打鍵数はこれでいいのか?

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打鍵数はこれでいいのか?

はじめに

 以前から気になっていたことだが、NICOLAの公式サイトにある比較アニメーションには違和感がある。親指シフト入力が優れた日本語入力方式であることを否定するつもりはないが、この比較方法には何だかアンフェアな匂いを感じるのだ。

不公平な打鍵の数えかた

NICOLA-Romaji.jpg

 「ニコラ」がいきなり片仮名で入力されているのは、どちらも同じだからまだいいとして、ローマ字入力で「つ」を「tsu」、母音の前ではない「ん」を「nn」で入力しているのは不自然だ。それに、ちょくちょく親指シフトキーが押されているのに、その分は打鍵数としてカウントされていない。「圧倒的な打鍵数の違い」を出すために意図的にやっているのではないだろうか?

 “《 「JISかな入力」を含む入力比較アニメーションはこちらへ 》”という案内があったので、もちろんそれも開いてみた。

NICOLA-JIS-Romaji.jpg

 どの方式でも同じペースで打鍵することを想定して入力にかかる時間を比較しているらしいことは一応理解できたが、このアニメーションでは速すぎて、どのように打鍵をカウントしているのかがよく分からない。

 そこで、「各入力方法の仕様比較」というページを見てみた。

NICOLA-Hikaku.jpg

 この表の「打鍵に必要なストローク数」という項目を見ると、親指シフトはすべて「1ストローク」となっているので、1文字単位で打鍵数を比較しようとしているのだと分かる。ところが、よく見てみると怪しいところがある。

 清音・濁音・半濁音・促音・句読点が1文字だというのはいいけれども、拗音というのは普通「きゃ」「きゅ」「きょ」のように2文字で表記するので、親指シフトで「1打鍵」というのは事実に反している。仮に拗音を小書きの「ゃ」「ゅ」「ょ」のことだと解釈すれば、JIS仮名で「2ストローク」というのはシフトをカウントしていることになる(句読点もJIS仮名では「2ストローク」となっているので、そう解釈するしかない)。つまり、「親指シフトはカウントしないが小指シフトはカウントする」ということだ。

 ローマ字入力についても、濁音と半濁音が「2 or 3ストローク」、拗音・促音が「1 or 2ストローク」となっているのがどういうことなのかよく分からない。一般的なローマ字入力では単独の「っ」「ゃ」「ゅ」「ょ」を2ストローク以下で打つ方法はない。拗音の場合は前の仮名、促音の場合は後の仮名と合わせて「3ストローク」となるのを2つに分けたとも考えられるが、そういう説明はどこにも書いてない。普通に2文字単位で比較した方が分かりやすいし実態にも合っているだろう。

 数字だけは「かなモードのままで入力可能」などと打鍵数とは直接関係ないことが書いてあるのも理解に苦しむ。(上の方には親指シフトキーボードの「かな/英字配列」が「3段」で「かな/英字キー数」が「30キー」と書いてある。これではどうやって数字を打つのか分からない)

 「打鍵数と入力速度比較」や「指の使用率比較」にも突っ込みどころがいくつかあるけれども割愛する。

 要するに、どんな基準で比較しているのかが不明瞭で、もしかすると親指シフトに有利な結果を出すために恣意的な方法で比較しているのではないかと疑う余地ができてしまっているのだ。

公平な打鍵の数えかた

 どんな方式に対しても公平な数えかたをするには、キー操作によって発生するキーコードを機械的にカウントするのがいいだろう。そのキーコードがどのように解釈されて、どの文字が入力されるのかなどという各方式の内部事情から独立した中立的な基準として使えるはずだ。

 実際のキーコードをそのまま書くと煩雑になるので、単純化して、キーが押されたことを示す“(”と離されたことを示す“)”の内側にキーの識別子を入れることにする。つまり、“(x)”は、xが押されてxが離された(単独打鍵)を示すわけだ。

  1. 逐次打鍵
    • (x)(x) : x押 ・ x離 ・ x押 ・ x離
    • (x)(y) : x押 ・ x離 ・ y押 ・ y離
  2. シフト打鍵
    • (x(y)) : x押 ・ y押 ・ y離 ・ x離
    • ((x)y) : x押 ・ y押 ・ x離 ・ y離
  3. 同時打鍵
    • ((xy)) : xy押 ・ xy離 (xyは順不同)

 逐次打鍵は説明不要だろう。しかし、逐次打鍵とシフト打鍵の区別は曖昧で、各方式の解釈に依存することになる。複数のキーを続けて打つ場合は隣接する打鍵が重なり合ってシフト打鍵のタイミングになる場合がある。通常のJIS仮名入力やローマ字入力では、先に打ったキーがシフトキーならシフト打鍵、文字キーなら逐次打鍵として処理される。

 同時打鍵は、実際にはシフト打鍵のどちらかのパターンに含まれることになる。xとyの打鍵順を問わないことを示すために別の表記にした。

 通常使われる複数のキーの組み合わせは、この中のどれかにあてはまるはずだ。CtrlとShiftを押したまま複数のキーを逐次打鍵する場合には“((CS(x)(y)(z)))”などとすればよい。

 この記法を使えば、キーが押されたことを示す“(”の個数を数えれば、どんな入力方式がどのように解釈しようとも、必ず打ったキーの数が分かることになる。

 このように、動かしがたい打鍵情報に基いて、単純にキーを押した回数を打鍵数だと考えるのが公平で妥当な方法だろうと思う。現にそのキーを押したという事実がある(その打鍵がなければ別の字が入力されてしまう)のだから、そのキーを無視してはならないはずである。

おわりに

 せっかくなので、上に書いた記法と数えかたを使って「日本語を大切に。ニコラ」という短文を各方式で入力した場合の打鍵列を比較してみる。

【親指シフト】(22打鍵)
((右ち))(ほ)(ん)((右こ))((左う))(た)(い)
(せ)(つ)((右ち))(。)(変)((右ち))(こ)(ら)
(片)(確)

【JIS仮名】(20打鍵)
(に)(ほ)(ん)(こ)(゛)(L(わ))(た)(い)(せ)
(つ)(に)(L(る))(変)(に)(こ)(ら)(片)(確)

【ローマ字】(28打鍵)
(n)(i)(h)(o)(n)(g)(o)(w)(o)(t)
(a)(i)(s)(e)(t)(u)(n)(i)(.)(変)
(n)(i)(k)(o)(r)(a)(片)(確)

〔凡例〕
 左:左親指シフトキー
 右:右親指シフトキー
 L:左英字シフトキー
 R:右英字シフトキー
 変:変換キー
 確:確定キー
 片:片仮名変換キー
 その他:ノーマル打鍵時の仮名、記号、および(ローマ字変換前の)英数記号

 驚くべきことに、JIS仮名の方が親指シフトより2打鍵も少なくなってしまった。この例文では、たまたま同時打鍵の「に」が3回も出てきたせいで打鍵数が増えてしまったのだ。このように、ある方式にとっては不利なテキストをわざと使うことは簡単にできるので、あまり打鍵数にこだわらない方がよいのではないかと思う次第である。

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このページは、m(as)mが2015年7月11日 06:20に書いたブログ記事です。

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