カテゴリ「問題話」の記事 (2)

 馬が話し終わると、すかさず猿がこう言った。
 「じゃあ、次はおれの番だ」

――馬にまたがった猿は、次のように語った。

 昔、ある山寺に、とんち好きな和尚さんがいました。この和尚さんには、残念という名の弟子がおりました。その名の通り、本当に残念な弟子でした。

 あるとき、町まで行く用事ができた和尚さんは、弟子の残念に留守番を言いつけました。そして、和尚さんの部屋にある壷に入っているのは毒だから絶対に舐めてはいけないよと付け加えました。

 和尚さんがいなくなると、残念は、さっそく和尚さんの部屋に入って、戸棚から壷を取り出そうとしました。すると、後ろの方から「見たぞー」という声がしました。
 ぎくりとして振り返ると、障子の隙間から三匹の山猿が覗いていました。この三匹の山猿は、ミザル、キカザル、イワザルという、とても面倒な三兄弟です。

――ここまで話した猿は、急にクイズを出題した。

 「さて、ここで問題です。『見たぞー』と言ったのは、どの猿でしょう?」

――そして、何ごともなかったように、話の続きを語った。

 すると、残念は、ミザルに向かって「お前は何も見なかった」、キカザルに向かって「お前は何も聞かなかった」、イワザルに向かって「お前はこのことを誰にも話さない」と言いました。そして、三匹の猿に「いいな」と念を押しました。

 すると、イワザルだけは「僕はそういうキャラだからいいよ」と言いましたが、キカザルは「僕は見たことを和尚さんに話せるよ」と言い、ミザルは「僕だって聞いたことを和尚さんに話せるよ」と言いました。本当に残念な弟子ですね。

――ここで、作者は突然あることを思い付いて、猿の話を中断させた。

 「この続きは、またあとで」

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 旅を始めてから一週間が過ぎ、そろそろ馬鹿話の種も尽きてきた。禁太郎の一行は黙々と歩き続けている。禁太郎の話を聞いて喜んでいた熊も、「次は俺の番か」と言ったきり、ずっと黙り込んだままだ。

 しばらく考えていた熊が「駄目だ。頓智話なんて何も思い付かないぞ」と言うと、禁太郎は「別に頓智話じゃなくてもいいんじゃないかな」と適当なことを言う。「本当に何でもいいのか?」と念を押す熊に、猿と馬も「何でもいいから早く話してくれよ」と答えた。

――そして、やっと熊が語り始めた。

 昔、ある森に、一頭の熊がいた。冬になったので、熊は冬眠した。

  • 熊が眠っていると、チャリーンという音がした。そのまま眠り続けていたかもしれないが、そのことを熊は忘れてしまった。
  • 熊が眠っていると、チャリーンという音がした。今度は誰かに起こされて何だかややこしい質問をされ、それに答えてからまた眠ったかもしれないが、そのことを熊は忘れてしまった。
  • 熊が眠っていると、チャリーンという音がした。今度も誰かに起こされて何だかややこしい質問をされ、それに答えてからその誰かをむしゃむしゃと食べたあとまた眠ったかもしれないが、そのことを熊は忘れてしまった。

 そして、春になった。熊は空腹なようなそうでもないような妙な体調で冬眠から目覚めた。おまけに、熊の傍らには誰かの死体があるようなないような変な状態になっていた。熊は何だか無性に苛々してきた。

 すると、どこからか熊めがけて飛んできたような飛んでこなかったような矢を、熊は身をかわしたような身をかわさなかったような素早い動きをして、弓を構えていたような構えていなかったようなやつに襲いかかって、むしゃむしゃと食べたような食べなかったような腹ごしらえをした。

 この森に何頭の熊がいるのかは分からないが、その中で一番不機嫌な熊だということだけは確かだった。

 森で一番不機嫌な熊は、トロッコに乗り込んだ。熊を乗せたトロッコは、斜面を下りながら徐々に勢いを増していって、里が近づいてきたときには猛スピードになっていた。

――このように語った熊は、それっきり黙ってしまった。これで熊の話は終わりのようだ。

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