カテゴリ「民話」の記事 (7)

 昔、昔、あるところに、お爺さんと、お婆さんが住んでいました。

 お爺さんは、ゴルフ場へ芝刈りに行き、お婆さんは、うちで洗濯機を回しました。

 お爺さんが芝を刈っていると、穴に首を突っ込んで抜けなくなり、パタパタともがいている鶴がいました。かわいそうに思ったお爺さんは、鶴を助けてやりました。すると鶴は、嬉しそうに飛んで行きました。

 お婆さんが洗濯をしていると、洗濯機の中から変な音が聞こえてきました。ドンブラコ、グルングルングルン。ドンブラコ、ゴロンゴロンゴロン。フタを開けてみると、大きな桃がぐるぐる回っていました。お婆さんはびっくりして洗濯機を止め、大きな桃を拾いあげました。お婆さんは大きな桃を冷蔵庫に入れてから、もういちど洗濯機を回しました。

 お爺さんが芝を刈っていると、穴に首を突っ込んで抜けなくなり、バタバタともがいている亀がいました。かわいそうに思ったお爺さんは、亀を助けてやりました。すると亀は、嬉しそうにゆっくりと歩いて行きました。

 お婆さんが洗濯をしていると、洗濯機の中から変な音が聞こえてきました。ドンブラコ、クウェクウェクウェ。ドンブラコ、クワックワックワッ。フタを開けてみると、変なアヒルがぐるぐる回っていました。お婆さんはびっくりして洗濯機を止め、変なアヒルを抱えあげました。冷蔵庫はいっぱいだったので、仕方なく変なアヒルを逃がしてやりました。すると変なアヒルは、嬉しそうにワルツを踊りながらヨタヨタと歩いて行きました。

 仕事を終えたお爺さんが帰ってくると、お婆さんが冷蔵庫から大きな桃を取り出しました。お爺さんとお婆さんは、その大きな桃を二人で分け合って仲良く食べました。すると、お爺さんとお婆さんは、すっかり若返ったような気分になりました。

(中略)

 トントントンと戸をたたく音でお爺さんが目を覚ましました。こんな夜ふけに誰だろうと戸を開けてみると、そこには若くて美しい娘が立っていました。「今日、ゴルフ場で…」と言いかけた娘の口を、お爺さんは慌ててふさぎました。振り返ると、お婆さんは疲れてぐっすり眠っているようです。お爺さんは静かに娘を招き入れ、自分の部屋に連れ込みました。

(中略)

 トントントンと戸をたたく音でお婆さんが目を覚ましました。こんな夜ふけに誰だろうと戸を開けてみると、そこには若くて美形の男が立っていました。「今日、ゴルフ場で…」と言いかけた男の口を、お婆さんは慌ててふさぎました。振り返ると、お爺さんの姿がありません。お婆さんは静かに男を招き入れ、自分の部屋に連れ込みました。

(中略)

 お爺さんと若い娘は、困った状態になってしまいました。この非日常的なシチュエーションに興奮しすぎたために招いてしまったことなのですが、ここまで注意深く読んでこられた大人の読者の方々には、これ以上語らなくても、だいたい想像はつきますよね。

 お婆さんと若い男も、困った状態になってしまいました。以下同文。

 するとそこへ、一列につながなった人たちが、ぞろぞろとやって来ました。お婆さんが逃がした変なアヒルは、成長して金のガチョウになっていたのです。

 さあ、みんなで掛け声をかけましょう。

 うんとこしょ、どっこいしょ。
 うんとこしょ、どっこいしょ。

 うんとこしょ、どっこいしょ。
 うんとこしょ、どっこいしょ。

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 昔、昔、ある国に、四十人の盗賊がいました。

 ある日、盗賊のお頭が突然こんなことを言いだしました。「今回は、白雪姫に出てくる魔法の鏡をいただいてくるダベェ~!」
 すると、三人の手下が(中略)、変なメカに乗って発進しました。

 「えー。何ですって? 四十人もいないって? いますよ、ホラ。残りの三十六人は、こんなふうになってるのよー」と、手下の一人の出っ歯の男が言いました。
 「いつものインチキでまんねん」と、もう一人のがっしりした体格の男が言うと、女ボスが、「お前たち、何をごちゃごちゃ言ってるのさー。さっさと白雪姫を誘拐してくるんだよー」

 白雪姫が、いつものように七人の小人の家で留守番をしていると、「リンゴはいらんかねー」という声が聞こえてきました。
 扉を開けると、お婆さんがリンゴの入ったかごを提げて売り歩いています。
 「おばあさん、リンゴを一つくださいな」と、白雪姫が声をかけると、出っ歯のお婆さんが振り向いて、「あらまあ、本当に不用心な子ねえ」

 しばらく後、小人たちが家に帰ってくると、白雪姫の姿がありません。床には一口かじったリンゴが落ちていて、テーブルの上には一枚の紙きれがありました。

白雪姫はあずかったわよー。返して
ほしかったら、魔法の鏡を持って、
岩山の秘密の隠れ家まで来てねー。
          四十人の盗賊より

 これを読んで、眼鏡をかけた鼻下鬚の小人が、こう言いました。
 「諸君。白雪姫が誘拐された。ただちに出動!」
 「ラジャー!」
 五人の若い小人が、五種類の小鳥に変身しました。

 この様子を魔法の鏡で見ていた継母は、意地悪そうな笑みを浮かべて、こう言いました。
 「誰が白雪姫なんかを助けに行ったりするもんですか」
 そして、鏡に向かって、こう言いました。
 「鏡よ、鏡。世界で一番まぬけな泥棒は誰だい?」
 すると、鏡は、こう答えました。
 「それは、白雪姫を誘拐して岩山の洞窟に閉じ込めた三人組の泥棒です」
 窓の外で、五羽の小鳥が飛び立つ音がしました。

 「一体どうなってるんだい? 誰も魔法の鏡を持って来ないじゃないか!」
 「どうしたんでしょうね~」
 「ホンマやなー」

 岩山の洞窟に閉じ込められている白雪姫が目を覚ましました。
 「ここは、どこかしら?」
 白雪姫は起き上がってあたりを見回しました。どこもかしこも真っ暗でしたが、遠くの方に一筋の光が見えました。
 「あれは、何かしら?」
 立ち上がって、光の方へ歩き始めると、何かが足にあたりました。
 「これは、何かしら?」
 拾い上げると、何だか壷のような形をしていました。それを抱えて、白雪姫は光に向かって歩き続けます。

 「お前たち、いつまでもボケーッと待ってないで、何とかおしよ!」
 「アラホラサッサー!」

 白雪姫は、やっと光の当たっている場所にたどり着きました。洞窟の天井に小さな穴があいていて、そこから外の光が射し込んでいるのでした。
 「あんなに高いところに、どうやって上ったらいいかしら…」
 すると、その穴から、五羽の小鳥が飛び込んできました。
 「まあ、小鳥さんたち。わたしを助けに来てくれたのね!」
 小鳥たちは嬉しそうにさえずって、白雪姫のまわりを飛び回りました。
 「でも、どうやったら、ここから出られるのかしら」
 白雪姫がそう言うと、小鳥たちは白雪姫の目の前に集まって、ぐるぐると回転し始めました。そしてどんどん勢いよく回ります。すると、つむじ風が起きて、飛び散った小さな羽が、白雪姫の鼻に入りました。白雪姫がくしゃみをすると、持っていた不思議な壷がぐらぐらと踊りはじめました。

 突然現われた変なデザインの巨大なメカが、白雪姫の継母のいるお城を壊して、魔法の鏡を奪って行きました。すると、継母はハッとしてこう言いました。
 「ああ、わたしは何をやっていたのでしょう! 世界で一番大切な白雪姫がさらわれたというのに…」
 継母は、これまでずっと魔法の鏡に取り憑かれていたのです。

 すると、そこへ魔法の絨毯に乗った白雪姫が帰って来ました。
 元に戻った優しい継母と白雪姫は抱き合って喜び合いました。五羽の小鳥たちと、メタボな体形の魔王も、みんな一緒に大喜びです。

 その頃、三人の盗賊は、魔法の鏡の前で…。
 「開け、ゴマ! おかしいな、何も映りませんよー」「ほなら、開け、シロゴマ!」「白雪姫だけに白ゴマねー」「何やってるんだい、こっちにお貸しよ。開け、ウインドウ! あれ? 違うのかい?」「変ですねー」「おや? ここんとこにリンゴのマークがありまっせ」「なるほどー。白雪姫だけにリンゴだったのねー」「それじゃ、開け、アップル!」「違いますよ、開け、リンゴ!」「ほなら、開け、ドクリンゴ!」「お前、今、何て言った? あたしゃ何だかイヤーな予感がするよ…」

 すると、魔法の鏡の中から、盗賊のお頭の声が、「このアカポンタン!」(後略)

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 昔、昔、「猿蟹合戦」という話があったのじゃが、今ではそれが「さるかにばなし」という題名に変わってしもうて、話の筋も教育的な内容に書きかえられてしもうたそうな。わしは、そんな話なんぞ読んだこともないし読んでみようとも思わんのじゃが、昨今の世情を見りゃあ、だいたいの見当ぐらいはつくというもんじゃて…。

 ある日、蟹がおにぎりを持って歩いていると、猿がこう言った。
 「蟹くん、蟹くん、そのおにぎりと、この柿の種を交換しよう」
 「えーっ?」と、蟹がためらっていると、猿がこう続けた。
 「何を迷っているんだい。おにぎりは食べてしまえばそれっきりでおしまいだけど、この柿の種を蒔いて柿の木を育てたら、毎年毎年、柿の実がたくさん成って、いくらでも食べられるんだよ」
 「えーっ!」と、蟹が驚いていると、猿は得意気にこう言った。
 「未来に備えて投資するのは常識だよ」

 そういうわけで、蟹はおにぎりと交換して手に入れた柿の種を蒔き、毎日毎日、水をやったり肥料をまいたりして、大切に育てた。
 それから数年後。立派に育った柿の木に、ついにいくつも実が成った。蟹は喜んで、柿の実を取ろうとしたが、どうしても手が届かない。そこで、蟹は、「どうせ、渋柿にちがいない」とつぶやいて、あきらめようとした。
 すると、いつかの猿がやってきて、「おいおい、蟹くん、それは負け惜しみってやつだよ。僕が、木に登って取ってきてやろう」と言ったかと思うと、するすると登って行った。ところが猿は、もぎ取っては食べ、もぎ取っては食べしているばかり。柿の実は、とうとう最後の一個だけになってしまった。
 「おーい、猿くん、ぼくにも一個おくれよ」
 「そんなに食いたきゃ、これでもくらえ」
 猿は蟹めがけて柿の実を投げつけた。

 それを見て、怒った栗は火の中に飛び込んで、爆ぜて猿に体当たりしてやろうと思ったが、ここには囲炉裏がない。急いで落ち葉をかき集め、焚き火をしようとライターを取り出したところへ、臼先生が駆けつけた。
 「こらこら、君たち、何をしているんだい?」
 臼先生は、猿や蟹が通っている学校の教頭で、これはどうでもいいことだが、いつも赤シャツを着ている。臼先生は、まず、木の上にいる猿にこう言った。
 「猿さん、食べ物を粗末にしてはいけません。それに、また蟹さんをいじめていましたね。いじめはいけませんよ」
 臼先生は、次に、落ち葉の山の脇に突っ立っている栗にこう言った。
 「栗さん、焚き火をしてはいけません。ダイオキシンが出て地球にやさしくないって習ったばかりでしょう。それに、子どもがライターなんか持っていてはいけません」
 臼先生は、最後に、地面に倒れていた蟹を助け起こして、こう言った。
 「蟹さん、大丈夫でしたか?」

 …とまあ、だいたいこんなふうに、猿と蟹と栗が、みんな仲直りしました、とかなんとかいうような話になっとるんじゃろうが、わしは、こんな中途半端な残念さでは到底納得できんのでな…。

 その夜。

蟹:ムカツクよなー、ウスノロのやつ
蜂:あいつ、うちではオニヨメの尻にしかれてるらしいぞ
蟹:ケガ人の方が先だろ、ふつー
栗:おめー、何で来なかったんだよ?
蟹:それ知ってる
蜂:行こうとしたんだけど、途中で…
蟹:キネコさん、キネコさんって、職員室で
栗:ウスノロにチクっただろ!
蜂:まさか
蟹:寝言で言ってたってさ
栗:タバコ、バレるとこだったんだぞ
蜂:チクってないって
猿:じゃあ何でウスノロが来るんだよ
蜂:見てたんだよ、双眼鏡で
蟹:腰をふりふり
栗:覗き魔かよ
猿:だったらいいけど、あんまり調子に乗るなよ
蜂:それ、キモイんですけど
猿:ママがPTA会長だからって
栗:理事長だろ
蜂:両方だよ
猿:女王様気どりのママさんがいなけりゃ
栗:いばんなよ
猿:お前なんか殺虫剤でシューだ
蜂:やってみれば?
猿:やってやるよ
栗:また、アレをやろうよ
蟹:あれって何?
猿:アレは面白かったよな~
蜂:あ、塾に行かなきゃ
栗:忘れたのか?
猿:逃げやがったな
蟹:何だったっけ
猿:脳ミソが蟹ミソだからな
栗:おまえがやつのパンツ下ろしただろ
蟹:あー、あれか
猿:で、俺がやつの尻の針を引っ張ってやったら
栗:やっと思い出したか
猿:www
栗:wwww
蟹:わろた。。。。。
栗:おめー、同じ昆虫のくせに
蟹:昆虫じゃねーよ
蜂:いっしょにすんなよ
猿:あ、やべえ。姉貴帰ってきた。男と
蟹:甲殻類だよ
栗:またサボりか?
蜂:コンビニんとこにスズメバチが
蟹:あいつ、アネキなんていたっけ?
栗:ヘタレだな
蜂:針だらけのやつには言われたくないな
栗:あいつの飼い主のことだよ
蟹:なんだ人間か
蜂:あのアネキはヤバいよ
栗:そそ
蟹:パンツ下ろしてやろーか
蜂:人間のオスに殺されそうになってたぞ
栗:おまいさんは見さかいがねーのか
蟹:何で?
栗:見たのか
蜂:ずっと前、あいつんち行ったとき
蟹:あいつんち、海から遠いんだろ?
蜂:オスに押え込まれて、死ぬって叫んでた
栗:いや、だからそれは…
蜂:そだね、山の方
栗:で、そのオスを刺してやったのか
蜂:いや。でも教えてやろうと思って
蟹:じゃあ行けねーな
蜂:あいつの部屋に行ったら
蜂:肩をふるわせてた
蜂:泣いてたんだと思うな
栗:いや、それも何か違うような…
蜂:じゃ何だよ
猿:ちくしょ~
栗:それは…
蟹:おかえり。どしたの?
栗:たぶんアレだよ
蜂:アレって何だよ
栗:シェーカー振ってたんじゃないかな
蟹:それ、何かで見たぞ
栗:猿酒のバナナシェイクとかさ
蜂:あー、あれはうまかったよな
猿:あ~うい~
栗:また飲んでる?
猿:わるいか~
蜂:ちょうど酒の話をしてたとこ
栗:べつに
蜂:でも、学校で飲むなよ
栗:俺は顔には出ないとか言ってさ
猿:おいハチ公!
蟹:もともと真っ赤だってーの
蜂:何だよ、エテ公!
猿:明日、たのしみにしとけよ
栗:やるのかよ
猿:じゃ~もうねる
蜂:冗談だろ
栗:何か本気っぽかったな
蜂:マジ?
栗:マジで
蟹:マジだったよね

 その翌日。蜂が学校から帰っていると、いきなり栗が飛んできてぶつかった。猿が飛んでいる蜂めがけて投げつけたのだ。蜂が落ちてくると、蟹がハサミでパンツをつかんでずり下ろす。そこへ猿が馬乗りになって、尻の針をつかんでこう叫ぶ。
 「引っこ抜いてやろうか?」
 すると蜂は、じたばたともがきながら、甲高い悲鳴をあげはじめる。
 「抜かないで~、抜かないで~。死ぬ~。死ぬ~」

 すると、たまたまその真上にあった柿の枝から、双眼鏡を持った臼先生が落ちてきて、ぐしゃり。

 薄れゆく意識の中で、蜂はこう思った。
 「やっぱり、あのとき、猿は泣いていたんだろうな…」

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 昔、ある村に、ジャックという男の子がいました。ある日、ジャックはジャックのお父さんと一緒に、ジャックの家で飼っていた牛を売りに、ジャックの家のある村の隣の町まで出かけることになりました。

 ジャックとジャックのお父さんがジャックの家で飼っていた牛を牽いて歩いていると、それを見ていた男の人がこう言いました。
 「間抜けなことをしているな。一人は牛に乗って行けばいいんじゃないか?」
 なるほど、それもそうだなと思ったジャックのお父さんは、ジャックをジャックの家で飼っていた牛に乗せました。

 ジャックを乗せたジャックの家で飼っていた牛をジャックのお父さんが牽いて歩いていると、それを見ていた別の男の人がこう言いました。
 「子どもを甘やかしてるな。子どもを歩かせればいいんじゃないか?」
 なるほど、それもそうだなと思ったジャックのお父さんは、ジャックをジャックの家で飼っていた牛から降ろしました。そして、ジャックのお父さんはジャックの家で飼っていた牛に乗って、ジャックのお父さんが乗ったジャックの家で飼っていた牛をジャックに牽かせることにしました。

 ジャックのお父さんを乗せたジャックの家で飼っていた牛をジャックが牽いて歩いていると、それを見ていたまた別の男の人がこう言いました。
 「ひどい親だな。子どもも乗せてやったらいいんじゃないか?」
 なるほど、それもそうだなと思ったジャックのお父さんは、ジャックのお父さんを乗せたジャックの家で飼っていた牛から降りて、ジャックをジャックのお父さんが降りたジャックの家で飼っていた牛に乗せました。そして、ジャックのお父さんは、ジャックのお父さんが降りてジャックが乗ったジャックの家で飼っていた牛の上のジャックの後ろに乗りました。

 ジャックとジャックのお父さんを乗せたジャックの家で飼っていた牛が歩いていると、川にさしかかりました。すると、ジャックとジャックのお父さんを乗せたジャックの家で飼っていた牛は、こう一人ごとを言いました。
 「重たいな。この前みたいに川に飛び込んだら軽くなるんじゃないか?」
 なるほど、それもそうだなと思ったジャックとジャックのお父さんを乗せたジャックの家で飼っていた牛は、ジャックとジャックのお父さんを乗せたまま、川に飛び込みました。

 ところが、ジャックの家で飼っていた牛が思ったようにはなりませんでした。ジャックとジャックのお父さんは軽くなるどころか、ジャックの服とジャックのお父さんの服に川の水がしみ込んで、かえって重くなってしまったのです。しかも、ジャックのお父さんは、得体の知れない妙な生き物に変身してしまいました。

 ジャックと得体の知れない妙な生き物に変身したジャックのお父さんを乗せたジャックの家で飼っていた牛が歩いていると、またまた別の男の人がこう言いました。
 「エコドライブだな。しかし、牛は二酸化炭素を排出するけど、この緑豆を植えると二酸化炭素を吸収するから、その牛を緑豆と交換した方が、もっとエコになるんじゃないか?」
 なるほど、それもそうだなと思った得体の知れない妙な生き物に変身したジャックのお父さんは、そのまたまた別の男の人の言った通りに、ジャックの家で飼っていた牛を、そのまたまた別の男の人の緑豆と交換しました。

 ジャックと得体の知れない妙な生き物に変身したジャックのお父さんが、ジャックの家で飼っていた牛と交換した、またまた別の男の人が持っていた緑豆を持って、ジャックの家に帰ってくると、ジャックのお母さんは、嬉しそうにこう言いました。
 「おかえりなさい。まあ、おいしそうな緑豆ね。さっそく緑豆の料理を作りましょう」
 すると、ジャックが言いました。
 「食いしん坊だな。食べてしまったらエコにならないんじゃないかな?」
 得体の知れない妙な生き物に変身したジャックのお父さんも言いました。
 「そうだよ。その緑豆は畑に蒔いて育てるんだよ」

 ジャックと得体の知れない妙な生き物に変身したジャックのお父さんと食いしん坊なジャックのお母さんは、ジャックの家の裏の畑に行って、おいしそうだけど食べてしまったらエコにならない緑豆を蒔きました。

 その夜、ジャックの家の裏の畑に蒔いた緑豆の周りで、得体の知れない妙な生き物に変身したジャックのお父さんが踊りを踊っていると、ジャックの家の裏の畑に蒔いた緑豆から勢いよく芽が出てきました。そして、ぐんぐん伸びていきました。

 翌朝、ジャックがジャックの家の裏の畑に行ってみると、ゆうべ蒔いた緑豆は、雲に届く大きな木になっていました。さっそくジャックは、ジャックの家の裏の畑に生えた雲に届く大きな木をどんどん登っていきました。

 そして、とうとう雲の上まで登ったジャックは、雲の上に大きなお城が建っているのを見つけました。ジャックが見つけた雲の上の大きなお城にジャックが入ってみると、そこにはニワトリと、何かが入っている袋と、ハープがありました。ジャックは何かが入っている袋の中には何が入っているのだろうと思って、そっと何かが入っている袋を開けて覗き込みました。

 すると、いきなりハープがこう叫びました。
 「どろぼうだ! どろぼうだ! どろぼうがきだぞ!」
 びっくりしたジャックは、ジャックが見つけた雲の上のお城の中にあった何かが入っている袋の中に入っていたものを一つかみだけ手に取って、ジャックが見つけた雲の上のお城の中から逃げ出しました。すると、ジャックが見つけた雲の上のお城の中から雲を衝くような大男が追いかけてきました。

 ジャックの家の裏の畑に生えた雲に届く大きな木をするすると降りてきたジャックが、ジャックの家の斧を取り出して、ジャックの家の裏の畑に生えた雲に届く大きな木を切り倒そうとすると、ジャックが見つけた雲の上のお城の中からジャックを追いかけてきた雲を衝くような大男が、こう叫びました。
 「この木を切るな。この木を切ったらエコじゃなくなるんじゃないかな?」
 なるほど、それもそうだなと思ったジャックは、ジャックの家の裏の畑に生えた雲に届く大きな木をジャックの家にあった斧で切り倒すのをやめました。すると、ジャックの家の裏の畑に生えた雲に届く大きな木の途中から、ジャックが見つけた雲の上のお城の中からジャックを追いかけてきた雲を衝くような大男が飛び下りてきました。

 ジャックの家の裏の畑に生えた雲に届く大きな木の途中から飛び下りた雲を衝くような大男は、こう言いました。
 「お前が手に持っているのは緑豆だな。この地図の印を付けたところに蒔いてくれてもいいんじゃないかな?」
 ジャックは手の中の緑豆を見て、なるほど、それもそうだなと思いました。

 ジャックが見つけた雲の上のお城の中にあった何かが入っている袋の中に入っていた緑豆を、ジャックが見つけた雲の上のお城の中からジャックを追いかけてきた雲を衝くような大男にもらった地図の印を付けたところにジャックが蒔いていると、得体の知れない妙な生き物に変身したジャックのお父さんがやってきて踊りを踊りはじめました。

 その後、ジャックが見つけた雲の上のお城の中からジャックを追いかけてきた雲を衝くような大男は、ジャックの家のある村とジャックの家のある村の隣の町のあちこちに生えた雲に届く大きな木を何度も何度も行き来して、せっせとコンビニを作りました。そして、ジャックは、ジャックの家の裏の畑のすぐ近くにできたコンビニでアルバイトをしながら経営学を勉強したということです。

 そうそう、それと、得体の知れない妙な生き物に変身したジャックのお父さんは、今もどこかで踊りを踊っていることでしょう。

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 あるとき、ピノキオが森の中を歩いていると、甲高い音が近づいてきた。
 カラン、コロン。カラン、コロン。
 木の陰に身を隠したピノキオが息をひそめて見ていると、何やら恐ろしい風体をした怪物が歩いている。
 カラン、コロン。カラン、コロン。
 それは、怪物の履き物が立てている足音だった。怪物は赤い顔をしていて鼻が異様に高かった。
 カラン、コロン。カラン、コロン。
 その妙な形の履物は、ピノキオと同じように堅い木で出来ているようだ。その懐かしい音に誘われて、ピノキオはこっそり後をつけていった。

 しばらく歩いているうちに、怪物が何か木の葉のようなものを落としたのが見えた。ピノキオは怪物の姿がじゅうぶんに遠くなるまで待って、それを拾ってみた。ヤツデの葉のような形をしているが、葉の部分は鳥の羽根でできていて、木の枝で出来た柄に糸でしっかりと結わえてある。何かに使う道具のようだ。

 ピノキオが鳥の羽根をふわふわと動かしたり光に当てて透かしてみたりしていると、遠く離れた怪物が急に振り向き、ひとっ跳びでピノキオの目の前に現われた。ピノキオは道具をあわてて背中に隠したが、怪物に見られてしまったようだ。

 「おい、小僧、何かを隠しただろう?」と、恐ろしい形相をした怪物が恐ろしい声で問い詰める。
 「いいえ。僕は何も隠していません」と、震えながら答えると、ピノキオの鼻がびゅーんと伸びた。不意討ちにあった怪物は尻餅をつき、ピノキオもひっくり返った。それでもピノキオが「隠してません、隠してません」と言い続けると、鼻はどんどん伸びて行く。
 怪物が起き上がって、ピノキオが背中に隠していた道具を取り上げた。
 「この嘘つきめ」と、怪物が怒鳴りつける。
 「御免なさい、御免なさい。もう嘘はつきません」と、ピノキオは仰向けになったままで謝った。すると、ピノキオの体が宙に浮いて、ぐんぐん昇りはじめた。そして、ピノキオは雲の中へと姿を消した。

 ちょうどそのとき雲の上では、雲を衝くような大男が事業拡張のために橋をかけていた。

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 語り姫は、王様が王妃と浮気相手の男をその場で処刑した後、毎晩、処女に夜伽をさせては命を奪い続けているという話を父親から聞いた。そして、これは何とかしなければと思った語り姫は自ら進んで王様の元へと赴いたのだった。

 毎晩、驚くべき物語を途中まで話して中断すれば、その続きを聞くまでは生かしておこうと考えてくれるだろうという、危うい綱渡りのような作戦だった。しかし、いかに古今東西の物語に通暁している語り姫といえども、こんなことを何年も続けていれば、そのうちに話す材料が切れてしまう。

 昼間、王様が政務を執り行っている隙に、語り姫は新しい物語を捜し歩いていた。この国に住む語り部たちの話す物語はとっくに使い果たしてしまったし、図書館にある古びた写本に書かれている話も同様だった。
 町には以前のような活気がなくなっていた。若い娘たちがことごとく他国へと逃げてしまったため、若い男たちもその後を追って出て行った。幼い娘のいる家族もいつの間にかいなくなっていた。将来に不安を感じたのだろう。たまに訪れていた旅人たちも、悪い噂を聞いたのか、姿を見せなくなっている。
 早く何とかしなければ、この国は滅びてしまうに違いない。こうなったら細かいことにこだわってなどいられない。語り姫は仕方なく、さびれた町の外れにある酒場の中へ入って行った。

 酒場の扉を開くと、がらんとした店の奥に主が一人で座って、ひまそうに何やら読んでいた。客が来たのに気付いた主は、目をあげて言った。
 「いらっしゃい。御注文は?」
 「不眠症になった王様が眠れるようになる物語を」
 「ああ、それならちょうど今読んでいたのがいいかな」
 店主は開いていた本を見せた。そのページには、東洋の奇怪な文字が縦に並んでいた。

 ――その夜、語り姫は以下のように語った。

 これは、昔のある国での出来事です。宦官たちが見張っていて男が入れる筈のない後宮に住む妃たちが、次々に身ごもってしまうという怪事件が発生しました。

 妃たちは、男たちの声はするけれども姿は見えないのだと言って、気味悪がったり色めきたったりしております。そこで宦官は、姿が見えないとはいえ、男が来ていることに間違いはなかろうと、後宮のあたり一面に砂を撒くようにと女官たちに命じました。

 さて、その夜、妃たちが裸でくつろいでいると、いつもの男たちの声がやって来ました。妃たちは、その声の主たちと戯れて、やがて呻き声をあげ始めました。
 そして、静かになると、急に槍を持った兵卒が踏み込んできました。「足跡があるぞ」「逃がすな」などと叫んで大騒ぎをしたかと思うと、逃げて行く足跡の行方を追って出て行きました。

 ――ここで、語り姫が話を中断すると、不眠症の王様は姿の見えない男たちがその後どうなったのかを聞いてしまわないうちは安眠できそうもないと思い、語り姫の命を奪うのを先延ばしにした。

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 ――いつの夜のことだか分からなくなってしまったが、語り姫は、次のように話を続けた。

 おお幸多き王様、そのようなわけで行商人は、夜更けになってから、やっと町にたどりつきました。疲れと眠さでふらふらになりながら、とにかく一晩だけ宿に泊まろうと思いましたが、開いているのは酒場だけでした。そこで行商人は仕方なく、その酒場に入って行きました。
 「いらっしゃい。ご注文は?」
 「酒はいらないから、とにかく何か食べる物を」
 すると、店主はこう言いました。
 「あいにく当店には、飲み物と食べ物はありません。お客さんにお出しできるのは読み物だけです」
 行商人はカウンターで早くもうとうとしながら注文しました。
 「もう何でもいいや。ぐっすり眠れるやつを頼むよ」
 「かしこまりました」
 そこで店主は、店の奥から埃をかぶった一冊の本を持って来ました。

 ――そして、語り姫は退屈の限り退屈な話を語り始め、不眠症の王様は眠気を催してきた。ところが、もう少しで王様が眠りに落ちそうになったとき、酒場の中で、突然、女の悲鳴が上がった。眠りかけていた王様が目を覚まして何事かと見ると、酒場のトイレから飛び出した女が、鼠が出たと騒いでいる。どうやらパニックになっているようだ。そのどさくにさまぎれてどこかで聞いた話をパクってもいるけれども、そんなことはお構いなしで、その鼠は行商人の荷物の中に逃げ込んだ。

 そんなことに気付きもせず行商人はぐっすり眠っていたが、その夢の中に鼠が現われて、こんなことを語り始めた。

 どうか私を助けてください。御覧のように今は鼠の姿をしていますが、私はもともと人間です。人間の脳を鼠に移植して、来る日も来る日も迷路の中を走らせるという恐ろしい実験をやっている研究施設から逃げ出してきたのです。

 ――ここまで話したとき、語り姫は朝の光が射してくるのを見て、慎ましく口を噤んだ。残念ながら今夜も王様を眠らせることはできなかった。

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