2013年12月アーカイブ

 NECのM式キーボード(詳しくは「M式の世界」を御覧ください)について書きます。

 20年ほど前に、「楽々キーボード」というNECのPC 9801シリーズ専用のキーボード(Windows3.1用のIME付き)が発売され、面白そうだったので購入しました。しばらく使ってみたものの反射的に打てるところまで行かないまま手放してしまいました。添付ビデオだけ残っていたので、この機会にアップしておきます。

 これを見ると分かるように日本語(特に熟語の音韻)を論理的に分類・整理してローマ字入力を最適化した入力方法なのですが、キー配列だけでなくキーボードの物理的なレイアウトから仮名漢字変換ソフトの仕掛けまで総動員しているところに凄みを感じます。

 こんなのを見せられると僕のような漢直マニアが考えることはただ一つです。これに漢直を乗せたらどうなるだろうか?

 子音シフトと母音シフトはクロスシフトでしか使わないので、同側シフトが空いています。ここに漢直を入れれば何とかなりそうです。ただ、実際に入力できるソフトを作るのは僕には無理なので、M式の練習をしながら漢直の打鍵は頭の中でイメージしていただけなのですが。

 僕にしてはかなり練習した方だったと思いますが、文字キーの左右交互打鍵とクロスシフトの組み合わせにどうしても体がついて行けず、結局、挫折してしまいました。おそらく感覚よりも先に頭で考えてしまったせいだろうと思います。

 その後、G-codeという漢直を自作しましたが、仮名を中段・上段の10個のキーに割り当てたのは、完全にM式の影響です。もしも僕がM式に挫折していなければ、G-codeは同側シフトの漢直になっていたかも知れません。

 まず、僕が知っている主な漢直を自分に都合の良い方法でざっくり分類します。

 T-codeTUT-codeG-code超絶技巧入力
最上段のキーを使う××
3ストロークの漢字がある×
平仮名と片仮名を打ち分ける××
仮名の打ち方に規則性がある×

 今回のテーマに関係ありそうなのは、上の「最上段のキーを使う」だけで、下の3つはあまり関係ありません(カタログ等でよく見る我田引水をやってみました)。

 僕はもともとTUT-codeを使っていたのですが、T-codeを試したときに最上段の打ちにくさに気付きました。それまでは数字はテンキーで打っていたので気にならなかっただと思います。

 キーボードをよく見ると、中段と上段はキー3分の1個分ほど横にずれ、最上段と上段、中段と下段はそれぞれキー2分の1個分ほど横にずれています。つまり、最上段と中段では0.8個分、最上段と下段では1.3個分ほど横にずれていることになります。

 これが打ちにくさの原因でした。最上段を使うキーの組み合わせにはあまり頻度の高くない文字が割り当てられているとはいえ、キー1個分以上のずれというのは無視できません。

 そこでキネシスのキーボードです。まだ国内に代理店がなかった頃でしたが、T-coderの人たちがグループで購入するという話があって、それに便乗させてもらいました。使ってみると、最上段が近くなって普通に打てるようになりました。

 これで最上段も守備範囲内にあるのだと実感できました。後にG-codeを作るときに最上段を使うようにしたのもこのキーボードのおかげです。

 ここまでは理想的なキーボードなのですが、欠点もあります。それは他のキーボードが以前にもまして打ちにくくなるということです。たぶん、凹面キーボードの裏返しで凸面キーボードであるかのように錯覚してしまうのでしょう。このキーボードだけを使っていられればいいのですが、現実はそんなに甘くありません。持ち運ぶには大きいし、行く先々に常備しておくわけにもいきません。

 そんなわけで、今では、ほどよくエルゴノミックでコンパクトなTrulyのキーボードを使っています。この程度だったら他のキーボードとの落差があまりないので、どちらを使ってもあまりストレスを感じません。

 前回の打鍵表との関連で、今回は「増田式」というタイピング練習法について書きます。この練習法はローマ字入力や仮名入力などの一般向けの書籍やソフトとして市販されていたので、タイピングに興味のある方なら一度くらいは目にしたことがあるかも知れません。この練習法は、元はといえば漢直のミスタイプを減らすための練習法として考え出されたものなのです。

 増田式の学習原理について詳しく書くと長くなってしまうので、ここでは、その結果に共通するパターンだけを簡単にまとめます。

  • 2個のキーの組み合わせを基本としている
  • 打ちやすさ(指の運動能力)の順でキーの組み合わせを変えながらタイプする
  • 変化させるのは先頭のキーで、末尾のキーは固定する
  • 先頭のキーが一巡したら、末尾のキー変えて繰り返す

 もちろん「正しい姿勢で打つ」とか「キーを見ない」などという、タイプ時の一般的な注意事項が前提になっています。

 これを漢直の練習に逆輸入すると、こうなります。

  • 打鍵表の(第2打鍵が共通の)小ブロック単位で練習する
  • 第2打鍵を固定して第1打鍵を変えながら打つ

 具体的には、TUT-codeなら「LR」、T-codeやG-codeなら「RL」を大きなブロックとして、その中の小ブロックを以下の順に練習するのがよいでしょう。

L(左手) R(右手)
2019161718最上段1817161920
10 9 6 7 8 上段 8 7 6 910
5 4 1 2 3 中段 3 2 1 4 5
1514111213 下段 1312111415

 要するに、簡単な規則通りにキーを打って、出てきた文字を指に覚えてもらいましょうということです。「コロンブスの卵」のように一度知ってしまえば「何だ、そんなことか」というような話ですが、従来の練習法では文字配列や漢字配列のキーの組み合わせを飛び飛びに覚えようとしていたから大変だったのです。

 この練習法のいいところは、特定の練習ソフトを起動しなくても(何だったらパソコンの電源を切ったままでも)、キーボードさえあれば(最悪でも打鍵表が一枚ありさえすれば)、短時間で簡単にトレーニングできるということです。

 そんなわけで、僕は電車の中でたまに「エアー漢直」をやっているわけです。

 TUT-codeの打鍵表(図1)を自作して持ち歩いていた頃の話です。T-codeの打鍵表を初めて見たときには戸惑いました。1打目と2打目の関係が、自作打鍵表とは逆だったのです。

(図1)TUT-codeの自作打鍵表(第1打が共通するものをグループ化)

【第1打:E】
┌─┬─┏━┓─┬─┐┌─┬─┬─┬─┬─┐
│両│待┃結┃信│ ││子│く│き│者│議│
├─┼─┗━┛─┼─┤├─┼─┼─┼─┼─┤
│残│団│数│公│ ││け│こ│か│ │合│
├─┼─┼─┼─┼─┤├─┼─┼─┼─┼─┤
│母│諸│免│ │ ││治│談│開│指│死│
└─┴─┴─┴─┴─┘└─┴─┴─┴─┴─┘
【第1打:D】
┌─┬─┬─┬─┬─┐┌─┬─┬─┬─┬─┐
│早│無│各│平│ ││会│つ│ち│人│定│
├─┼─┏━┓─┼─┤├─┼─┼─┼─┼─┤
│勤│他┃全┃保│ ││て│と│た│ │長│
├─┼─┗━┛─┼─┤├─┼─┼─┼─┼─┤
│街│堂│独│ │ ││話│作│売│打│考│
└─┴─┴─┴─┴─┘└─┴─┴─┴─┴─┘
【第1打:C】
┌─┬─┬─┬─┬─┐┌─┬─┬─┬─┬─┐
│静│何│補│施│ ││私│調│対│演│応│
├─┼─┼─┼─┼─┤├─┼─┼─┼─┼─┤
│児│貸│改│防│ ││戦│当│委│党│義│
├─┼─┏━┓─┼─┤├─┼─┼─┼─┼─┤
│渡│登┃守┃ │ ││愛│流│説│席│提│
└─┴─┗━┛─┴─┘└─┴─┴─┴─┴─┘

 平仮名の打ち方がローマ字みたいに規則的だったせいか、それまで何の疑問もなくこの表を使っていました。これをT-codeの打鍵表のやり方で作り直すと(図2)のようになります。

(図2)TUT-codeの自作打鍵表・改(第2打が共通するものをグループ化)

【第2打:E】
┌─┬─┏━┓─┬─┐┌─┬─┬─┬─┬─┐
│青│活┃結┃優│最││金│地│万│建│鉄│
├─┼─┗━┛─┼─┤├─┼─┼─┼─┼─┤
│天│今│各│関│運││高│国│三│八│北│
├─┼─┼─┼─┼─┤├─┼─┼─┼─┼─┤
│類│非│補│軽│率││崎│宿│可│室│渋│
└─┴─┴─┴─┴─┘└─┴─┴─┴─┴─┘
【第2打:D】
┌─┬─┬─┬─┬─┐┌─┬─┬─┬─┬─┐
│黒│資│数│品│座││学│本│大│六│株│
├─┼─┏━┓─┼─┤├─┼─┼─┼─┼─┤
│約│有┃全┃自│住││東│二│日│時│不│
├─┼─┗━┛─┼─┤├─┼─┼─┼─┼─┤
│評│庭│改│役│花││急│海│市│支│森│
└─┴─┴─┴─┴─┘└─┴─┴─┴─┴─┘
【第2打:C】
┌─┬─┬─┬─┬─┐┌─┬─┬─┬─┬─┐
│曇│注│免│茶│昨││科│屋│映│阪│昇│
├─┼─┼─┼─┼─┤├─┼─┼─┼─┼─┤
│賃│晴│独│観│変││南│谷│道│共│江│
├─┼─┏━┓─┼─┤├─┼─┼─┼─┼─┤
│酒│御┃守┃程│史││草│条│栄│庫│波│
└─┴─┗━┛─┴─┘└─┴─┴─┴─┴─┘

 どっちでも同じように見えますが、増田忠さんに尋ねたところ(図2)の方がいいという返事でした。その理由は、2打鍵目の位置に漢字を表示すると、その位置のキーを最初に打ってしまいやすくなるからだということです。確かに打順が逆になるミスがときどきあったので、それ以来(図2)の方を使うようにしています。

 超多段シフトでは最終打鍵の位置に漢字が表示されますが、2ストローク系の打鍵表は第1打鍵の位置なので、最初はちょっと戸惑うかもしれません。でも、慣れてくるとこの方が自然なのだと実感できると思います。

 ところで、打鍵表をぱっと見たときに左手と右手の区別が分かりづらいのが悩みの種です。そこで、人差指で打つ2列のキーの間に補助線を入れてみました。(図3)は、TUT-codeの打鍵表に補助線を入れて(図2)と同じ部分に着色したものです。

(図3)TUT-codeの打鍵表・改(一部)

LL

  * * * * |*   * * * * |*   * * * * |*   * * * * |*  ∥ * * * * |*   
  * * * * |*   * * * * |*   * * * * |*   * * * * |*  ∥ * * * * |*   
  * * * * |*   * * * * |*   * * * * |*   * * * * |*  ∥ * * * * |*   
  * * * * |*   * * * * |*   * * * * |*   * * * * |*  ∥ * * * * |*   

  * * * * |*   * * * * |*   * * * * |*   * * * * |*  ∥ * * * * |*   
  並態両乗|専  伝健待白|港  青活結優|最  整少信報|太 ∥ * * * * |*   
  悪病早糸|試  根仕無案|額  天今各関|運  寮広平音|計 ∥ * * * * |*   
  伸羽静財|始  裏短何積|迎  類非補軽|率  復遊施帰|便 ∥ * * * * |*   

  * * * * |*   * * * * |*   * * * * |*   * * * * |*  ∥ * * * * |*   
  念右残赤|形  税質団参|基  黒資数品|座  警託公細|費 ∥ * * * * |*   
  深管勤増|習  毎福他米|利  約有全自|住  直送保世|現 ∥ * * * * |*   
  奏示児志|未  医単貸追|挙  評庭改役|花  討具防素|介 ∥ * * * * |*   

  * * * * |*   * * * * |*   * * * * |*   * * * * |*  ∥ * * * * |*   
  返競母熱|退  祭訪諸修|版  曇注免茶|昨  * * * * |*  ∥ * * * * |*   
  星許街鈴|帝  族従堂兵|監  賃晴独観|変  * * * * |*  ∥ * * * * |*   
  雑推渡効|宇  刊徳登冷|響  酒御守程|史  * * * * |*  ∥ * * * * |*   

RL

  * |* * * *   * |* * * *   * |* * * *   * |* * * *  ∥ * |* * * *   
  * |* * * *   * |* * * *   * |* * * *   * |* * * *  ∥ * |* * * *   
  * |* * * *   * |* * * *   * |* * * *   * |* * * *  ∥ * |* * * *   
  * |* * * *   * |* * * *   * |* * * *   * |* * * *  ∥ * |* * * *   

  * |* * * *   * |* * * *   * |* * * *   * |* * * *  ∥ * |* * * *   
  興|口洋船久  水|産務駅頭  金|地万建鉄  町|七京理営 ∥ 第|和区西富  
  松|安都与清  動|川給木佐  高|国三八北  山|電五小原 ∥ 名|部業問近  
  河|越統秀油  元|蔵県築角  崎|宿可室渋  半|岡石休豊 ∥ 林|門格吉齢  

  * |* * * *   * |* * * *   * |* * * *   * |* * * *  ∥ * |* * * *   
  遇|井島士坪  機|野前百接  学|本大六株  工|事中九午 ∥ 内|千分立外  
  藤|付経正賞  代|月田後商  東|二日時不  新|年一同歩 ∥ 円|四十面教  
  研|葉倉菱浴  丸|卒朝農億  急|海市支森  光|郎文沢馬 ∥ 次|宅村古袋  

  * |* * * *   * |* * * *   * |* * * *   * |* * * *  ∥ * |* * * *   
  企|服鋼停州  伊|週階労板  科|屋映阪昇  央|池制証浅 ∥ 昭|宮職雄春  
  精|友収寺履  浜|戸料火坂  南|谷道共江  横|台橋武宝 ∥ 軍|土神造芸  
  振|鉱敷融浦  津|塚尾竹泉  草|条栄庫波  芝|幸玉曜環 ∥ 岩|城永秋陸  

 打鍵表から目的の漢字を見つけたときに、まず分かるのは小さなブロックの中の漢字の位置です。そのブロックが全体の中のどの位置にあるのかを把握するまでには少し時間がかかるでしょう。だから「木を見て森を見る」という順序になっているのだと考えれば、納得できるんじゃないかと思います。

 今ではこの形式の打鍵表を持ち歩いて、ひまな時には自作漢直のイメージトレーニングをしています。電車の中で漢字がぎっしり並んだ紙切れを指で叩いている不審人物を見かけたら、ぜひ「そこで漢直ですか?」と声をかけてみてください。

 「漢直はこわくない。(漢直 Advent Calendar 2013 3日目)」を読んだ方には仮名漢と漢直の併用は既に常識でしょうから、今回もいきなり本題に入ります。

 この方法の欠点は、漢字の打ち方を調べるのに少々手間がかかることです。

  1. 仮名漢字変換で入力する
  2. 漢字の打ち方を調べる

 忙しい時はもちろん、暇な時でも、この「2」が面倒です(この後さらに「3. 練習する」が続くので、僕のような不精者はなかなか上達しません)。

 そこで「超多段シフト」ですよ。

 その前に「超」がつかない「多段シフト」というものを簡単に説明すると、こんな感じの巨大キーボード(例:モリサワの電算写植キーボード)を使う入力方式です。リンク先のキーボードの場合は左下のシフトキー(「1」~「9」の数字)と右側の文字キー(9個の文字がキートップに書いてある)の組み合わせで直接入力する仕掛けになっていて、各文字キーを9通りにシフトして打ち分けます。

 この多段シフトキーボードと同じようなことを通常のキーボードでやってしまうのが超多段シフトの「風」なのです。「風のくに」にはこう書かれています。

超多段シフト方式とは6349文字を2976段シフトで配列した仮想的な漢字キーボードのことである。

 2976段シフト! とても覚えられる気がしません。ところが実は漢字の読み(これが2976種類ある)をシフトキーとして使うので、読み方を知っていれば覚えるコストはゼロです。では、文字キーの方はどうなってるのかというと、仮想鍵盤に表示されます。(詳しくは「風のくに」を御覧ください)

 つまり、読みを入れてスペースを何回か叩いて仮想鍵盤に目的の漢字が入っていたら、その位置のキーを打てばいいのです。たぶんこのへんで「結局、単漢字変換じゃないの?」と思う方がいるかもしれません。確かに操作手順だけを見て形式的に分類すると単漢字変換になるでしょう。

 しかし、ただの単漢字変換とは次元が違います。普通の単漢字変換では文字(点)単位で次候補を表示しますが、超多段シフトはキーボード(面)単位で次候補を表示するのです。文字の選択=確定には表示位置の文字キーを打つだけなので、カーソルキーやテンキーを使う必要がなく運指に無駄がありません。

 そして、ここからが凄いところなのですが、同じ漢字を入力するときは、どんな読みでシフトしても必ず「同じ面の同じ位置」にその漢字が現れるのです。読みと面数と位置を把握するだけなので、2ストローク系漢直の打ち方を覚えるよりも簡単です。その代わり打鍵数はやや多めになりますが、どんな漢字でも必ず打てるというのは大きなメリットでしょう。

 実際に、ほとんど仮想鍵盤を見ずに打っている人を見ると、これはまぎれもなく漢直だということが実感できます。詳しい話を聞くと、例えば「入力」を入力するときに、普通なら「にゅう→入・りょく→力」と打つところを、簡単なシフト(読み)を使って「い→入・りき→力」などと打ったりするということでした(こういうことなら僕のような物ぐさ者にもできそうな気がしてきます)。

 2ストローク系はちょっと無理だなと思う方には、一度「風」を試してみることをお勧めします。

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