1997年2月アーカイブ

(1997-02-19)

失敗作の骨を拾う

 覚えやすくするために意味に合わせて位置を決めるという「G-Code」の漢字配列の方針は失敗でした。そういえば、その前に考えていた「三本指打法」も失敗です。今になって考えると、どうやらこの二つの失敗には、共通点があるようです。「三本指打法」は打鍵数を減らすことにこだわっていたし、「G-Code」の漢字配列は覚えやすくすることに力点を置き過ぎていました。要するにバランスが悪かったのです。

 しかし、基本的にはどちらの考え方も間違ってはいないように思えます。「打鍵数を減らす」ことと「覚えやすくする」ことは両立できるはずです。

「一」から始める

 ところで、「一」で始まる熟語や連語には、一体どれくらいの種類があるでしょうか。「pubdic」に含まれる14,528語の基本辞書を調べてみたところ、「一」で始まる語は114個ありました。

 実は「一」で始まる語は二位で、最も多かったのは「不」で始まる120語です。以下、「大」(106)、「自」(85)、「無」(81)、「本」(75)、「小/新」(64)、「同」(62)、「出」(61)、「公/高」(60)、「実/人」(56)、「気/手/上/全」(55)、「水」(54)、「外」(53)、「下/見」(52)、「日」(48)、「生/中」(47)、「国/発」(46)、「原/主」(45)、「学/先/前/地/内」(43)、「後」(42)、「年」(41)、…と続きます。

 これが何を意味するのかというと、最も種類の多い「不」で始まる語を入力する場合でさえ、一文字目を入力した瞬間に、その次に入力されるであろう漢字が、百種類程度にまで絞り込まれるということです。その漢字を全部、40鍵の仮想鍵盤上に並べると、たったの3面に収まるのです。しかも、2面以上になるのは上に挙げた数十個の漢字の場合だけで、その他の漢字が一文字目だったならば、仮想鍵盤は1面だけで済むのです。これは使えるのではないでしょうか。

「風」のおいしいところ

 仮想鍵盤といえば、冨樫雅文さんが開発した「風」の仮想鍵盤は画期的です。どの読み方で変換しても、同じ漢字は必ず仮想鍵盤上の同じ面の同じ位置に現われるため、使っているうちに自然に打ち方を覚えてしまうというわけです。

 「風」のおいしいところは、ここにあります。漢字を入力するための打鍵が一定している点は他の方式と同じですが、読み方さえ知っていれば予め練習しなくても入力できるのは、他の方式にはない大きな魅力です。おそらく、これを越える方式を作るのは不可能でしょう。

「風」にもある弱点

 しかし、他の直接入力と同様、「風」にも大きな弱点があります。それは、漢字を一個ずつ入力する方式であるため、熟語や連語の入力に余分な手間がかかるということです。

 ちょっと意地悪な例ですが「不」で始まる語を使って説明します。例えば、「不可思議」という語を入力する際には、一字ずつに分けて「ふ」「か」「し」「ぎ」と読みを打ち、そのつど変換・選択しなくてはなりません。漢字を入力するための一連の動作を指が覚えてしまえば別にどうということもないのでしょうが、初心者は一字ずつ仮想鍵盤の中から捜しながら打つことになります。

 おそらく、「ふ」「か」「し」「ぎ」のそれぞれについて、十個以上の候補の中から目的の漢字を捜し出さなくてはならないでしょう。最初の「ふ」「か」までは(熟語変換でも「不可/付加/負荷/孵化/府下」などの同音語の中から選ばなくてはならないわけだし)我慢できますが、「不可」を入力した後に「し」と「ぎ」が来れば、常識的に「思」と「議」に決まっているじゃないか、という気分になります。

 ここで、かな漢字変換を使えば「ふかしぎ」を「不可思議」に一発で変換できるぞと思った人は、直接入力がひとつひとつの漢字を確実に入力することを目標にしていることを思い出して下さい。例えば、入力したいのが「意思」なのか「意志」なのかを、ソフトまかせにせず自分で決めたいという感覚が大切です。

では、どうすればいいのか

 「不可」を入力した段階で、その次の漢字を読みから変換するか、それとも熟語として成り立ちそうな漢字の候補を一覧するかを入力者の意志で決定できればいいのです。ここまで来れば、後に続きそうな漢字は「思/視/解/能」ぐらいでしょう。(「不」を打った段階でも候補に挙がるのは百字を少し上回る程度なのです。「か」の同音異字とどちらが多いでしょうか?)

 しかも、「この後に続く漢字の候補を表示しろ」という指示(以下、このことを「熟語補完」と呼ぶことにします)は、「入力した読みに該当する漢字の候補を表示しろ」という指示(読みを使った単漢字変換)よりも簡単です。なにしろ、読みを入力する必要がないのですから。

 その「熟語補完」を指示する方法ですが、仮想鍵盤の漢字を選ぶ時にシフトしながら打った場合に(その漢字が入力された後、そのまま)「熟語補完」が実行される、ということにします。これならば、シフト操作だけの手間で済みます。

「熟語補完」が使える場面

 「熟語補完」は、仮想鍵盤から漢字を選ぶ場面以外にも応用できます。たとえば漢字を直接入力する場面でも、2ストローク目をシフトすると「熟語補完」が働いてくれれば便利でしょう。こうすると、1文字目さえ打てれば、2文字目以降は仮想鍵盤を見ながら、シフトしたまま該当するキーを1個ずつ打っていくだけで、大抵は用が足りることになります。よく使う熟語であれば、2文字を3打鍵、3文字を4打鍵、n文字をn+1打鍵で入力できます。

第2打鍵の補完

 読みを打って変換しても、前に打った漢字から補完しても、同じ漢字が表示される位置がいつも一定であれば、自然に第1打鍵を覚えることができるでしょう。

 そして、第1打鍵を覚えてしまえば、読みやその前に打った漢字との関連がなくても、簡単に漢字を絞り込むことができます。その第1打鍵を手がかりにすればいいのです。

 第1打鍵をシフトした場合に(熟語の補完と同じように)第2打鍵の位置をガイドする仮想鍵盤が表示されるようにします。候補は第1打鍵が共通する40個の漢字です。読みや補完を使った場合は何面かに渡ることがありますが、この場合は候補が第2打鍵の位置に表示されるので、2ストロークの漢字は必ず1面に収まることになり、入力の手間がさらに軽くなります。

 ただし、第1打鍵と第2打鍵の位置が混乱するおそれがあるので、仮想鍵盤全体の色を変えるなり未習得の漢字を目立たなくするなりの工夫が必要でしょう。

いもづる式習得方法

 このような形で、「読みから漢字」、「入力した漢字から次の漢字」、「第1打鍵から第2打鍵」と、状況に応じた最短のルートで目的の漢字にたどり着けるような仕掛けを作ることにします。これが完成して使えるようになれば、漢字を入力するための手がかりがいもづる式に増えていくことでしょう。

 「仮想鍵盤に表示された漢字を選ぶ」というのは、2ストローク入力を習得するまでの1つのステップにすぎません。この段階でも実際に入力の役に立ちますが、これは「入力方式」ではなく「習得方法」であると考えています。私の目標はあくまでも2ストロークの漢字直接「入力方式」を作って、それを習得することにあります。この入力方式を習得すれば、最終的には仮想鍵盤を呼び出すための手順を踏む必要はなくなるでしょう。これで(構想だけは)あの画期的な「風」をほんの少しぐらいは越えることができたでしょうか。

「G-Code」の今後

 というようなわけで、「いもづる式」は既存の「T-Code」や「TUT-Code」、あるいは「チョイ入力」などといった2ストローク系の直接入力のどれにでも応用できる習得方法です(ただし、TUT-Codeやチョイ入力の場合は、3ストローク漢字をどう扱うかという問題があるので、2ストロークに統一されているT-CodeかG-Codeを使うことをお勧めします)。

 当然、これから作る「G-Code」の漢字配列は、「いもづる式」に合わせてチューニングするつもりです。例えば、ある漢字の後に続く漢字候補がなるべく同じキーに重ならないように調整する必要があるでしょう。今までのような適当な割り当て方ではないので(作るのに時間はかかるかもしれませんが)、以前よりバランスのとれた良い配列ができると思います。

 これまでは漢字の配列を少し作っては実際に打って試していましたが、これでは習得するための「いもづる式」を試してみることができないので、まず最初に「いもづる式」のソフトを作らなくてはなりません(開発方針は、相変わらず「どろなわ式」ですね)。今後は、組み立てたり壊したりを繰り返すことになるので、納得のいくものができるまで公表は控えさせていただきます。今まで通り、あまり期待せずに待っていて下さい。


(付記)

 このページは97年2月19日に完結したものです。


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