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禁太郎は、腹掛けの中から取り出したものを河童の姫に見せました。
「これが、俺の禁太郎飴だ」
「まあ、すごいわ」
「さあ、早くしゃぶってくれ」
河童の姫は、禁太郎飴を口に含みました。
「ああ、こんなの初めてよ」
――ここまで話したとき、×××姫は馬に蹴り倒された。
「僕の角で、変な人形劇をしないでください」
そこへ、顔を洗いに行っていた禁太郎が戻って来た。
「えーっと。どこからやったらいいのかな?」
「そうですね…」
架空の台本のページをめくりながら、馬が答えた。
「沼の中から河童の姫が現われるシーンからやり直しましょう」
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すると、沼の中から、河童の姫がひょっこりと顔を出して、こう言った。
「あなたが落としたのは、この“金”の玉ですか、それともこっちの“禁”の玉ですか」
顔の高さに掲げた両手には、まったく同じ大きさの透明な玉が握られている。
「僕が落としたのは“禁”の玉です。そっちじゃなくて、こっちの…」
禁太郎が“禁”の文字が浮かび上がっている方の玉を指さすと、河童の姫は妖艶な微笑みを浮かべて、こう言った。
「あなたは正直な人間ですね。それにその髪型も気に入りました」
そして、沼にもぐり、禁太郎のいるほとりに向かって泳いできた。
沼から上がってきた河童の姫は、裸だった。さっきはここで不覚にも鼻血を流してしまった禁太郎は、今回はどうにか持ちこたえた。しかし、その次に、河童の姫に裸のまま抱きつかれてしまったとき、禁太郎の我慢は臨界点を突破した。
*
「話が進まないから、そこはカットして、河童の姫が話をするシーンからいきましょう」
馬が、架空の台本の十数ページ分をびりびりと破り捨てながら言った。角を取り上げられた×××姫は、人形に見立てた両手をくんずほぐれつさせ、大人しく遊んでいる。
――そして、河童の姫は次のように語った。
今から三日前のことです。何か明るく光るものが見えたので、私は水面から顔を出して空を眺めていました。まだ昼間なのに星が見えるのは珍しいことです。これがほうき星というものだろうかと思いました。そのほうき星はだんだん大きくなって、この沼に近づいて来るように見えました。私は恐くなって家に帰りました。
その夜、夢の中に妖精が出てきて、こう言いました。
「あなたは今日、空から落ちてくる光を見ましたね」
私が頭の中で「はい」と答えると、妖精には、それが聞こえたようでした。
「明日の朝、大寺院へ行って『生命の樹』の根本をご覧なさい。あなたが見つけた光は、そこにあります」
翌朝、私は妖精に言われた通りに、大寺院へ行って『生命の樹』の根本を見ました。すると、そこには、この不思議な玉が落ちていたのです。光にかざして見ると“金”の文字が浮かび上がりました。
すると、私の後ろから長老の声がしました。
「おや、姫じゃないか。何か困ったことでもあったのかな」
私が不思議な玉を見せて、これまでの話をすると、長老はこう言いました。
「それは『善の果』だな。姫が最初に見つけたのだから姫のものだ。それを持っていると何かいいことがあるかもしれないよ」
そして、今日、これと同じような玉が空から降ってきたのです。
――ここまで話した河童の姫は、裸のまま再び禁太郎に抱きついた。
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