一概には言えないけれど
一口に漢直といっても、いろんなタイプがあるので一概には言えませんが、一般的な入力方法を使う場合とは少し異なる、漢直に特有の条件があるように思えるので、そのことについて考えてみます。
漢直に特有の条件
まず、打ち方を知らなければキートップを見ても入力できない(*1)という点が、キートップを見ればとりあえず入力できる一般的な入力方法とは異なります。
つまり、漢直の場合は、とにかく文字の打ち方を“覚える”ことが必要なわけですが、この“覚える”というのは頭で暗記するのとは少し違います。頭ではなく体で“覚える”のだということです。
体で“覚える”というのも記憶には違いないのですが、それは、体の中にある自宅周辺の略図のような記憶(*2)だと思うのです。自宅周辺の地図を正確に描くことはできなくても「この大通りのラーメン屋の角を右折して、道なりに進んでコンビニの角細い道を左に入る」というような手書きの略図なら何も見なくても簡単に描けます。自宅周辺を上空から見下ろしたことはなくても、自分で何度も歩いた経験から、そういう略図をイメージできるような記憶があるわけです。きっちり90度でない角が直角になっていたり、少し曲がっている道がまっすぐであっても、それで問題ないのです。
これをキーボードに当てはめると、実際のキーボードのキーが横方向に微妙にずれてジグザグになっていても、記憶するのはリアルなキーボードの形でなく、単純な格子状の略図だけで充分だということになります。実際のキーのずれは、使っているうちに指が無意識に補正するので、ずれているということは意識しなくなります。
ここまでは、漢直以外の入力方法にも共通することだろうと思います。ただ、一般の入力方法の場合は、キーボード自体か原寸大の地図になっているので、普通はわさわさ略図を作ったりしないという違いはあります。
打鍵表という略図
漢直の場合は、キーボードを見ても文字の打ち方が分からないので、略図の現物が必要になります。それが、ストローク表とか打鍵表などと呼ばれるものです。「これを打って、これを打つ」という情報が、その結果入力される文字自体の位置によってコンパクトに(平面上に折りたたまれた形式で)表現されています。
おそらく、初めて見た人は「こんなものは、とても覚えられない」と思うでしょうが、打鍵表は“道順を確かめるための略図”なので、これ自体を丸暗記する必要はまったくありません。詳しくは、 2年前の記事 と 3日前の記事 を御覧ください。
そこで、格子配列ですよ。
エルゴノミック・キーボードの中には、物理的なキー配列が格子状になっているキーボードがあります。打鍵表と同じように、キーが格子状に並んでいるキーボードであれば、イメージと現物のずれを補正する必要はほとんどなくなります。だから、漢直には合うだろうと思っていたのです。
そんなわけで、昨日のアンケートの選択肢には格子配列のキーボードだけを入れてみました。あまり大きな差がなくてホッとしているところです。
漢直だけでなくローマ字入力やJIS仮名入力や親指シフトにも合うので、興味のある方は機会があったら一度試してみてください。
この記事は漢直 Advent Calendar 2015のために書いたものです。
(*1) キートップを見ても入力できない 連想式の漢直なら、ある程度までは連想で打ち方が分かるようになっていますが、全部分かるわけではありません。完全な無連想式であれば、どう打てばいいのか全く見当もつきません。
(*2) 体の中にある自宅周辺の略図のような記憶 酔っ払って帰宅した経験のある方なら、足が道順を知っていることに異論はないだろうと思います。
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