カテゴリ「漫画」の記事 (5)

 昔、昔、正直者なのに馬鹿を見ず、畑から出てきた大判小判で小金持ちになり、おまけに小太りになった爺さんがいた。小太りな爺さんは、ポチという犬を飼っていた。ポチも贅沢な餌を毎日たらふく食べていたせいで、小太りになっている。

 ある日、隣の貧乏だが親切な爺さんの家の庭にポチがやってきて、こう吠えた。
 「爺さん、ワンワン。爺さん、ワンワン」
 「おやおや、珍しい。ポチじゃないか」
 「大変、ワンワン。大変、ワンワン」
 「どうしたんじゃ?」
 「病気だ、ワンワン。病気だ、ワンワン」
 ポチの後を追って隣の家に行くと、小太りな爺さんが頭から布団をかぶって寝ている。
 「どうした、爺さん?」と布団をめくると、おでこに大きな瘤があった。
 「何じゃ、それは」
 「ガンだそうじゃ」
 「ガン?」
 「手術をしなければ、あとひと月の命じゃと」

 「大判小判を残らず全部? あの青ひげとかいうやつがそう言うたのか」
 「死んでしもうたら、元も子もないんでな」
 「気でも違うたか。あんな流れ者の言うことを本気にするとは」
 「あの薮よりは信用できるぞ」
 「そうじゃ、養生所に行って診てもろうたらええ」
 するとそこへ、赤ひげが入ってきた。
 「悪いが、話は聞かせてもらったよ」
 赤ひげは、有無を言わさぬ手早さで瘤を触診した。
 「これは、ガンではない。ただのできものだ」
 「もうだまされんぞ。婆さんのときもそう言うたではないか」
 「ならば、そのもぐりの医者にかかって死ぬがいい」
 そう言い置いて、赤ひげは、帰って行った。

 翌朝。瘤のできた爺さんは大判小判の入った甕を手押し車に乗せ、青ひげの屋敷に向かっていた。ポチは留守番だ。隣の親切な爺さんが追いかけて来た。
 「どうしても行くのか」
 「大きなお世話だ」
 「小さな親切と言え」
 「もうついて来るな」
 そんなことを言い合っているうちに、青ひげの屋敷に着いた。
 「こんな立派な屋敷が建つんじゃから、腕のいい医者に決まっとる」

 瘤のできた爺さんの様子を見に、赤ひげがやって来た。すると留守番のポチが尻尾を振って、こう吠えた。
 「爺さん、ワンワン。青ひげ、ワンワン」
 「そうか」
 赤ひげは、懐から吉備団子を出してポチに与えた。
 「それを食ったら、鬼退治に出かけるぞ」

 「ここから先は立ち入り禁止だ」
 そう言って、青ひげは地下にある手術室の扉を閉めた。一人で取り残された親切な爺さんが、心配そうな顔で廊下を行きつ戻りつしていると、赤ひげがやって来た。ポチと、どういうわけか猿と蜂がお供についている。
 「青ひげ、ワンワン。もぐりだ、ワンワン」
 ポチが吠えると、手術室の扉が開いて青ひげが顔を出した。「うるさいな。手術の邪魔を…」と言いかけたところを猿がひっかく。「うわっ、何をする!」と顔を覆って叫んでいると、注射器をもって飛んできた蜂が、青ひげの尻にプスリと一刺し。
 廊下に倒れた青ひげは、いびきをかきはじめた。赤ひげはずかずかと手術室に入って行く。
 「さあ、あとはわしがやろう」
 親切な爺さんが恐る恐る入ってみると、赤ひげは、麻酔で眠っている爺さんの瘤にメスを入れていた。
 「心配するな。すぐに終わる」

 こうして、瘤を取ってもらった爺さんは、ただの小太りな爺さんになり、贅沢な暮らしをやめたおかげで、そのうち元通りの正直な爺さんに戻った。
 「青ひげのやつ、顔じゅう傷だらけになって、ほうほうの体で逃げて行きおった」
 このように、親切な爺さんは村中に言い触らして歩いた。そして、必ず、こう締めくくるのだった。
 「しかし、大判小判を残らず持っていくとは、敵も去るものじゃな」

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 あるとき、雲の上で、ジャックが大判小判を眺めていると、ピノキオが言った。
 「どうしてあんな嘘を吐いたんですか?」
 「嘘も方便さ」
 「嘘もホウベン?」
 「人間には、嘘を吐くことが必要な場合もあるという、あの国のことわざだ」
 「僕には分からないな。嘘を吐くと人間にはなれないと言われたけど、これも嘘なの?」
 「あの女神は人間じゃないだろう」
 ジャックは笑って、こう付け足した。
 「もっとも、あの女神は正直者が大好きなようだが…」
 ピノキオの耳が赤くなった。
 「すぐ顔に出るやつだな」

 そのころ地上では、正直爺さんが荒れた畑を耕していた。すると、鍬が何か堅いものに当たった。
 「やれやれ。もう大判小判には懲り懲りじゃよ」
 正直爺さんが手を休めて腰を伸ばしていると、ポチがやってきた。しかし、畑に埋まっているものの匂いを嗅ぐと、つまらなそうな顔で戻って行った。
 「どうやら今度はただのガラクタのようじゃな」
 正直爺さんはゆっくりと鍬を入れ、埋まっている物を掘り出しにかかった。

 養生所に、先日、瘤を取ってやった爺さんがやって来た。例の甕を大事そうに抱えている。「どうした?」と赤ひげが問うと、爺さんは「裏の畑から、こんな物が出てきました」と答えて、甕を床に置いた。そして、甕の中から手紙を取り出して、赤ひげに渡した。

 爺さんがじっと見ていると、赤ひげはこう言った。
 「わしが読まずに食べるとでも思っているのか」
 そして、手紙を読み始めた。

もう分かっていると思うが、ガンというのは嘘だ。だまして悪かった。しかし、あのまま贅沢三昧の暮らしを続けていたら、あんたは近いうちに死ぬところだった。大判小判はその治療費としていただくつもりだったが、私は何もできずに伸びていた。そのまま返すだけでは芸がないので、これを置いて行く。赤ひげによろしく。

 甕の中には、紙に包んだものがたくさん入っていた。包みを一つ取り出して開けてみると、植物の種といっしょに、栽培法や処方などを細かく書き込んだ紙片が入っていた。なかなか手に入らない珍しい薬草だ。どの包みの紙片にも、ここの栽園には植えていない薬草の名が記されていた。

 爺さんがじっと見ていると、赤ひげはこう言った。
 「わしが涙を流すとでも思っているのか」
 そして、苦い笑みを浮かべて呟いた。
 「あの青二才め」

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前回のあらすじ)
 超昔、ある大陸で繁栄していた超文明社会は一夜にして海の底に没した。しかし不老不死の大王とその一族はシェルターの中で生き延びた。時が流れて普通の昔になったころ、地下宮殿の天井から、地上の声が聞こえてきた。

(主な登場人物)

ナー大王  地下宮殿の主
フー后 ナー大王の妻
サー妃 ナー大王の長女
マー王 サー妃の夫
カー王 ナー大王の長男
ワー姫 ナー大王の二女
ター王子 マー王の長男
ノー王 ナー大王の甥

 地下宮殿の中では、超発達した科学技術によって、地上から伝わって来た声の意味を既に解析していた。

 「どれもこれも支配者に対する悪口ばかりです」
 カー王の報告に、ナー大王が満足げに頷いた。
 「うむ。地上では圧政が続いておるようじゃな」
 「すぐに、やっつけに行きましょう」と、カー王が飛び出そうとするのをナー大王が一喝した。
 「馬鹿もんッ!」
 ナー大王がカー王に説教していると、サー妃がやって来た。
 「あんた、今度は何をやったの?」
 「姉さんには関係ないよ」
 「いきなり地上に出ようとしおったんじゃ」
 「まあ、何てことを」
 そこへ、フー后が助け船を出した。
 「もういいじゃありませんか。カー王も反省しているようですし」

 カー王が自室にさがって落ち込んでいると、妹のワー姫がなぐさめた。
 「きっと、お父さんはお兄ちゃんのことが心配だから怒ったのよ」

 ナー大王の招集で会議が始まった。
 「危なっかしくてカー王には任せられん。地上にはやはりマー王に行ってもらおう」
 「いやー、僕にはそんな大役は…」
 マー王が遠慮していると、マー王の幼い息子が言った。
 「パパは悪いやつをやっつけないですか?」
 マー王が言いよどんでいると、ナー大王はター王子に尋ねた。
 「ターちゃんは、地上の悪いやつをやっつけるのかい?」
 「ボクが行ってやっつけます」
 「そうか、そうか」
 ナー大王は目を細めた。

 しばらくすると、ナー大王の甥にあたるノー王がやってきた。
 「地上の声が伝わって来たんですって?」
 「もう知っておるのか」
 「さすがはノー王、耳が早いわね」
 「こういうのを地獄耳っていうんだよ」
 「地獄耳ですか。悪いやつは僕がやっつけます」
 「ちょっと、どうしたんだよ、ターちゃん」
 「カー王が余計なことを教えるからよ」

 「そう言えば、こんなこともありましたっけ…」
 フー后が言うと、みんながそのテーマに沿ったエピソードを披露しはじめた。何しろ不老不死で長年暮らしてきた一族だから話の種が尽きることはない。

 こうして、地上人の危機は回避されたのであった。

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 「今日からあんたが乗せてくれよ」と熊が言うと、馬は「別に構いませんよ」と快諾した。
 そんなわけで、禁太郎と河童の姫は馬の背に仲良くまたがっている。ぽっくりぽっくり。
 熊には猿が乗っている。のっしのっし。犬神の背には×××姫。すたすたすた。

 道中、河童の姫がいろんな話をした。自分が姫と呼ばれているのは大金持ちの娘として生まれたせいであり、河童の社会は王制ではないこと。河童は衣服を着ないこと。河童の雌が気に入った雄を追いかけて抱きつくのは普通だということ。などなど。
 ぽっくりぽっくり。のっしのっし。すたすたすた。

 猿は、河童の次になまかになるのは、やっぱり猪だろうなと予想していた。しかし、あの鹿の話から、あの勇敢な姫の話につながらなかったことが、どうも腑に落ちない。伏線が何本も張ってあったんだけどな。今こうして俺が考えているということは、このネタは没になったということか。残念だなあ。
 ぽっくりぽっくり。のっしのっし。すたすたすた。

 夜になった。

 ぐーぐーぐー。すやすやすや。むにゃむにゃむにゃ。
 もぞもぞもぞ。はあはあはあ。あっあっあっ。
 こそこそこそ。ちくちくちく。あっ、いたいっ。

 夜が明けた。禁太郎は目を覚ました。きれいに畳んだジーンズはあったが、腹掛けが見当たらない。河童の姫は静かな寝息を立てている。ジーンズをはいて、あたりを捜していると、朝もやの中から×××姫が現われた。禁太郎の腹掛けを持っている。禁太郎は、×××姫が黙って右手で差し出した腹掛けを受け取った。
 綻びたポケットが、不器用に繕ってあった。
 「直してくれたんだね。ありがとう」
 そう禁太郎が言うと、×××姫は右手を差し出した。
 「そういえば、禁太郎飴をまだあげていなかったよね」
 ×××姫は何度も頷いた。
 「でも、困ったことに、何が好物なのか全然見当もつかないんだよ…」
 すると×××姫は、こう言った。
 「××××××!」
 「あっ、そうか。その手があったか」

 禁太郎は、腹掛けから禁太郎飴を取り出した。
 「ほっぺたのところには、××××××が入ってるよ」
 ×××姫は喜んで、禁太郎飴を食べ始めた。よほど××××××が好きなのだろう、夢中になって、ずっと背後に隠していた左手を出している。その指には包帯が不器用に巻いてあった。
 ×××姫が繕ってくれた腹掛けを見ながら、今までよく分かんない人だと思ってたけど、いいとこあるんだな、と思っていると、×××姫が腹掛けの下の方を指差して、厳かにこう言った。
 「禁×袋!」
 やっぱりよく分かんないな、と禁太郎は思った。


“他一篇”は、18:30頃から、適当なBGMを思い浮かべながらお読みいただくと、気分が出ます。


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 唐突にヘルシング教授がオランダ語で話し始めた。
 「ところで、あなたは日本に行ったことがありますか?」
 ジョナサン(スウィフトの方)が驚いて教授を見ると、「あると答えろ」と顔に書いてあった。そこで、オランダ語で答えた。
 「もちろん、ありますとも」
 以下、教授とジョナサン(スウィフトの方)は、オランダ語で会話を続ける。
 「そうですか。あなたは、日本へ行きましたか。私はまだ行ったことがないのです。あなたは日本のどこへ行きましたか?」
 「まず、エドです。それから、ナンガサクというところに行きました」
 「そうですか…」
 ヘルシング教授は、ここで一冊の本を取り出して、ジョナサン(スウィフトの方)に渡した。
 「ナンガサクにはオランダ人がいましたか?」
 その本には鉛筆が挿んであり、ページの余白には“あの絵の中のトカゲが怪しい。絶対に、絵の方を見るな”と英語で書いてあった。以下、オランダ語の会話と英語の筆談が同時に進行する。
 「いましたよ。デジマというところに」“それは一体どういう意味ですか?”
 「デジマとはどんなところですか?」“絵の中のトカゲが、絵の外にいる蜘蛛を食った”
 「人工的な島で、建物がぎっしり並んでました」“食った?”
 「ほほう、面白い島ですね」“間違いない。あのトカゲはドラキュラ伯爵だ”
 オランダ語の会話は、このあたりから次第にでたらめになっていく。
 「まるで軍艦のように見えるので、地元の人はグンカンジマと呼んでいました」“なぜ、そう言えるんですか?”
 「そこでオランダ人は何をしていましたか?」“この絵の作者はエッシャーというオランダ人だ”
 「オランダ人は商売をやっていました。平気で踏絵を踏みながらね」“オランダ人?”
 「オランダ人が全部そうだとは限らないでしょう」“そうだ。そして、この本には、伯爵の影響を受けて蝿や蜘蛛を食う患者の話も出てくる”
 「あなたのように、ですか?」“それとオランダ人がどうつながるんですか?”
 「そうです。私は医者であるけれども、信仰を捨ててはいない」“ドラキュラ伯爵の体にはオランダ人の血も流れているに違いない”
 「しかし、踏絵を踏んでも平気な人がいるなんて…」“まあ、オランダ人の血を吸ったとすればですがね。しかし、そうだと仮定すると?”
 「まったく考えるだけで恐ろしいことですな」“つまり、十字架なんかでは封印できない!”
 「その後の戦争で、空から降ってきたピカドンにやられて、グンカンヤマは海に沈みました」“ああ、何てことだ!”
 「ピカドンとは?」“だから、この絵の中のトカゲを何とかしなくてはならん”
 「核兵器です。放射能でナンガサクはめちゃめちゃになりました」“丸ごと燃やしてしまいましょう”
 「それはひどい話だ」“君は、このような芸術作品を燃やせると思うのか?”
 「戦争が終わって、グンカンヤマトは海から引き上げられました」“では、絵の中からトカゲを引きずり出して始末すればいい”
 「それから?」“あんた、一休さんか?”
 「宇宙へ飛んで行って、放射能除去装置をもらってきました」“そうだ。真空にすればいいんだ!”
 「それはどんな機械だね?」“それは今や信仰とは無関係だな。しかし真空をどうやって作る?”
 「詳しくは分かりませんが、一種のクリーナーでしょう」“掃除機と布団圧縮袋があれば簡単に作れますよ”
 「そのために、よその星まで行くとはね…」“しかし、どうやって手に入れるんだ?”
 「古き良きSF漫画ですからね」“通販ですよ、通販!”
 「そういえば、今度実写化されるとか聞きましたが」“ここにはテレビもネットもないのに、どうやって?”
 「まったく、でたらめな話ですね」“こっちでは無理ですが、あっちの世界なら何でもあるでしょう”
 「あの主役はひどいもんです」“しかし、あっちの世界に誰が行けるというんだ?”
 「あの役ができるのは…」“ハンプティ・ダンプティですよ”
 「私には考えもつかんな」“それだ!”
 「やっぱり、僕にも想像できませんね」“さっそく行かせましょう”
 教授とジョナサン(スウィフトの方)は、鏡のある部屋から出て行った。壁にかかった絵の中のトカゲは、まだ何も気付いていないようだ。

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