カテゴリ「特撮」の記事 (2)

 昔、竹取の翁がいた。あるとき、竹を切りに行った翁は、光り輝く筍を見つけた。翁は、その不思議な筍を掘り出して、うちへ持ち帰った。

 さて、どのように料理したものかと翁が思案していると、いつの間にか隣に座っていた媼が、こう言った。
 「まあ、こんな変てこな野菜は初めて見ましたよ」
 「またトボケたことを…。ばあさん、これは、筍じゃ」
 「あらあら、そうでしたかねえ」
 媼はくすくす笑いながら、筍に庖丁を入れた。
 すると、筍の中から小さな可愛い女の子が出てきた。

 翁と媼は、女の子を「かぐや姫」と名づけて、たいそう可愛がって育てた。かぐや姫は、すくすくと育ち、あっという間に、村一番の器量良しになった。

 噂を聞きつけた男たちが、かぐや姫を一目見ようと集まって来た。しかし、かぐや姫は誰も相手にせず、月を眺めては溜め息をついてばかりいる。その様子を垣間見た男たちがさらに噂し合って、話には尾鰭が付き、「器量良し」が「天女」へと変わっていく。

 そんなある日、竹取の家に、さる公達が訪れた。天女がいるという話は本当なのかという用向きだ。これを聞いて、翁は腰を抜かしたが、媼はいつものよう笑みをうかべて、こう答えた。
 「ええ、まことの天女かどうかは存じませんが、天女だと噂されている娘ならおりますよ」
 そして、かぐや姫を呼び寄せた。

 かぐや姫は、美しいだけでなく聡明でもあった。適当なことを言ってあしらえる相手ではないと察して、このように語った。
 「私には、この地に生まれる前に、どこかで月を眺めていたという思い出があります。それがどこであったのかは分かりませんが、ここから見る月と同じ姿をしておりました。天上界から見る月がどのような姿であるかを知りません。そのようなわけで、残念ですが、私には自分が天女であるかどうかをお答えすることができません」

(中略)

 かぐや姫は、以前の快活さを失い、ますます塞ぎ込んでしまった。ある夜、かぐや姫が月を眺めていると、媼が声をかけた。
 「どなたか、遠くの御方を思い出しているのですね?」
 「なぜ、そのようなことを…」
 かぐや姫が振り向くと、媼はただにっこりと笑っていた。

(中略)

 ある日、件の公達が、天女の羽衣を携えてやって来た。これはある漁師が浜で拾ったという天女の羽衣である。もしも、あなたが天女であるのなら、きっぱりとあきらめよう。しかし、天女ではないのなら、ぜひとも輿入れを願いたい。この無理難題には、さすがの媼も困ってしまった。
 一旦奥の部屋に引っ込んで、翁と媼が考えあぐねていると、かぐや姫の声がした。
 「おじいさん、おばあさん、お話ししたいことがあります」
 翁が返事をすると、かぐや姫は静かに襖を開け、部屋に入ってきた。そして、ゆっくりと話し始めた。

 「実は、私は外つ国で生まれた者なのです。ここへ来たときにはすっかり忘れておりましたが、月を眺めている間に少しずつ思い出してきたのです。ある夜、その国のお城で、踊りの宴が催されました。私は馬車に乗ってお城へ行き、ある方と一緒に踊っておりました。そのあと…」
 かぐや姫は、しばらく目を閉じていたが、やがて目を開けて話を続けた。
 「その方が何か叫んで、私は急いで馬車に乗ったということしか思い出せません。何か悪いことが起きたのだと思います。その方が御無事かどうか。御無事ならば、もう一度お目にかかりたい。ただそのことばかりが胸の内に溢れてくるのです」
 そこまで聞くと、翁はこう言った。
 「それでは、あの御方にはお断り申し上げるしかあるまい」
 「あの御方とは、どなたのことですか」と、かぐや姫が尋ねると、媼が答えた。
 「この前の、都からおいでになった公達さまですよ。ちょうど今も、お見えになってるところです」

(中略)

 天女の羽衣の話を聞いたかぐや姫は、「それでは、天女の舞いを舞うことにいたします」と言って、翁と媼を驚かせた。
 「今宵は十五夜です。天女の羽衣の力をお借りすれば、生まれた国に帰れるかもしれません。いずれにしても、これ以上、答えを遅らせると御迷惑をおかけすることになりますので」
 そして、かぐや姫は居住まいを正し、三つ指を突いた。

(中略)

 天女の羽衣を身にまとったかぐや姫が、家の中から出て来た。翁と媼、そして公達が見守る中、かぐや姫は踊り始める。

 かぐや姫は、舞踏会で踊った輪舞曲を思い出した。王子の笑顔を思い出した。王子の手の温もりを思い出した。ひんやりした床の感触を思い出した。胸のときめきを思い出した。そして、12時を打つ鐘の音を思い出した。王子の叫び声を思い出した。恥ずかしさのあまり、王子の手を振りほどいたことを思い出した。その場から逃げ出してしまった自分を思い出した。それから、優しかった母と姉たちを思い出した。母が作ってくれた小さな服を思い出した。あのとき言った自分の言葉を思い出した。

 そして、かぐや姫は、静かに踊りを終えた。

 「この羽衣はお返しいたします。本当の天女がお困りでしょうから」

 かぐや姫は宙高く舞い上がり、羽衣をはらりと脱ぎ捨てると、夕焼け空の彼方へと消えて行った。

 羽衣を受け止めて呆然とする公達。名残り惜しげに空を仰いでいる翁。そして、満足げに微笑む媼。その背後には、竹林を透かして見える望月の姿。

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放映前のシナリオ(想像)

老作家: えっ、じゃあ「犬をけしかける少女」は? 映画にもなったんだけど…。

土曜日の原作者(偽文士日碌

原作者: 〔…〕何しろ七瀬のお手伝いに行った先が作家の家で、この作家先生がぼろくそに書かれていた。「犬をけしかける少女」というのを書いて没になるなど、ひどいものだ。「先生のことではありません」と抗弁してきたものの、作家の権威を守るのは長老の義務である。撮り直しと決ったものの、どうしていいかわからなくなったらしいので「作家」を「脚本家」にすればいいと入れ知恵して、〔…〕

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