋の前に立札があった。

この橋、渡るべからず
真ん中に大きな穴があいています

 一休さんは素面だったが、立札をよく読まずに橋の真ん中を渡った。どぼ~ん。


 ある日、肉をくわえた犬が歩いていると、橋の前に立札があった。

この橋、渡るべからず
真ん中に大きな穴があいています

 しかし字が読めない犬は、立札に小便をかけてから橋を渡った。穴に気付いて覗き込むと、肉をくわえた犬と目が合った。その犬の肉を奪ってやろうと一声吠えると、くわえていた肉が落ちて行った。それを横から飛び出した一休さんがパクリ。


 ある日、スナフキンが歩いていると、橋の前に立札があった。

この橋、渡るべからず
真ん中に大きな穴があいています

 スナフキンは立札をバラバラにして、その木切れで穴を塞いだ。そして、手すりに腰かけると釣りを始めた。

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 ジャックはコンビニでアルバイトをしたが、三ヶ月で経営学に興味がないことが分かった。アルバイトを辞めたいと言うと、雲を衝くような大男は店長にならないかと引き止めたが、それも断った。もっと面白いことをやりたかったのだ。

 ある日、ジャックがぶらぶら歩いていると、森の中から空に向かって何かがぐんぐん伸びて行くのが見えた。
 「あんなところに緑豆を蒔いたのかな?」
 森の中に入ってみると、荷物を背負った大男が、緑豆の根本に向かって怒鳴っている。よく見ると、その根本には少年が寝転がっている。
 「これは面白い」

 ジャックは静かに近づいて、木の陰から様子を伺った。空に向かって伸びているのは緑豆ではなく、その少年の鼻だ。少年は、何かを繰り返し叫んでいる。
 大男は、少年が背中の下から何かを奪い取った。「この嘘吐きめ」と怒鳴りつけて、大男は驚くほどの大股で去って行った。すると、少年の体が宙に浮き、上昇し始めた。ジャックが駆けつけたときには、少年の姿は豆粒のように小さくなっていた。そして、やがて雲の中に吸い込まれて行った。

 ジャックがその雲から目を下ろすと、目が眩んでふらふらした。近くの木に捕まろうとしたとき、何か柔らかいものを踏む感触があった。よく見えないが、そのあたりを足で探ると、確かに地面に何かがある。
 「何だ、これは?」

 ふと足を止めた天狗が、取り返した団扇を箱笈に仕舞った。
 「これで、よし」
 荷物を背負い直して、ふたたび歩き始めた天狗は、まだ何か気になることがあるらしく、頻りに首をひねっている。

 手さぐりで、それを拾い上げたジャックは、目をしばたいた。感触と重みはあるが、それは見えない。しかも、自分の手の一部も見えなくなっている。もう目の錯覚ではない。ジャックは、それを拡げたりひっくり返したりして大きさと形を確かめた。どうやら藁で編んだ大きなマントのようだ。

 天狗は、箱笈にかぶせてあった隠れ蓑がなくなっているのだと気付いた。
 「あの小僧、どさくさ紛れに盗りやがったな!」
 飛ぶような大股で、さっきの場所に引き返した。

 ジャックは、さっきの大男の足音が近づいてくるのに気付いて、このマントを頭からかぶろうかと思った。そうすれば全身が見えなくなるはずだ。しかし、大男に見つかったときのリスクが大きい。そこで、ジャックは近くの木の枝にマントを投げつけて、その場をはなれた。

 ジャックが空を見上げていると、大男が跳んで来た。
 「おい、小僧!」
 ジャックはそれを無視して、さっきの少年が消えていった雲を指差して、こう叫んだ。
 「あんなところに子どもが浮かんでるぞ!」
 人違いに気付いた大男は、一緒になって空を見上げる。
 「どこだ?」
 「あれだよ、あの雲の端っこ!」
 「何も見えんぞ…」
 大男がじっと目を凝らしているのを見て、ジャックは両手で筒の形を作って望遠鏡を覗くふりをした。
 「見える、見える。よく見えるぞ!」
 大男がこっちを見ている気配を察して、ジャックは、こう続けた。
 「かわいそうに、あの子は両手の先がないぞ」
 すると、大男はみごとに食いついた。
 「おい、それをよこせ」
 「いやだよ」
 「いいから、よこせ」
 大男は力まかせに望遠鏡を奪い取ろうとした。
 「あーあ、あんたのせいで見えなくなったよ」
 ジャックは架空の望遠鏡を素早く縮めてポケットに入れた。
 「おい、あの小僧は、どこへ行った?」
 「さあ…。あの雲の上じゃないかな」
 すると、大男は腰を落として力を溜めた後、一気に雲の上まで跳んだ。

 こうして、ジャックは天狗の隠れ蓑を手に入れた。

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 馬が話し終わると、すかさず猿がこう言った。
 「じゃあ、次はおれの番だ」

――馬にまたがった猿は、次のように語った。

 昔、ある山寺に、とんち好きな和尚さんがいました。この和尚さんには、残念という名の弟子がおりました。その名の通り、本当に残念な弟子でした。

 あるとき、町まで行く用事ができた和尚さんは、弟子の残念に留守番を言いつけました。そして、和尚さんの部屋にある壷に入っているのは毒だから絶対に舐めてはいけないよと付け加えました。

 和尚さんがいなくなると、残念は、さっそく和尚さんの部屋に入って、戸棚から壷を取り出そうとしました。すると、後ろの方から「見たぞー」という声がしました。
 ぎくりとして振り返ると、障子の隙間から三匹の山猿が覗いていました。この三匹の山猿は、ミザル、キカザル、イワザルという、とても面倒な三兄弟です。

――ここまで話した猿は、急にクイズを出題した。

 「さて、ここで問題です。『見たぞー』と言ったのは、どの猿でしょう?」

――そして、何ごともなかったように、話の続きを語った。

 すると、残念は、ミザルに向かって「お前は何も見なかった」、キカザルに向かって「お前は何も聞かなかった」、イワザルに向かって「お前はこのことを誰にも話さない」と言いました。そして、三匹の猿に「いいな」と念を押しました。

 すると、イワザルだけは「僕はそういうキャラだからいいよ」と言いましたが、キカザルは「僕は見たことを和尚さんに話せるよ」と言い、ミザルは「僕だって聞いたことを和尚さんに話せるよ」と言いました。本当に残念な弟子ですね。

――ここで、作者は突然あることを思い付いて、猿の話を中断させた。

 「この続きは、またあとで」

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――馬にまたがった猿は、話を続けた。

 「おまえ、また水飴を舐めるつもりだろ」とミザルが言いました。「そんなことをしたら、また和尚さんに叱られるぞ」とキカザルも言いました。「おまえ、本当に残念なやつだな」とイワザルまで言いました。
 「うるさいな、黙ってろ」と残念が言うと、山猿たちが「黙るもんか」「舐めて叱られたらプラマイゼロじゃん」「おまえの頓智は猿知恵以下だ」と言いながら、和尚さんの部屋に入ってきて、残念を取り囲みました。
 「じゃあ、その猿知恵をみせてみろよ」と、残念が言うと、山猿たちが「よーし」「その勝負、受けて立とう」「叱られずに水飴を舐めた方が勝ちだからな」と言い出して、頓智と猿知恵の勝負をすることになりました。

 残念は、戸棚から壷を取り出して、三匹の山猿の前に置きました。
 「さあ、舐めてみろよ」と、残念が言うと、山猿たちは「おれが舐める」「いや、おれが」「いや、おれが先だ」と争い始めました。残念が思わず「じゃあ、おれがやる」と手を上げると、山猿たちは「どーぞ、どーぞ」と言いました。
 残念は水飴を舐めました。山猿たちがじっと見ていたので、いつもより余分に舐めました。
 「さあ、次はおまえたちの番だぞ」と、残念が言うと、急に山猿たちは逃げて行きました。
 「何だ、口ほどにもないやつらだな」

 残念が何食わぬ顔で庭掃除をしていると、山猿たちがやってきて、残念の方をちらちら見ながらひそひそ話を始めました。
 「お前たち、チクるなよ」と残念が言うと、山猿たちは「そんなこと、するもんか」と言いました。そこへ、和尚さんが帰ってきました。
 「留守中、何か変わったことはなかったか」と和尚さんに尋ねられて、残念は「はい」と短く答えました。山猿たちを見ると、ミザルは両手で目をふさぎ、キカザルは両手で耳をおおい、イワザルは両手で口をおさえていました。
 和尚さんは、首をかしげながら、部屋に入っていきました。

 しばらくすると、和尚さんが残念を呼びました。「また廊下の掃除をサボったな」という小言を聞きながら和尚さんについて行くと、なるほど確かに、廊下には山猿たちの足跡がついていました。残念は嫌な予感がしました。
 先に部屋に入った和尚さんは「まあ、ここに座りなさい」と言って、棚から壷を取り出しました。またお説教かと思って小さくなっていると、和尚さんが目の前に壷を置きました。
 「山猿たちの様子が妙だったので、もしやと思ってこの壷を見たら、水飴が減っておった」
 「毒ではなかったのですか」
 「ああ、そうだったな。そんなことより、あの山猿めをとっちめる手はないものか…」
 和尚さんは、山猿たちが犯人だと思い込んでいるようです。残念は、ほっとしました。
 「ぼさっとしてないで、おまえも少しは何か考えろ」

 「うーん…」と残念は唸り声をあげました。こういう頓智問題は大の苦手なのです。こんな目にあうのなら、和尚さんに叱られた方がマシです。
 「あのー、和尚さん」と残念が話しかけると、和尚さんは「おおっ、何か思いついたのか」と顔をほころばせました。
 「実は…。水飴を舐めたのは、わたしです」
 それを聞いた和尚さんは、がっくりと肩を落としました。
 「それは残念だな」

 和尚さんは、残念にたっぷりとお説教をした後で、疑ってしまったお詫びに三匹の山猿を招待して、水飴をたくさん舐めさせたという話です。

――こう話を締めくくった猿は、みんなのブーイングを浴びた。

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 猿の話を聞いた禁太郎たちは、口々にこんなことを言った。
 「結局、和尚さんまで山猿に騙されてるじゃないか」
 「そうだそうだ。猿ばっかりずるいぞ」
 「水飴なんて甘いだけじゃないか」
 「それに、どこにも頓智なんてなかったし」
 「そうだそうだ」
 「蜂蜜だったらよかったのに」
 猿はムッとして、禁太郎に言った。
 「じゃあ、頓智話を聞かせてくれよ」
 「いいとも」

――そして、禁太郎は次のように語った。

 山寺に帰ってきた和尚さんは、三匹の山猿がそれぞれ変なポーズをしていることに気付きました。見ざる、聞かざる、言わざるだなと思った和尚さんは、山猿たちにこう尋ねました。
 「嘘をつくと、閻魔様に舌を抜かれるという話を知っているかい?」
 山猿たちはうなずきました。
 「見たことを見なかったと言ったり、聞いたことを聞かなかったと言ったりするのも、嘘をつくのと同じなんだよ。これは分かるかい?」
 ミザルとキカザルはうなずきました。
 「言いたくないことを言わないのは嘘ではないが、嘘つきをかばって何も言わないと閻魔様に嘘つきのなかまだと思われてしまうことになるぞ。これも分かるね?」
 イワザルはうなずきました。
 「よろしい」
 そして、和尚さんは言いました。
 「それでは、みんな一緒に、わたしの部屋まで来なさい」

 和尚さんが部屋に入ると、その後から残念と三匹の山猿がついてきました。
 「みんな、そこに座りなさい」
 そう言って、和尚さんは棚から壷を取り出して、みんなの前に置きました。
 「さて、この中に、嘘つきがいる。それは誰だ?」
 すると、残念がこう言いました。
 「それは、和尚さんです。その壷の中には毒が入っていると嘘をつきました」
 和尚さんは「これは一本とられたな」と言って、みんなに壷の中の蜂蜜をごちそうしました。

――禁太郎の話が終わると、熊だけは大いに喜んだ。

 猿と馬は何となく腑に落ちないような顔をしていたが、しばらく経ってから「何だ、そういうことだったのか」と納得した。

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