カテゴリ「童謡」の記事 (8)

 昔、昔、ある国の王女が、たいへん困り果てていました。
 「ああ、こんなドレスを着てパレードをするなんて、やっぱり私にはできないわ」
 夜が開ける前に、王女はこっそりお城を抜け出して、行くあてもなく歩きはじめました。

 同じころ、隣の国の王子は、すっかりうつけたような表情をして街をさまよっていました。
 「ああ、あの舞踏会の娘は、いったいどこへ行ってしまったのだろう…」
 忽然と姿を消した娘のことが忘れられずに、毎日毎夜、昼も夜もなく、街中を尋ね歩いているのです。どこの家に行っても、あの娘はいません。それどころか、自分は王子だと言っても誰も信じてくれず、陰では笑い者にしているようです。おまけに、今夜は犬に吠えたてられ、逃げようとしたところを尻に咬みつかれ、白タイツを食いちぎられてしまいました。こんな姿でうろうろしているところを人に見られたら…。とにかく、明るくなる前にお城に帰らなくてはなりません。
 ところが、街はずれに繋いでおいた白馬がいなくなっています。
 「なんてことだ。これでは朝までに帰れないじゃないか!」
 王子が頭をかかえていると、どこからともなく魔女が現われました。
 「何だか困っておいでのようだねえ…」

 一方、隣の国の王女は、こうなったら森の中に隠れるしかないと思いました。ほの暗い森に足を踏み入れて、しばらく歩いていると、落ち葉の積もった地面に、うっすらと白いものが見えました。近くまで行ってみると、若い娘が裸でうつぶせに倒れていました。
 貧しくて服も買えない乞食というものがいるとは聞いていたけれど、まさかこの国にいるとは思ってもみませんでした。王女は、木の枝を拾ってきて、恐る恐るつついてみました。
 すると、乞食娘は「うーん」と唸って、寝返りをうちました。その顔を見て、王女は驚いてしまいました。乞食娘の顔は、王女と瓜二つだったのです。
 世間知らずの王女も、さすがにかわいそうな気がしてきました。そこで、お城に連れて帰って、服を着せてやろうと思いました。
 「さあ、早く起きなさい」

 白馬を失ったかわりに白タイツを手に入れた王子は、とぼとぼとお城への道を歩いていました。何か大事なことを忘れているような気もしましたが、何だかよく分かりません。親切なお婆さんが何か言っていましたが、頭がぼんやりしていて思い出せません。
 「おなかがすいたなあ…」
 ポケットをたたくと、ビスケットが一つ出てきたので、それをむしゃむしゃ食べました。

 王女が、衣装部屋に連れて行くと、それまでぼんやりしていた乞食娘は、あのドレスを見て目を輝かせました。
 「あんた、これが見えるの?」と、王女がたずねると、乞食娘はこっくりとうなずきました。
 王女は、自分に見えないドレスが乞食娘には見えることに腹を立てていましたが、ふと、いいことを思いつきました。この乞食娘をパレードの馬車に乗せてやろう。そうすれば、もう逃げたり隠れたりしなくてもすむ。我ながらこれは名案だと、王女はにんまりしました。

 ポケットを叩いてはビスケットを食べ、ビスケットを叩いてはビスケットを粉々にしてしまったりなどしているうちに、王子はおなかがいっぱいになりました。街外れの草むらの中で、王子はごろりと横になって一眠りしました。

 王女に扮した乞食娘のパレードを、街中の人びとが見物しています。その様子を陰からこっそり伺っていた本物の王女は、口惜しくて仕方ありません。あのドレスが見えない人が一人もいないとは思ってもいなかったのです。こんなことなら自分で着てパレードをすればよかった。そう思ってみても、もう後の祭りです。

 パレードが隣の国に入ったあたりで、一人の若者が「王女は裸だ」と叫んで、街中が大騒ぎになりました。これを見て、本物の王女は、やっぱり自分じゃなくてよかったと胸を撫で下ろしました。しかし、そのすぐ後で、その若者が実は隣の国の王子で、どうやら王女に一目惚れして街中を捜し回っていたらしいと聞くと、ああやっぱり自分だったらよかったのにと、地団駄を踏んで悔しがるのでした。

 そして、行き場のなくなった本物の王女は、あの娘が倒れていた森の方へと歩いて行きました。

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 昔、ある村に、ジャックという男の子がいました。ある日、ジャックはジャックのお父さんと一緒に、ジャックの家で飼っていた牛を売りに、ジャックの家のある村の隣の町まで出かけることになりました。

 ジャックとジャックのお父さんがジャックの家で飼っていた牛を牽いて歩いていると、それを見ていた男の人がこう言いました。
 「間抜けなことをしているな。一人は牛に乗って行けばいいんじゃないか?」
 なるほど、それもそうだなと思ったジャックのお父さんは、ジャックをジャックの家で飼っていた牛に乗せました。

 ジャックを乗せたジャックの家で飼っていた牛をジャックのお父さんが牽いて歩いていると、それを見ていた別の男の人がこう言いました。
 「子どもを甘やかしてるな。子どもを歩かせればいいんじゃないか?」
 なるほど、それもそうだなと思ったジャックのお父さんは、ジャックをジャックの家で飼っていた牛から降ろしました。そして、ジャックのお父さんはジャックの家で飼っていた牛に乗って、ジャックのお父さんが乗ったジャックの家で飼っていた牛をジャックに牽かせることにしました。

 ジャックのお父さんを乗せたジャックの家で飼っていた牛をジャックが牽いて歩いていると、それを見ていたまた別の男の人がこう言いました。
 「ひどい親だな。子どもも乗せてやったらいいんじゃないか?」
 なるほど、それもそうだなと思ったジャックのお父さんは、ジャックのお父さんを乗せたジャックの家で飼っていた牛から降りて、ジャックをジャックのお父さんが降りたジャックの家で飼っていた牛に乗せました。そして、ジャックのお父さんは、ジャックのお父さんが降りてジャックが乗ったジャックの家で飼っていた牛の上のジャックの後ろに乗りました。

 ジャックとジャックのお父さんを乗せたジャックの家で飼っていた牛が歩いていると、川にさしかかりました。すると、ジャックとジャックのお父さんを乗せたジャックの家で飼っていた牛は、こう一人ごとを言いました。
 「重たいな。この前みたいに川に飛び込んだら軽くなるんじゃないか?」
 なるほど、それもそうだなと思ったジャックとジャックのお父さんを乗せたジャックの家で飼っていた牛は、ジャックとジャックのお父さんを乗せたまま、川に飛び込みました。

 ところが、ジャックの家で飼っていた牛が思ったようにはなりませんでした。ジャックとジャックのお父さんは軽くなるどころか、ジャックの服とジャックのお父さんの服に川の水がしみ込んで、かえって重くなってしまったのです。しかも、ジャックのお父さんは、得体の知れない妙な生き物に変身してしまいました。

 ジャックと得体の知れない妙な生き物に変身したジャックのお父さんを乗せたジャックの家で飼っていた牛が歩いていると、またまた別の男の人がこう言いました。
 「エコドライブだな。しかし、牛は二酸化炭素を排出するけど、この緑豆を植えると二酸化炭素を吸収するから、その牛を緑豆と交換した方が、もっとエコになるんじゃないか?」
 なるほど、それもそうだなと思った得体の知れない妙な生き物に変身したジャックのお父さんは、そのまたまた別の男の人の言った通りに、ジャックの家で飼っていた牛を、そのまたまた別の男の人の緑豆と交換しました。

 ジャックと得体の知れない妙な生き物に変身したジャックのお父さんが、ジャックの家で飼っていた牛と交換した、またまた別の男の人が持っていた緑豆を持って、ジャックの家に帰ってくると、ジャックのお母さんは、嬉しそうにこう言いました。
 「おかえりなさい。まあ、おいしそうな緑豆ね。さっそく緑豆の料理を作りましょう」
 すると、ジャックが言いました。
 「食いしん坊だな。食べてしまったらエコにならないんじゃないかな?」
 得体の知れない妙な生き物に変身したジャックのお父さんも言いました。
 「そうだよ。その緑豆は畑に蒔いて育てるんだよ」

 ジャックと得体の知れない妙な生き物に変身したジャックのお父さんと食いしん坊なジャックのお母さんは、ジャックの家の裏の畑に行って、おいしそうだけど食べてしまったらエコにならない緑豆を蒔きました。

 その夜、ジャックの家の裏の畑に蒔いた緑豆の周りで、得体の知れない妙な生き物に変身したジャックのお父さんが踊りを踊っていると、ジャックの家の裏の畑に蒔いた緑豆から勢いよく芽が出てきました。そして、ぐんぐん伸びていきました。

 翌朝、ジャックがジャックの家の裏の畑に行ってみると、ゆうべ蒔いた緑豆は、雲に届く大きな木になっていました。さっそくジャックは、ジャックの家の裏の畑に生えた雲に届く大きな木をどんどん登っていきました。

 そして、とうとう雲の上まで登ったジャックは、雲の上に大きなお城が建っているのを見つけました。ジャックが見つけた雲の上の大きなお城にジャックが入ってみると、そこにはニワトリと、何かが入っている袋と、ハープがありました。ジャックは何かが入っている袋の中には何が入っているのだろうと思って、そっと何かが入っている袋を開けて覗き込みました。

 すると、いきなりハープがこう叫びました。
 「どろぼうだ! どろぼうだ! どろぼうがきだぞ!」
 びっくりしたジャックは、ジャックが見つけた雲の上のお城の中にあった何かが入っている袋の中に入っていたものを一つかみだけ手に取って、ジャックが見つけた雲の上のお城の中から逃げ出しました。すると、ジャックが見つけた雲の上のお城の中から雲を衝くような大男が追いかけてきました。

 ジャックの家の裏の畑に生えた雲に届く大きな木をするすると降りてきたジャックが、ジャックの家の斧を取り出して、ジャックの家の裏の畑に生えた雲に届く大きな木を切り倒そうとすると、ジャックが見つけた雲の上のお城の中からジャックを追いかけてきた雲を衝くような大男が、こう叫びました。
 「この木を切るな。この木を切ったらエコじゃなくなるんじゃないかな?」
 なるほど、それもそうだなと思ったジャックは、ジャックの家の裏の畑に生えた雲に届く大きな木をジャックの家にあった斧で切り倒すのをやめました。すると、ジャックの家の裏の畑に生えた雲に届く大きな木の途中から、ジャックが見つけた雲の上のお城の中からジャックを追いかけてきた雲を衝くような大男が飛び下りてきました。

 ジャックの家の裏の畑に生えた雲に届く大きな木の途中から飛び下りた雲を衝くような大男は、こう言いました。
 「お前が手に持っているのは緑豆だな。この地図の印を付けたところに蒔いてくれてもいいんじゃないかな?」
 ジャックは手の中の緑豆を見て、なるほど、それもそうだなと思いました。

 ジャックが見つけた雲の上のお城の中にあった何かが入っている袋の中に入っていた緑豆を、ジャックが見つけた雲の上のお城の中からジャックを追いかけてきた雲を衝くような大男にもらった地図の印を付けたところにジャックが蒔いていると、得体の知れない妙な生き物に変身したジャックのお父さんがやってきて踊りを踊りはじめました。

 その後、ジャックが見つけた雲の上のお城の中からジャックを追いかけてきた雲を衝くような大男は、ジャックの家のある村とジャックの家のある村の隣の町のあちこちに生えた雲に届く大きな木を何度も何度も行き来して、せっせとコンビニを作りました。そして、ジャックは、ジャックの家の裏の畑のすぐ近くにできたコンビニでアルバイトをしながら経営学を勉強したということです。

 そうそう、それと、得体の知れない妙な生き物に変身したジャックのお父さんは、今もどこかで踊りを踊っていることでしょう。

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 ある日、白ヤギさんが黒ヤギさんにメールを送りました。
 黒ヤギさんはメールを読まずにケータイをむしゃむしゃ食べました。

 待っても待っても、黒ヤギさんから白ヤギさんにメールが届きません。
 白ヤギさんはメールを待てずにケータイをむしゃむしゃ食べました。

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 ある土曜日の朝。クラリネットを持った少年が階段を降りてくる。少年は、キッチンで朝食の支度をしているママの背後へ行き、クラリネットを見せようとする。
 「これ、こわれちゃったよ。全然音が出ないんだ」
 「あとでパパに見てもらいなさい」
 「だめだよ。パパには内緒だよ」
 「早く片付けて、パパを起こしてきて」
 「うん…」
 生返事をした少年は、階段の下まで行ってクラリネットを吹いてみるが、やはり音は出ない。中に何か詰まってるんじゃないかと振ってみたり覗いてみたりしていると、奥の畳の部屋からお婆ちゃんの声がする。
 「こっちへ持ってきてごらん。直せるかどうか見てあげるから」
 少年は、お婆ちゃんの部屋へクラリネットを持って行く。
 ママが階段の下から、寝室にいるパパに声をかける。
 「パパ、いつまで寝てるの」
 「もう起きてるよ」
 「じゃあ、さっさと降りてきて」
 「わかった、わかった」
 お婆ちゃんの部屋では、背の低い机の上にクラリネットを乗せ、あちこちいじっているお婆ちゃんを、向かい側から少年がじっと見ている。お婆ちゃんは、器用に吹き口を取り外して大きな虫眼鏡で調べ始める。少年が横へ回って覗き込もうとすると、お婆ちゃんが少年に吹き口と虫眼鏡を渡す。
 「ほら、ここんところが割れて、取れかかってるよ」
 「ほんとだ。直せる?」
 「ちょっと待っててね」
 お婆ちゃんは、立ち上がって、押し入れの中から古めかしい小箱を取り出して、机の上に置く。お婆ちゃんが小箱から針と糸を取り出したのを見て、少年が驚く。
 「えーっ? それで直せるの?」
 「大丈夫。まかせておきなさい」
 リビングでは、母親が、テーブルの上に料理を盛りつけた皿と人数分のカップを並べ終わっている。階段の上へ向かって、もう一度大声で呼ぶ。
 「もうできましたよ」
 「今行くよ」
 畳の部屋では、お婆ちゃんが、吹き口から取り外した小さな物を針と糸で縫い合わせている。少年は、珍しそうにその様子を見ている。
 ママが畳の部屋の方へ来て、お婆ちゃんに声をかける。
 「朝ご飯、できましたよ」
 「はいはい。ちょっと待っててね」
 母親は、少年に向かって、少し恐い顔をしてみせる。
 「早く手を洗ってきなさい」
 「はーい」
 少年は、お婆ちゃんの方を気にしながら、しぶしぶ洗面所へ行って手を洗う。その間に、縫いおわったお婆ちゃんは、くるくるっと結び目をつくって糸を切っている。そこへ少年が急いで戻ってくる。
 「もう終わったの?」
 「さあ、これで元通り」
 お婆ちゃんが、縫い付けた小さな物をクラリネットの吹き口の中に挿し込むと、吹き口がパタパタと羽ばたき始める。お婆ちゃんは腰を抜かし、少年は目を丸くして見つめている。
 ママは、熱い飲み物を入れたポットをテーブルに運んだ後、お婆ちゃんの部屋へ行く。すると、クラリネットの吹き口が嬉しそうに部屋の中を飛び回っている。唖然として少年とお婆ちゃんとママが見ていると、吹き口は開いていた窓から勢いよく外へ飛んで行く。
 パジャマ姿のパパが階段から降りてくる。
 「あれ? みんな、どうしたの?」
 窓の外から、雀たちの賑やかな鳴き声が聞こえている。

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 長い冬の間に、アリたちが溜め込んだ食糧がとうとう底をついてしまった。巣の外へ出てみると、キリギリスの死体がみつかった。キリギリスのおかげで、アリたちは飢え死にせずにすんだ。

 ホトトギスが鳴いていると、アリがこう言った。
 「働きもせず鳴いているだけなんて、いい身分だね」
 すると、ホトトギスはこう答えた。
 「いい身分だなんて、とんでもない。鳴かないと信長に殺されてしまうのです」

 ナイチンゲールが鳴いていると、ホトトギスがこう言った。
 「あなたも信長に殺されないように鳴いているのですか?」
 するとナイチンゲールはこう答えた。
 「殺されるなんて、とんでもない。私は王様が死なないように鳴いているんです」

 グンタイアリが通過すると、その後には王様の骨が残った。
 ナイチンゲールはどこかへ逃げたようだ。

 ナイチンゲールが鳴いていると、負傷兵がこう言った。
 「鳴いてばかりいないで、早く治療してくれ」
 するとナイチンゲールは負傷兵の傷口にくちばしを突っ込んで、弾丸を取り出した。

 負傷兵が泣いていると、上官がこう言った。
 「これくらいの傷で泣くんじゃない」
 すると負傷兵は上官の立てた作戦に首を突っ込んで、ダメ出しをした。

 グンタイアリが通過すると、その後には負傷兵と上官の骨が残った。
 ナイチンゲールはどこかへ逃げたようだ。

 ホトトギスが鳴いていると、ウグイスがこう言った。
 「鳴いてばかりいないで、卵を温めろよ」

 ウグイスが平安京で鳴いていると、エイリアンがやって来た。

 ウグイス嬢が泣いていた。たぶん事情があったのだろうが、マイクは切っておいた方がいいと思う。

 ホトトギスを鳴かせてやろうと、山猿があれこれと挑んでいた。

 アリがナシにたかっていた。これってアリ、それともナシ?

 アリクイとアリジゴクが睨み合っていた。双方、何もできず、勝負にならない。

 アリがこう言った。
 「さあ、立ち上がってかかって来い」

 ミツバチが毎週泣いていた。脚が二本足りないのが、たぶん悲しかったのだろう。

 ハチミツをクローバーにかけて食べる。これってアリ、それともナシ?

 カレーをナシにつけて食べる。これってアリ、それともナン?

 アリクイがバクにこう尋ねた。
 「夢なんか食って、うまいのか?」
 するとバクがこう答えた。
 「頼むから、蟻を食ってる夢を見るのはもうやめてくれ」

 その夜、アリクイは夢の中でバグを食っていた。
 結局、虫じゃないかとバクは思った。

 シロアリは、クロアリから届いた手紙をうっかり食べてしまった。
 クロアリは、「何か用?」と訪ねて来たシロアリをうっかり食べてしまった。
 すると、グンタイアリが通過して、後には何も残らなかった。

 オウムが富士山麓で鳴いていると、機動隊がやって来た。

 ナイチンゲールが泣いている横で、負傷兵がこう言った。
 「ごめん」
 たぶん情事があったのだろうが、マイクは切っておいた方がいいと思う。

 どうやっても鳴かないホトトギスに、山猿が困り果てていた。そういう無理強いは、もうよした方がいいと思う。

 ナイチンゲールがぐったりしている横で、アリクイが泣いていた。
 「嘘つき」
 たぶん何か行き違いがあったのだろうが、これ以上詳しいことは、もう語らない方がいいと思う。

 作者が弱音を吐いた。
 「この形式でひねったストーリを書くのは、もうこのへんが限界っす」

 キリギリスが鳴いていると、マツムシとスズムシとクツワムシとウマオイがやって来て、セッションが始まった。演奏が終わると夜が明けていた。
 「また来年もやろうな」
 そう言い合って、彼らは去って行った。


※スケジュールの都合により、「地底の大王と底なしの穴」の続編「地底一族の陰謀」は、明日の18:30に公開します。

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 「断る」
 ジョナサンは、ドングリを窓から投げ捨てた。

 ドングリがころころと転がって池の中へ落ちようとした瞬間、勢いよく水を噴きかけて撥ね返したドジョウが一言。「親譲りの水鉄砲だ」

 「なぜ?」
 そう問いかける眠り姫に、ジョナサンは服を着ながら答えた。
 「君は君の夢を見ていればいい。僕は僕の夢を見る。それだけだ」
 すると、眠り姫は消えた。

 ジョナサンが家の外に出ると、地面に落ちたドングリの周りで、得体の知れない妙な生き物が踊りを踊っていた。
 「光る玉を返してくれ」
 得体の知れない妙な生き物は、にっと笑って光る玉を差し出した。ジョナサンがその玉を手にすると、青白い一筋の光が天の一角を指した。
 ジョナサンはその方角を見定めてから、ゆっくりと走り始めた。両脚に力をこめて加速して、両腕を大きく拡げた。全身で風を聞きながら走り続けた。そして、軽く羽ばたいたとき、ジョナサンの体は宙に浮いた。

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 その雲の上の地面に降り立ったときは、まだ夜更けだった。雲の中にかくれているのかもしれない城は暗くてよく見えない。酒場にもぐり込んでうとうとしていると、起こされた。
 「許可証をお持ちですか?」

 しばらく押し問答をした結果、Jは自分が誰かと間違われていることを知った。誤解をとこうとしても話がこじれる一方で埒が開かない。後から来ることになっているという二人の助手に会えば、人違いだと分かるだろう。

 Jは外に出た。すがすがしい朝の光の中、田舎町のような城が山の上に見えた。城へと続いているらしい村の道をさんざん歩き回って、なぜか城には近づけない気がして宿屋に戻ると、もう日が暮れていた。

 二人の助手がやって来た。二人はそっくりで、どっちがどっちだか分からない。Jは二人をまとめて「ハンプティ」と呼ぶことにした。後になって、なぜこのとき誤解をとかなかったのかと思い返してみたが、Jには、その理由が分からない。ただ何となく、この悪夢から目覚めることが不安だったような気もする。

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 勇敢な若者である全裸のジョナサンが城の中へ駆け込む「どこにいる?」と同時に時空を旅する円盤形の乗物であるジョナサンが「ぶつかるぞ!」城に激突して意識を失った。その大音響と激しい揺れで眠りを破られた茨姫であるジョナサンは飛び起き「何なの?」城外にいた荒馬であるジョナサンは「ヤフーの乗物が落ちてきたぞ!」逃げていった。円盤形の乗物の中で長椅子で自慰に耽っていた貴族の女であるジョナサンは朦朧としたまま事態がのみ込めず貴族の女の股間に顔をうずめていた家具であるジョナサンは墜落の衝撃で舌を噛んで絶命した。

猛犬

 ジョナサンは猛犬になっていた。墜落した円盤形の乗物の中の長椅子で自慰に耽っていた貴族の女に飼われていた猛犬に。なんだわん。なんだなんだわんわん。なんだなんだなんだわんわんわん。すっかり混乱してしまった猛犬であるジョナサンは貴族の女であるジョナサンに咬みついてしまった。貴族の女であるジョナサンは叫ぼうとしたが全身が麻痺して動けなくなっている。しまったわん。ごしゅじんにかみついてしまったわんわん。猛犬であるジョナサンは困ってしまってわんわんわわんと吠えながら逃げていった。

馬人

 円盤の墜落を目撃した馬人であるジョナサンは家に逃げ帰って主人であるジョナサンに報告した。またヤフーが落ちてきたか。あいつらは全く救いようのない愚かな動物だな。そこへ猛犬であるジョナサンが血相を変えて飛び込んできた。たすけてくださいわんわんわん。まちがってごしゅじんにかみついてしまいましたわん。ころされてしまいますわんわん。大丈夫だ。そんなことを心配するな。おまえはここにいればいい。この家の主人であるジョナサンは円盤の墜落を報告した馬であるジョナサンに薬草の入った箱を持っていくように命じた。ああそうそう。このヤフーも連れて行くといい。ヤフーにしては賢いから何かの役に立つだろう。

ジョナサン

 馬人の家に身を寄せていたジョナサンであるジョナサンは馬人の主人であるジョナサンの指示に従って馬人であるジョナサンの後について行った。石造りの丈夫そうな城の中ほどに金属製の小さな円盤が斜めにめり込んでいた。たいした被害はなさそうだ。馬人であるジョナサンはジョナサンであるジョナサンに薬草の入った箱を持たせた。俺はこんなヤフーの巣窟には入りたくないから後はあんたが適当にやってくれ。静まり返った城の中に入ってみると人々はみんな眠っていた。熟睡していて円盤の墜落には誰も気付かなかったのだろう。もちろん怪我人は一人もいない。そこへ勇敢な若者であるジョナサンがやってきた。おい早く助けてくれ。早く茨姫を助けなければ。まあ落ち着いて。君は裸じゃないか。その茨姫とかいうのも裸のヤフーならそのまま行けばいいだろう。しかしこの城の人たちはみんな服を着ていたぞ。勇敢な若者であるジョナサンは脱ぎ捨てた服を取りに城の外へ走って行った。広いホールの床の少し上あたりの壁から円盤が半分ほど突き出している。その上部にあるハッチが一つ開いていた。あの小心者の犬はここから出てきたのだろう。円盤のつばの部分を上りハッチから中に入った。狭苦しい部屋の中にヤフーの臭気がこもっている。一匹のヤフーの雌が長椅子の上で股を開いて失神している。股間からは気味の悪い肉の塊が垂れ下がり床には血溜まりができている。雌の足元には異様な姿のヤフーが口らしき部分から血を流して死んでいた。何をやっていたのか想像したくもないが墜落の衝撃でこうなったのだろう。ジョナサンであるジョナサンはヤフーの雌に声をかけてみた。おい大丈夫か。しかし雌の返事はない。全身が麻痺しているらしいが呼吸はしているようだ。どうせ何かやばいドラッグでもやっていたのだろう。適当な薬草を取り出して火を点け鼻に近づけてやるとヤフーの雌は瞬いた。ジョナサンであるジョナサンは薬草を床に落として火を踏み消した。俺の言うことが分かるか。イエスなら一回ノーなら二回瞬きをしろ。するとヤフーの雌は瞬きを一回した。

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