カテゴリ「噂話」の記事 (4)

 昔、昔、ある森に、シンドラとサンドラという双子の魔女がいました。

 ある夜、シンドラが金貨を数えていると、魔法の鏡から、怪鳥の鳴き声のような笑い声が聞こえてきました。

 「何や、こんな時間に…」と、シンドラが鏡を見ると、そこにはサンドラの顔が映っています。
 「あんたの呪い、また解けてもうたで」と、鏡の中からサンドラの愉快そうな声が返ってきました。
 「何やて?」
 「あのアホにした何とかいう王子、元に戻りよった」
 「えっ? アホ王子ゆうたらハンスのことか?」
 「そやそや」と、サンドラは、ハンス王子の映像を魔法の鏡に送ってきました。
 「あーっ。こいつ、いつの間に。下半身丸出しやないか!」
 「そやから白馬を白タイツなんかに変えるなっちゅうたんや」
 「なんや、この裸の女は!」
 「隣の国のお姫さまや。ははー、おまえにも裸に見えるか?」
 「よー見えとるで。素っ裸やん」
 「そら、そうやろな。わしが作ったアホには見えん服、着とるんや」
 「何やと!」
 「見てみい、張り倒されとるで!」
 「あー、立ち上がった!」
 「押したで!」
 「また押した!」
 「押すだけかいな」
 「アホやな、こいつ」
 「アホや」
 「もともとアホやったんかいな」
 「そやな」

 鏡の中のサンドラの声が消えると、シンドラはアホな人間どもから魔法で取り出した金貨をもう一度数え直しにかかりました。一方、サンドラは、今日の自分の活躍を魔法の鏡に映し出させて、朝までずっと見入っていました。

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 「何? 原典が届くまで何日か待ってくれじゃと?」

――しかし、ホラー吹き男爵は「事情が変わった」なんて言うこともなく、お構いなしに語り始めた。

耳でか裕二

 昔、耳のでかい裕二という男がおった。でかいのは耳だけではなくて、鼻の穴もでかかったそうじゃ。それだけなら別にどうということもない、ちょっと野生味のある顔をした見ようによってはなかなかの好青年だったのじゃが、言うことが妙にでかいということでな。それを物真似の種にして人々を笑わせている芸人がおったそうじゃ。ところがそれを知った裕二という男が本気で怒っておったという噂じゃが、態度がでかい割にケツの穴は小さかったということじゃな。

――ジョナサンが黙っていると、男爵はこう尋ねた。

 「どうした。この話、あまり恐くなかったか? じゃ、玉なし裕二の話をしてやろうか…」
 「いえ、その話も飽きるほど聞いているので、もう結構です。それに、あんまり恐くもないし…」
 「そうか。それじゃ、口曲がり太郎の話なんて、どうじゃろか?」
 「恐くもなければ面白くもないですね」
 「じゃ、腹切り由紀夫はどうじゃ? これは恐かろう」
 「えーっと。この先どうなるのかまだ分かりませんが、どっちにしろ恐くはないです」
 「ふん、うまく躱しおったな。それなら、靴下なし純一の話をしようか。靴下はナシでも息子より年下はアリという男でな…」
 「そんな話はもうたくさんです」
 「なんじゃ、ゴシップ・ホラーはお好みではなかったか」
 「私が言っているのは、そういうことではなくて」
 「分かっておる。一応、タイトルに合わせて暴言を吐いてみようとしただけじゃ」

 「ところで、伯爵は、どこにおいでなのでしょうか」
 「おっと、いけない。つい話に夢中になって、すっかり忘れておった。伯爵は、急用で外出しなきゃならんことになったので、くれぐれもジョナサン様によろしくと、このように仰っておられた」
 「急用で外出されたのですか。それで、伯爵がお戻りになるのは?」
 「さあ。そこまでは聞いておらんが…」

 どうもこの男爵の話は信用できないけれども、「伯爵が自由に見てもよいと仰っていた」と太鼓判を捺すので、ジョナサンは伯爵の書斎に入り、書棚に並んだ蔵書を眺めている。有り難いことに、どの本も英語で書かれていた。

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 唐突にヘルシング教授がオランダ語で話し始めた。
 「ところで、あなたは日本に行ったことがありますか?」
 ジョナサン(スウィフトの方)が驚いて教授を見ると、「あると答えろ」と顔に書いてあった。そこで、オランダ語で答えた。
 「もちろん、ありますとも」
 以下、教授とジョナサン(スウィフトの方)は、オランダ語で会話を続ける。
 「そうですか。あなたは、日本へ行きましたか。私はまだ行ったことがないのです。あなたは日本のどこへ行きましたか?」
 「まず、エドです。それから、ナンガサクというところに行きました」
 「そうですか…」
 ヘルシング教授は、ここで一冊の本を取り出して、ジョナサン(スウィフトの方)に渡した。
 「ナンガサクにはオランダ人がいましたか?」
 その本には鉛筆が挿んであり、ページの余白には“あの絵の中のトカゲが怪しい。絶対に、絵の方を見るな”と英語で書いてあった。以下、オランダ語の会話と英語の筆談が同時に進行する。
 「いましたよ。デジマというところに」“それは一体どういう意味ですか?”
 「デジマとはどんなところですか?」“絵の中のトカゲが、絵の外にいる蜘蛛を食った”
 「人工的な島で、建物がぎっしり並んでました」“食った?”
 「ほほう、面白い島ですね」“間違いない。あのトカゲはドラキュラ伯爵だ”
 オランダ語の会話は、このあたりから次第にでたらめになっていく。
 「まるで軍艦のように見えるので、地元の人はグンカンジマと呼んでいました」“なぜ、そう言えるんですか?”
 「そこでオランダ人は何をしていましたか?」“この絵の作者はエッシャーというオランダ人だ”
 「オランダ人は商売をやっていました。平気で踏絵を踏みながらね」“オランダ人?”
 「オランダ人が全部そうだとは限らないでしょう」“そうだ。そして、この本には、伯爵の影響を受けて蝿や蜘蛛を食う患者の話も出てくる”
 「あなたのように、ですか?」“それとオランダ人がどうつながるんですか?”
 「そうです。私は医者であるけれども、信仰を捨ててはいない」“ドラキュラ伯爵の体にはオランダ人の血も流れているに違いない”
 「しかし、踏絵を踏んでも平気な人がいるなんて…」“まあ、オランダ人の血を吸ったとすればですがね。しかし、そうだと仮定すると?”
 「まったく考えるだけで恐ろしいことですな」“つまり、十字架なんかでは封印できない!”
 「その後の戦争で、空から降ってきたピカドンにやられて、グンカンヤマは海に沈みました」“ああ、何てことだ!”
 「ピカドンとは?」“だから、この絵の中のトカゲを何とかしなくてはならん”
 「核兵器です。放射能でナンガサクはめちゃめちゃになりました」“丸ごと燃やしてしまいましょう”
 「それはひどい話だ」“君は、このような芸術作品を燃やせると思うのか?”
 「戦争が終わって、グンカンヤマトは海から引き上げられました」“では、絵の中からトカゲを引きずり出して始末すればいい”
 「それから?」“あんた、一休さんか?”
 「宇宙へ飛んで行って、放射能除去装置をもらってきました」“そうだ。真空にすればいいんだ!”
 「それはどんな機械だね?」“それは今や信仰とは無関係だな。しかし真空をどうやって作る?”
 「詳しくは分かりませんが、一種のクリーナーでしょう」“掃除機と布団圧縮袋があれば簡単に作れますよ”
 「そのために、よその星まで行くとはね…」“しかし、どうやって手に入れるんだ?”
 「古き良きSF漫画ですからね」“通販ですよ、通販!”
 「そういえば、今度実写化されるとか聞きましたが」“ここにはテレビもネットもないのに、どうやって?”
 「まったく、でたらめな話ですね」“こっちでは無理ですが、あっちの世界なら何でもあるでしょう”
 「あの主役はひどいもんです」“しかし、あっちの世界に誰が行けるというんだ?”
 「あの役ができるのは…」“ハンプティ・ダンプティですよ”
 「私には考えもつかんな」“それだ!”
 「やっぱり、僕にも想像できませんね」“さっそく行かせましょう”
 教授とジョナサン(スウィフトの方)は、鏡のある部屋から出て行った。壁にかかった絵の中のトカゲは、まだ何も気付いていないようだ。

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 ジョナサンは、しばらく一人で考えていたが、怖い話なんか、全然思い付かない。あきらめて図書室を出ようと扉を開けると、ハンプティとダンプティが並んで立っていた。女装して、無言でこっちを見ている。ジョナサンは、そのまま扉を閉めて元の椅子に戻った。すると、いきなりジャックが飛び込んできた。目は血走り、手には斧を持っている。ジョナサンは思わず叫んだ。
 「もう、そのネタはいいですよ!」
 「何だ、もうバレてしまったのか…」
 ジャックは、残念そうな顔をしていた。
 「あんまりこのネタをやってると、モダン・ホラーの王様に呪われますよ」
 ジョナサンがこう言うと、ジャックはニヤリと笑った。
 「な、やっぱり怖いだろ?」

 「ところで、バイロン卿とクレアは?」
 「さっき出て行きましたよ。トカゲをもう一回見ようとか言って」
 「メアリーは?」
 「自分の部屋で何か書いてるようです」
 「そうか。君しか残っていなかったとはな…」
 「ハンプティとダンプティに女装させたのも無駄になりましたね」
 すると、ポリドリは怪訝そうな表情を浮かべた。
 「それは一体、何のことだ?」
 結局、あの二人が一番怖いというオチなのか、とジョナサンは思った。しかし、本当に怖いオチは、この後に待ち構えている。

 その夜、ジョナサンは、メアリーが書きかけている怖い話を読んでみた。

 ロバート・ウォルトンという海洋冒険家が、ロンドンからはるばるロシアまでやって来た。彼は、北極探検の夢を実現させようとしているのだ。ペテルブルクからアルハンゲルスクへ行き、そこで船を借りたり乗組員を雇ったりして準備万端整えて、北極海に向けて出航した。
 ところで、その頃、ペテルブルクの街には異様な怪物が出現していた。それは、人間の鼻のような姿をした巨大なモンスターだった。そのモンスターは馬車に乗ってアルハンゲルスクへと続く街道を物凄いスピードで走って行った。その馬車を必死で追いかけている一人の男がいた。その男の顔には鼻がなかった。
 ウォルトンの船が流氷に取り囲まれて身動きできなくなっていたとき、猛スピードの犬橇が氷原を駆け抜けていった。その犬橇に乗っていたのは例のモンスターだ。翌朝、同じような犬橇が大きな流氷に乗って流れ着いた。その犬橇に乗っていたのは、例の鼻のない男だった。救出して名前を尋ねると、その男は、コワリョフだと名乗った。

 これは怖い話じゃなくて、コワリョフの話だよな、とジョナサンは思った。この程度のネタをオチに持ってくる作者の安易な発想が怖い。
 しかし、この後ジョナサンの身に降りかかる不幸な出来事を、まだ誰も予想すらしていなかった。(ただし、作者を除く含む)


【修正】(2009/08/11)
この話の続きが予想外の展開になったので、本文の一部を以下のように修正しました。

(ただし、作者を除く)→(ただし、作者を含む)

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