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ローマ字入力から漢直に至る道

 これまで紹介してきた“漢直をじわじわ混ぜる”方法は、入力された仮名を漢直のストロークとして読み換えることで成立しましたが、この手はローマ字入力には通用しません。しかし、御安心ください。ローマ字入力に通ずる別のルートがあるのです。

23_fig1.gif

漢直の入力を親指でシフトする

 たったこれだけで、漢直が丸ごと使えるようになります。もちろん、ローマ字入力は今まで通りに使えます(*1)

 そのためには、親指の守備範囲内にある{無変換}{空白}{変換}{ひらがな}のうち少なくとも1個(できれば2個)が漢直用の同時打鍵として使える必要があります。また、「DvorakJ」と「Google日本語入力」が使えることも必要です。

 「DvorakJ」と「Google日本語入力」の連携については、先週の記事に書いたことの繰り返しになりますが、簡単にまとめると以下のような流れになります。

  • DvorakJ
    • 漢直用にカスタマイズした設定で、キー入力を加工して送出する
      • 非シフト打鍵はそのまま送る
      • シフト打鍵の場合は先頭に特殊な記号を付けて送る(*2)
        (漢直用には、通常のシフトや親指シフトとは異なるキーと記号を割り当てておく)
  • Google日本語入力
    • 漢直用にカスタマイズしたローマ字テーブルで、受け取った英数記号を仮名や漢字などにして表示する
      • 特殊な記号が入っていても気にせずアルファベットとして認識する
      • ローマ字変換の結果が漢字であっても仮名と同様に表示する
        変換前の文字列の中に漢字があっても特に気にしない(*3)

 

ダウンロード

種類名称入手先備考
日本語入力システムGoogle日本語入力 http://www.google.co.jp/intl/ja/ime/ Windows版・Mac版・Android版がある
(Windows8以上・Mac版・Android版での動作は未確認)
ローマ字テーブル G-Code decode-qwerty-x-gcode.zip (予定) Qwerty配列用G-Code(準備中)
decode-dvorak-x-gcode.zip (予定) Dvorak配列用G-Code(準備中)
キー配列変更ソフト DvorakJ http://blechmusik.xii.jp/dvorakj/ DvorakJ本体
設定ファイル encode-qwerty-x-x-m-h.zip (予定) Qwerty配列用(準備中)
encode-dvorak-x-x-m-h.zip (予定) Dvorak配列用(準備中)
打鍵図表示ソフト 漢索窓 https://code.google.com/p/tcode/downloads/list 漢直Winに同梱されている
(2015年12月現在の最新版は“kw128.zip”)

※ローマ字テーブルには漢直の設定だけが入っています。(現在のローマ字テーブルの内容を取り込んでから使うようになっています)

インストールと設定

 必要に応じて、インストールと設定を行ってください。

  • ローマ字テーブル
    1. 適当な場所に解凍する
    2. 使いたいローマ字テーブルを選んで、テキストエディタで開いておく
      (後で、このファイルに現在のローマ字テーブルの内容を取り込みます)
  • Google日本語入力
    1. 添付されたドキュメントにしたがってインストールする
    2. ツール→プロパティで、以下のように設定する
      • 一般(基本設定)
        ローマ字入力・かな入力:ローマ字入力
        句読点:、。
        記号:「」・
      • 一般(キー設定)
        ローマ字テーブル:「編集...」で、以下の作業を行う
        1. 「編集」→「エクスポート...」で、現在使っているローマ字テーブルをエクスポートする
        2. エクスポートしたファイルをテキストエディタで開き、すべてを選択してコピーする
        3. さっき開いておいたファイルにペーストして、保存して終了する
          (エクスポートした方のファイルも閉じる)
        4. 「編集」→「インポート...」で、編集した方のローマ字テーブルをインポートする
      • 入力補助
        自動英数変換を有効にする:オフ
        句読点変換を有効にする:オフ
    3. Google日本語入力プロパティを閉じる
  • DvorakJ用設定ファイル
    適当な場所に解凍する
  • DvorakJ
    1. 適当なフォルダに解凍して、インストールする
    2. DvorakJを起動する
    3. DvorakJの設定画面を開き、以下の設定を行う
      • メニューバーの「ファイル(F)」→「DvorakJ/user/フォルダを開く(U)」で、フォルダを開く
        (必要ならサブフォルダを作る)
      • 解凍した設定ファイルをDvorakJ/user/フォルダ(配下)にコピーする
      • 右枠の「日本語入力用配列」で、コピーした設定ファイルの中から適当なもの選ぶ
        (※親指キーの組み合わせで何種類か作る予定です)
      • 右枠の「日本語入力の設定」で
        「日本語入力用配列を日本語入力時にのみ使用する(O)」を選択し、
        「かな入力用の設定で日本語入力用配列を使用する(K)」をオフにする
    4. DvorakJの設定画面を閉じる
    (※漢直Winを使って漢直する場合は、DvorakJをOFFにしてください)
  • 漢直Win
    1. 適当なフォルダに解凍する
    2. “kanchoku.ini”を適宜変更して保存する
      (※ここで選択した漢直のテーブルは、漢索窓でも使われます。また、[kansaku]セクションで漢索窓の設定ができます)
    3. 適当な場所に“kansaku.exe”のショートカットを作る

 上記の内容は、2015年12月23日現在のものです。それよりも新しい版をダウンロードした場合は、添付されたドキュメント等の最新の情報を御確認ください。

今後の予定

 使っていないキー(の組み合わせ)を見つけたら「これは勿体ない。何かに使ってみよう」と考えてしまうのは、何も漢直だけに限らず、AZIK / ACTDvorakJPなどの拡張ローマ字入力や、花配列月配列下駄配列などのマルチストローク系や同時打鍵系の仮名配列を使っている人たちに共通する習性だろうと思います。

 それらの入力方法は多種多様で、ありとあらゆるキーの組み合わせが開拓されている筈なので、その中に漢直が入り込む空き地が残っているとはとても考えられません。しかし、それらの多くは、ローマ字テーブルのカスタマイズやキー配列の変更によって実現されています。だから、ローマ字入力には使われていないアルファベットや同時打鍵シフトには使われていないキーが確保できたら、何か別の入力方法に利用できるはずです。

 そこで、その両者を結び合わせて、(*4)漢直用のシフトキーと同時打鍵したときに特殊な記号をつけて送り出し、その記号が先頭についたローマ字を漢字に変換するという抜け道を作ってみたのです。

 各方式で使える設定ファイルをあれこれ試しながら作ってはいるのですが、今はまだ公開できる状態にはなっていません。近いうちに、順次アップしていきますので、もうしばらくお待ち下さい。


 この記事は漢直 Advent Calendar 2015のために書いたものです。


(*1) ローマ字入力は今まで通りに使えます  厳密には、若干の違いがあります。例えば、変換機能を割り当てた{空白}を漢直用の同時打鍵キーとして兼用すると、何かのキーを打った直後に素早く変換すると、同時打鍵と判定されて漢直の第1打のコードになる可能性があります。{空白}に限らず、何かの機能を持ったキーを同時打鍵シフトキーとして兼用する場合ば、打鍵のタイミングを調整する必要があります。

(*2) 特殊な記号を付けて送る  UTF-8の文字を直接送出できるキー配列変更ソフトであれば、これと同じ設定ができます。最近「やまぶきR」を試してみましたが、設定方法が簡単なので、(同時打鍵を使わない)ローマ字入力や行段系の方式に漢直を組み合わせるだけなら、「やまぶきR」をおすすめします。

(*3) 変換前の文字列の中に漢字があっても特に気にしない   つい最近、MS-IMEは、変換前の漢字を気にしないどころか交ぜ書き変換もできると聞いてびっくりしました。未変換文字列の中に漢字が直接入ってくることは通常はありえないので、これは漢直ユーザー以外にとって意味のない機能です。もしかするとMS-IMEの開発者は漢直を視野に入れているのかもしれません。そうなってくると今度は、Googleの方でも対抗して交ぜ書き変換をサポートしてくれるのではないかなどと期待(妄想)が膨らみます。

(*4) そこで、その両者を結び合わせて  というよりも、親指シフト+漢直を使っていて“漢直よみ”で登録するのが面倒になり、漢直用のキーで同時打鍵する方法を試しているうちに、「これはローマ字入力や他のいろんな方式にも応用できるぞ」と気づいたといった方が正確です。

一概には言えないけれど

 一口に漢直といっても、いろんなタイプがあるので一概には言えませんが、一般的な入力方法を使う場合とは少し異なる、漢直に特有の条件があるように思えるので、そのことについて考えてみます。

漢直に特有の条件

 まず、打ち方を知らなければキートップを見ても入力できない(*1)という点が、キートップを見ればとりあえず入力できる一般的な入力方法とは異なります。

 つまり、漢直の場合は、とにかく文字の打ち方を“覚える”ことが必要なわけですが、この“覚える”というのは頭で暗記するのとは少し違います。頭ではなく体で“覚える”のだということです。

 体で“覚える”というのも記憶には違いないのですが、それは、体の中にある自宅周辺の略図のような記憶(*2)だと思うのです。自宅周辺の地図を正確に描くことはできなくても「この大通りのラーメン屋の角を右折して、道なりに進んでコンビニの角細い道を左に入る」というような手書きの略図なら何も見なくても簡単に描けます。自宅周辺を上空から見下ろしたことはなくても、自分で何度も歩いた経験から、そういう略図をイメージできるような記憶があるわけです。きっちり90度でない角が直角になっていたり、少し曲がっている道がまっすぐであっても、それで問題ないのです。

 これをキーボードに当てはめると、実際のキーボードのキーが横方向に微妙にずれてジグザグになっていても、記憶するのはリアルなキーボードの形でなく、単純な格子状の略図だけで充分だということになります。実際のキーのずれは、使っているうちに指が無意識に補正するので、ずれているということは意識しなくなります。

 ここまでは、漢直以外の入力方法にも共通することだろうと思います。ただ、一般の入力方法の場合は、キーボード自体か原寸大の地図になっているので、普通はわさわさ略図を作ったりしないという違いはあります。

打鍵表という略図

 漢直の場合は、キーボードを見ても文字の打ち方が分からないので、略図の現物が必要になります。それが、ストローク表とか打鍵表などと呼ばれるものです。「これを打って、これを打つ」という情報が、その結果入力される文字自体の位置によってコンパクトに(平面上に折りたたまれた形式で)表現されています。

 おそらく、初めて見た人は「こんなものは、とても覚えられない」と思うでしょうが、打鍵表は“道順を確かめるための略図”なので、これ自体を丸暗記する必要はまったくありません。詳しくは、 2年前の記事3日前の記事 を御覧ください。

そこで、格子配列ですよ。

 エルゴノミック・キーボードの中には、物理的なキー配列が格子状になっているキーボードがあります。打鍵表と同じように、キーが格子状に並んでいるキーボードであれば、イメージと現物のずれを補正する必要はほとんどなくなります。だから、漢直には合うだろうと思っていたのです。

 そんなわけで、昨日のアンケートの選択肢には格子配列のキーボードだけを入れてみました。あまり大きな差がなくてホッとしているところです。

 漢直だけでなくローマ字入力やJIS仮名入力や親指シフトにも合うので、興味のある方は機会があったら一度試してみてください。


 この記事は漢直 Advent Calendar 2015のために書いたものです。

(*1) キートップを見ても入力できない 連想式の漢直なら、ある程度までは連想で打ち方が分かるようになっていますが、全部分かるわけではありません。完全な無連想式であれば、どう打てばいいのか全く見当もつきません。

(*2) 体の中にある自宅周辺の略図のような記憶 酔っ払って帰宅した経験のある方なら、足が道順を知っていることに異論はないだろうと思います。

アンケートです

 この中で漢直に合うキーボードはどれでしょうか?(選択肢はABC順です)


 この記事は漢直 Advent Calendar 2015に参加します。またまた手抜きですみません。


(2015/12/20:追記)

 御覧のように、ErgoDox、Kinesis、TypeMatrixが各2票、Trulyは1票という結果になりました。投票してくださった皆様、ありがとうございました。

 この結果を見ながら、漢直とキーボードの関係について(そもそも、なぜこの選択肢にしたのかなども含めて)何か書けないかと考えています。

はじめに

 これから書くとこは、ろくにQwerty配列のローマ字入力もJIS配列の仮名入力も打てないうちに、漢直を使い始めたという私の個人的な経験によるところが大きいので、話半分に受け取ってください。(これまで書いてきたものも五十歩百歩かもしれませんが)

 私は、MS-DOSの頃からずっと、仮名漢字変換と漢直を併用してきたので、打てない漢字があったら仮名漢字変換すればいいという楽な道を歩んできました。

 そのやり方はOSがWindowsになっても変わらず、ローマ字テーブルで漢字の打ち方を設定できるIME(CannaやWXGや松茸など)を使い続け、今はGoogle日本語入力を使っています。

 ただ、IMEのローマ字入力を使い始めた当初は、仮名や漢字が決まる前のストロークがちらちらと画面に表示されるのが、ちょっと気になりました。MS-DOSでは漢直用の常駐ソフトで、文字が決定する前のストロークを非表示にしていたからです。

 それで、未変換文字列の表示を目立たない色に変えてみましたが、それではミスタイプに気づきにくくなるので元に戻しました。結局、使っているうちに慣れてきて、あまり気にならなくなりました

日本語入力が漢直なら、英字配列の乗り換えコストは低くなる

 これまで何度かあちこちに書いたように、Dvorak配列に乗り換えたのは15年ほど前でした。その頃はもうWindowsを使っていたので、日本語の入力は漢直用のローマ字テーブルを差し換えるだけで済みます。というわけで、Qwerty配列でもDvorak配列でも日本語の打ち方に影響しないのなら、Dvorak配列に切り換えてみようという気になったのです。

 やったみたら、予想通り、Dvorak配列への移行は楽でした。とはいえ、アルファベットが以前と同じように打てるようになるには、やはり多少の時間がかかりました。でも、それほど練習していないのに、なんとなく打てるようになっていたような気もするのです。

 もしかすると、日本語入力のときにアルファベットがちらちら見えるのが(サブリミナル的に)効いているのではないかと思うのです。その証拠に、漢直では使わない周辺のキーはよくミスタイプします。ただ単に「普段はあまり使わないキーで、打ちにくい位置にあるからだ」という理由かもしれませんが。

 この件は、私の主観的な思い込みかもしれませんが、それを抜きにしても、英字配列の変更で日本語のローマ字入力まで打ち方まで変わってしまうのに比べれば、ずっと楽であることは確かです。

おわりに

 この「Dvorak配列への楽な乗り換え」を実現するには、まず漢直をやらなくてはなりません。もちろん、漢字の打ち方までマスターするにはDvorak配列をマスターするよりも時間がかかります。それでも、仮名と句読点などの打ち方だけなら、ローマ字入力と同等か、より短期間の練習(*1)で済みます。

 そうやって、日本語入力がある程度できるようになってから、英字配列を変更すればいいのです。両方いっぺんに変ってしまうから大変なのであって、ひとつずつなら何とかなるものです。

 この記事を読んで、「それなら漢直やDvorak配列を試してみよう」と思った方は、ぜひともチャレンジしてみてください。


 この記事は Dvorak Advent Calendar 2015漢直 Advent Calendar 2015 のために書いたものです。2年前の 漢直 Advent Calendar 2013のために書いた記事 とは矛盾する点もありますが、あまり気にしないでください。

(*1) ローマ字入力と同等か、より短期間の練習  英語用のキー配列を日本語のローマ字入力に使うために様々な工夫がなされていますが、少なくとも仮名の打ち方を規則的にまとめてある漢直(TUT-code, G-Code, 超絶技巧入力等)の方がシンプルで覚えやすいと言えるでしょう。ただし、仮名の入力速度で習得曲線を比較すれば、基本的に1文字あたり2打鍵以上を要する漢直は、最適化されたローマ字入力に追い越されるだろうと予想できます。根拠となるデータはありませんが、タイパーの人たちが猛スピードでタイプしている動画を見ると、いくら漢字を直接打ってもこれには追いつけないだろうという気がしてきます。

「エアー漢直」とは?

 パソコンやキーボードがなくても、いつでもどこでもできる漢直の練習法のことです。

ダウンロード

種類名称入手先備考
打鍵表 T-code tcode-stroke-table.pdf 'tcode.st.txt' を元にして補助線を入れるなどの改変をしました。(その元の'tcode.st'はEmacs用の'tc-el'のパッケージに入っていたものですか、少し古いバージョンかもしれません)
TUT-code tutcode-stroke-table.pdf 'tutcode.st.txt' を元にして補助線を入れるなどの改変をしました。(3ストロークの表もどこかにあったと思うので、見つけ次第、3ストロークの分もアップします)
G-Code gcode-stroke-table.pdf 'GC3STR.LZH'の'GC3STR.TXT'を元にしてレイアウトなどの改変をしました。

打鍵表の見方

 この打鍵表を見ただけでは何がなんだか分からないと思います。2年前の「漢直の打鍵表は、なぜ「木を見て森を見る」なのか?」を御覧ください。

練習方法

 私はこれをA4判の紙にプリントして、電車の中で読む本がなくなった時などに、気が向いたら練習しています。これをキーボードに見立ててタイプすると、結構いい練習になります。ミスタイプしても変な漢字が表示されたりしないので、とても快適です。


 この記事は漢直 Advent Calendar 2015のために大慌てで書いたものです。手抜きですみません。

そもそも何故?

 まず、何故こんな手の込んだことをやるのかについて、ざっと説明します。

 15年ほど前から、私はDvorak配列を使っています。それ以前から、日本語の入力には漢直を使っていたので、Qwerty配列からDvorak配列への乗り換えは簡単でした。漢直の設定をIMEのローマ字テーブルに入れる(*1)という方法なので、その漢直用のテーブルのローマ字部分をQwertyからDvorakに置換するだけで済みました。つまり、英字配列を変えても日本語の入力方法に影響しなかったわけです。

「JIS仮名+漢直」と「親指シフト+漢直」の違い

 今年の夏、急に、仮名入力に漢直を混ぜる方法を思いついてしまいました。漢直のストロークをローマ字入力モードで渡すのではなく、仮名入力モードで(仮名文字列として)渡してしまおうというわけです。

 実際にやってみると、JIS仮名配列ではうまくいきましたが、親指シフトの場合は「。」と「.」が区別できずに(*2)行き詰まりました。

 しかし、漢直のストロークとして扱うためには、どうしても「。」と「.」は区別できなくてはなりません。現に、これまでずっと、ローマ字入力モードの漢直では何の問題もなく「。」と「.」を区別できていたので、このやり方ならうまくいくはずです。

親指シフトをローマ字テーブルで入力する

 そこで、「。」や「.」のキーを(アルファベットとして)ローマ字入力モードのIMEに渡して、ローマ字テーブルで「。」や「.」に変換するようにしました。部分的にローマ字入力モードにはできないので、当然、他の仮名や記号等も全部ローマ字テーブルで設定することになります。ローマ字テーブルで漢直のストロークを設定するのと同じように、仮名の“よみ”とは無関係に、キーの位置とシフト状態を示す中間コードとして扱うことにするわけです。

 以下は、そのために作ったDvorakJ用の設定内容(*)です。

同時に打鍵する配列

/*
 *  encode-oyayubi-qwerty-mu-hen-sp-kana.txt
 *
 *  ・左右の親指で同時打鍵シフト入力するためのDvorakJの設定ファイルです
 *      いわゆる“親指シフト方式”に限らず、親指でシフトする方式に使用できます
 *      実際に入力する文字(列)ではなく、中間コードを出力します
 *      IMEのローマ字入力モードで目的の文字(列)に変換することを想定しています
 *
 *  ・中間コードには、通常のQwerty配列の文字を使用し、以下の記号を前置します
 *      'ô':バックスラッシュの打鍵('\'と区別するため)
 *      'ŝ':通常のシフト打鍵
 *      'ò':左親指との同時打鍵 {無変換}
 *      'ó':右親指との同時打鍵 {変換}
 *      'ō':両親指との同時打鍵 {無変換}+{変換}    (※)オプション
 *      'ė':拡張1との同時打鍵 {空白}              (※)オプション
 *      'ë':拡張2との同時打鍵 {ひらがな}          (※)オプション
 *
 *      (※)コメントで無効にしてあります(必要に応じてコメントを外してください)
 *
 *  ・これは、日本語入力用の設定ファイルです
 *      必ず「日本語入力用配列を日本語入力時にのみ使用する」を選択してください
 *
 */


/* 文字(単独打鍵) */
[
1|2|3|4|5|6|7|8|9|0|{-}|{^}|{\}|
q|w|e|r|t|y|u|i|o|p|{@}|{[}|
a|s|d|f|g|h|j|k|l|;|{:}|{]}|
z|x|c|v|b|n|m|,|.|/|ô{\}|
]


/* シフト(ŝ) + 文字 */
-shift[
ŝ1|ŝ2|ŝ3|ŝ4|ŝ5|ŝ6|ŝ7|ŝ8|ŝ9|ŝ0|ŝ{-}|ŝ{^}|ŝ{\}|
ŝq|ŝw|ŝe|ŝr|ŝt|ŝy|ŝu|ŝi|ŝo|ŝp|ŝ{@}|ŝ{[}|
ŝa|ŝs|ŝd|ŝf|ŝg|ŝh|ŝj|ŝk|ŝl|ŝ;|ŝ{:}|ŝ{]}|
ŝz|ŝx|ŝc|ŝv|ŝb|ŝn|ŝm|ŝ,|ŝ.|ŝ/|ŝô{\}|
]


/* 左親指(ò) + 文字 */
-muhenkan[
ò1|ò2|ò3|ò4|ò5|ò6|ò7|ò8|ò9|ò0|ò{-}|ò{^}|ò{\}|
òq|òw|òe|òr|òt|òy|òu|òi|òo|òp|ò{@}|ò{[}|
òa|òs|òd|òf|òg|òh|òj|òk|òl|ò;|ò{:}|ò{]}|
òz|òx|òc|òv|òb|òn|òm|ò,|ò.|ò/|òô{\}|
{無変換}|
]


/* 右親指(ó) + 文字 */
-henkan[
ó1|ó2|ó3|ó4|ó5|ó6|ó7|ó8|ó9|ó0|ó{-}|ó{^}|ó{\}|
óq|ów|óe|ór|ót|óy|óu|ói|óo|óp|ó{@}|ó{[}|
óa|ós|ód|óf|óg|óh|ój|ók|ól|ó;|ó{:}|ó{]}|
óz|óx|óc|óv|ób|ón|óm|ó,|ó.|ó/|óô{\}|
{変換}|
]

〔オプションの部分は省略します〕

 このように、敢えてDvorakJでは実際に入力する文字を指定してません。その代わりに、論理的な打鍵情報を中間コード化することに徹しています。

 文字キーの中間コードに関しては(独自の符号を用いると煩雑になるので)Qwerty配列の文字をそのまま使っています。もちろんDvorak配列バージョンを作っても構いません。

 以下のように、Google日本語入力のローマ字テーブルの「入力」欄に中間コードを入れ、「出力」欄には目的の文字を入れます。

(表1) ローマ字テーブルの設定例:親指シフト(NICOLA-J)(*4)

最上段 上段
単独左親指右親指SHIFT 単独左親指右親指SHIFT
入力出力入力出力入力出力入力出力 入力出力入力出力入力出力入力出力
1 ò1 ó1 ŝ1 q òq óq ŝq
2 ò2 ó2 ŝ2 w òw ów ŝw
3 ò3 ó3 ŝ3 e òe óe ŝe
4 ò4 ó4 ŝ4 r òr ór ŝr
5 ò5 ó5 ŝ5 t òt ót ŝt
6 ò6 ó6 ŝ6 y òy óy ŝy
7 ò7 ó7 ŝ7 u òu óu ŝu
8 ò8 ó8 ŝ8 i òi ói ŝi
9 ò9 ó9 ŝ9 o òo óo ŝo
0 ò0 ó0 ŝ0 p òp óp ŝp
- ò- ó- ŝ- @ ò@ ó@ ŝ@
^ ò^ ó^ ŝ^ [ ò[ ó[ ŝ[
\ ò\ ó\ ŝ\
中段 下段
単独左親指右親指SHIFT 単独左親指右親指SHIFT
入力出力入力出力入力出力入力出力 入力出力入力出力入力出力入力出力
a òa óa ŝa z òz óz ŝz
s òs ós ŝs x òx óx ŝx
d òd ód ŝd c òc óc ŝc
f òf óf ŝf v òv óv ŝv
g òg óg ŝg b òb ób ŝb
h òh óh ŝh n òn ón ŝn
j òj ój ŝj m òm óm ŝm
k òk ók ŝk , ò, ó, ŝ,
l òl ól ŝl . ò. ó. ŝ.
; ò; ó; ŝ; / ò/ ó/ ŝ/
: ò: ó: ŝ: ô\ òô\_ óô\ ŝô\_
] ò] ó] ŝ]

 どの打鍵でも、通常のローマ字入力の「あ」「い」「う」「え」「お」と同じように即座に仮名が入力されるので、ローマ字入力を使っている感じはしないと思います。(目を凝らしてよく見れば、何かが一瞬表示されていることは分かりますが、入力の邪魔になるほどではありません)

各種キー配列への対応

 ここまでは親指シフト(NICOLA-J)を例にして説明しましたが、各種配列用の入力ローマ字テーブルを作ることによって、TRONなどの1打鍵系の仮名配列(*5)に対応できます。また、JISや新JISを親指でシフトできるようにするなどの応用も可能です。

この続きは?

 16日の「親指シフトに漢直をじわじわ混ぜていく方法」に詳しく書く予定です。


 この記事はDvorak Advent Calendar 2015漢直 Advent Calendar 2015のために書いたものです。

(*1) 漢直の設定をIMEのローマ字テーブルに入れる 詳しくは、先日の「仮名漢|漢直」問題を御覧ください。

(*2) 親指シフトの場合は「。」と「.」が区別できずに 日本語の文章を入力する場合は「。」か「.」のどちらか片方を使うのが普通なので、IMEの方でどちらにするかを選べるようになっています。たぶん、その処理のせいで片方しか入力できないのだろうと思われます。JIS仮名配列の場合は、漢直のストロークに句読点などの記号が入らないため、このような問題が生じなかったのです。

(*3) DvorakJ用の設定内容 親指キーの組み合わせは、{無変換}と{変換}のほかに、{無変換}と{空白}、{空白}と{変換}の2種類があります。どの組み合わせでも、IMEは同じ中間コードを受け取るようになっています。

(*4) 親指シフト(NICOLA-J) NICOLA規格 | NICOLA 日本語入力コンソーシアムを参考にして、文字キーを[BS]に用いない「NICOLA-J型」を選びました。また、ここからリンクされているQ's Nicolatter 8 の配列図にならって、未定義の部分を「●」としています。

(*5) TRONなどの1打鍵系の仮名配列 漢字のストロークを単独打鍵の文字の組み合わせで確実に判定できるものであれば、どのような配列でも問題ありません。なお、TRONキーボードには左右の親指を同時に押した状態で入力する文字があるので、「両親指との同時打鍵」をオプションとして追加できるようにしました。

q2d.pl

 漢直用のローマ字テーブルをQwerty配列からDvorak配列に変換するperlスクリプトです。

#
# q2d.pl - Qwerty配列用のローマ字テーブルをDvorak配列用に変換する
#
# 使い方: perl q2d.pl < qwerty-table > dvorak-table
#
%q2d = (
	'1', '1',	'2', '2',	'3', '3',	'4', '4',	'5', '5',
	'6', '6',	'7', '7',	'8', '8',	'9', '9',	'0', '0',
	'q','\'',	'w', ',',	'e', '.',	'r', 'p',	't', 'y',
	'y', 'f',	'u', 'g',	'i', 'c',	'o', 'r',	'p', 'l',
	'a', 'a',	's', 'o',	'd', 'e',	'f', 'u',	'g', 'i',
	'h', 'd',	'j', 'h',	'k', 't',	'l', 'n',	';', 's',
	'z', ';',	'x', 'q',	'c', 'j',	'v', 'k',	'b', 'x',
	'n', 'b',	'm', 'm',	',', 'w',	'.', 'v',	'/', 'z',
#
#	'google-ime_tutc-kigo.utf'で、
#	ストローク内の【 】を【'】で代用している箇所を【-】に置換する
#
	'\'', '-',
);

while (<>) {
	chop;
	if (/^([\x20-\x7e]+)\t(.+)$/) {
		($stroke, $kanji) = ($1, $2);
		@a = split(//, $stroke);
		$stroke = "";
		for $x (@a) {
			if (defined($q2d{$x})) {
				$stroke .= $q2d{$x};
			} else {
				$stroke .= $x;
			}
		}
		printf("%s\t%s\n", $stroke, $kanji);
	} else {
		printf("%s\n", $_);
	}
}

(※) Google日本語入力のローマ字テーブルの書式に合わせています。他の書式の場合は適当に変更してお使いください。


 この記事は漢直 Advent Calendar 2015のために書いたものです。

SendKansaku.mac

 これは、私が日頃使っている秀丸エディタ用のマクロです。4年ほど前から、Windows XP, Windows Vista, Windows 7 上で使ってきましたが、安定して動作しています。

 他のテキストエディタのマクロ等でも同じことができると思います。WindowsのAPIを使っていますが、初歩的なことしかやっていないので、何をやっているのかが分かる方は、どしどし移植してみてください。

//
//      SendKansaku - 選択文字列を「漢索窓」に送る
//
Main:
    if (selecting) {
        copy2;
        call SendKansaku;
    }
    endmacro;

SendKansaku:
    ##WM_LBUTTONDBLCRICK = 0x203;
    ##WM_RBUTTONDOWN = 0x204;
    ##WM_RBUTTONUP = 0x205;
    beginclipboardread;
    $$str = getclipboard;
    if ($$str != "") {
        ##wnd = findwindowclass("kansaku");
        if (0 < ##wnd) {
            if (iskeydown(0x10) == 1) {
                ##res = sendmessage(##wnd, ##WM_RBUTTONDOWN, 0, 0);
                ##res = sendmessage(##wnd, ##WM_RBUTTONUP, 0, 0);
            } else {
                ##res = sendmessage(##wnd, ##WM_LBUTTONDBLCRICK, 0, 0);
            }
        }
    }
    return;

設定方法

  1. ファイルを新規作成して、上記の内容をコピー&ペーストする
  2. “SendKansaku.mac”という名前でマクロ用ディレクトリに保存する
  3. メニューバー→「マクロ(M)」→「マクロ登録(E...)」で“SendKansaku.mac”を適当な名前で登録する
    (以下は“SendKansaku”で登録したものとする)
  4. メニューバー→「その他(O)」→「キー割り当て(K)...」で、適当なキー(キーの名前を◎とする)に以下の要領で割り当てる
    • Ctrl+◎にマクロ“SendKansaku”を割り当てる
    • Shift+Ctrl+◎にマクロ“SendKansaku”を割り当てる

使い方

  •  漢索窓と秀丸エディタを起動して、秀丸エディタのウインドウに隠されない位置に漢索窓を移動しておく
    1. 調べたい漢字(列)を選択状態にする
    2. “SendKansaku”用のホットキー(Ctrl+◎またはShift+Ctrl+◎)を打つ
      (Ctrl+◎は漢索窓をダブルクリックするのと同じ、Shift+Ctrl+◎は漢索窓を右クリックするのと同じ動作になる)
  •  漢索窓の表示をクリアしたい場合は、空白文字を選択してCtrl+◎を打つ

 この記事は漢直 Advent Calendar 2015のために書いたものです。

イントロ的な何かの続き

 前回の記事 を書くためにWikipediaの「漢字直接入力」に関する記述 を確認しているうちに、もしかすると「仮名漢と漢直は併用できない」と思っている人が結構いるんじゃないかという気がしてきました。分類するために明瞭な境界線を引くのは百科事典としては当然のことですが、その分類用の境界線を何か実体のある隔壁のようなものだと考えると、「仮名漢と漢直は相容れない入力方式である」という誤った認識に誘導されるおそれがあります。

 誤変換ツイートを見て「そこで漢直ですよ!」なんて言ってる場合ではなかったのです。これからは、漢直に興味をもった人が「仮名漢を使うか、それとも漢直にしようか?」なんてことをつぶやいているのを見かけたら、こう返さなくてはなりません。

「仮名漢と漢直は併用できますよ!」

 そして、こんなサンプルを見せるのです。目の前で実演できればなお良いでしょう。

サンプル文を入力しているアニメーションGIF(04_fig1.gif)

 これは仮名と句読点などの打ち方をマスターした後、「仮」「名」「漢」「字」「変」「換」「直」「接」「入」「力」の打ち方だけを覚えている架空の人物が、普段の私よりもゆっくり入力している様子をキャプチャした動画です。(まだ打てない漢字は“よみ”を打ってから変換している芸の細かさに御注目ください)

 このように、最低限の仮名や句読点などの打ち方さえマスターしてしまえば、打てる漢字が全然なくても、入力できずに困るなんてことにはなりません。つまり、ローマ字入力の拡張版や2ストローク系の仮名配列などと同じようなものなのです。それに漢字が直接打てるという裏技が付いているのだと思ってください。

「これ、どうなってるの?」

 その御質問には、シンプルに「仮名漢のローマ字テーブルに漢字の打ち方を入れてあるんですよ」(*1)とお答えします。

 必要なものは、以下のリンク先から入手できます。

ダウンロード

種類名称入手先備考
日本語入力システムGoogle日本語入力 http://www.google.co.jp/intl/ja/ime/ Windows版・Mac版・Android版がある
(Windows8以上・Mac版・Android版での動作は未確認)
ローマ字テーブル TUT-Code http://www.gar.sakura.ne.jp/tut-code/software.html Qwerty配列用
(“google-ime_tutc.utf”と“google-ime_tutc-kigo.utf”を結合して別ファイルに保存したものを使う)
上記からダウンロードして結合したファイル(準備中)
(Qwerty配列用・Dvorak配列用を同梱する予定)
G-Code http://homeposition.net/gcode/download/gc3gIme.zip Qwerty配列用・Dvorak配列用が同梱されている
キー配列変更ソフト DvorakJ http://blechmusik.xii.jp/dvorakj/ Dvorak配列用のローマ字テーブルを使う場合に必要
打鍵図表示ソフト 漢索窓 https://code.google.com/p/tcode/downloads/list 漢直Winに同梱されている
(2015年12月現在の最新版は“kw128.zip”)

※ローマ字テーブルについて

インストールと設定

 必要に応じて、インストールと設定を行ってください。

  • ローマ字テーブル
    適当な場所に解凍する
  • Google日本語入力
    1. 添付されたドキュメントにしたがってインストールする
    2. ツール→プロパティで、以下のように設定する
      • 一般(基本設定)
        ローマ字入力・かな入力:ローマ字入力
        句読点:、。
        記号:「」・
      • 一般(キー設定)
        ローマ字テーブル:「編集...」→「編集」→「インポート...」でローマ字テーブルをインポートする
      • 入力補助
        自動英数変換を有効にする:オフ
        句読点変換を有効にする:オフ
    3. Google日本語入力プロパティを閉じる
  • DvorakJ
    1. 適当なフォルダに解凍して、インストールする
    2. DvorakJを起動する
    3. DvorakJの設定画面を開き、以下の設定を行う
      • 右枠の「日本語入力用配列」で、DvorakJ/data/lang/eng/Dvorakフォルダにある
        “Dvorak 配列 (英語配列キーボード版)”を選択する
        (※ローマ字テーブルで使っている記号が、日本語用のDvorak配列とは異なっているためです)
      • 右枠の「日本語入力の設定」で
        「日本語入力用配列を日本語入力時にのみ使用する(O)」を選択し、
        「かな入力用の設定で日本語入力用配列を使用する(K)」をオフにする
    4. DvorakJの設定画面を閉じる
    (※漢直Winを使って漢直する場合は、DvorakJをOFFにしてください)
  • 漢直Win
    1. 適当なフォルダに解凍する
    2. “kanchoku.ini”を適宜変更して保存する
      (※ここで選択した漢直のテーブルは、漢索窓でも使われます。また、[kansaku]セクションで漢索窓の設定ができます)
    3. 適当な場所に“kansaku.exe”のショートカットを作る

 上記の内容は、2015年12月4日現在のものです。それよりも新しい版をダウンロードした場合は、添付されたドキュメント等の最新の情報を御確認ください。


 この記事は漢直 Advent Calendar 2015のために書いたものです。

 Windows7上で「Google日本語入力+親指シフト+G-Code」(DvorakJ:ON)、ところにより「Google日本語入力+G-Code」(DvorakJ:OFF)で入力しました。


〔2015/12/13:追加〕

(*1) 「仮名漢のローマ字テーブルに漢字の打ち方を入れてあるんですよ」 漢字だけでなく仮名や記号の打ち方も通常のローマ字入力とは全然違うルールで入れてあります。

漢直はいいよー♡

 こんばんは。茂木梅吉です(もちろん嘘です)。いきなり一部の人にしか伝わらないマニアックなボケですみません。

 知る人ぞ知るというか、知ってる人と出会ったらそれだけで語り明かせるぐらいに盛り上がるというか、まあそんな感じの漢直ですが、あまり馴染みのない人にとっては謎の言葉でしょう。

 ネットで「漢直」を検索すると、「漢字直接入力」の略称だということがすぐに分かります。名探偵なら「――ということは、漢字を直接入力するってことだな……。つまり、犯人は漢字を直接入力しているに違いない!」と、一気に真相に気づいてしまうかもしれません。

漢直は漢字直接入力の略称である

 ではここで、最新の調査結果を見てみましょう。

 選択肢が「T-Code」「TUT-Code」「G-Code」「超絶技巧入力」の4つしかありません。実はこれ、全部漢直なんですが、「超絶技巧入力」を使っている人が異常に多いのが謎です。小一時間考えて、漢直のことを何も知らず「何これ?」と思った人が、かっこよさげな「超絶技巧入力」に投票したのだという結論に至りました。

 それはさておき、この4つの名前に見覚えがある方がいらっしゃるかもしれません。その方はたぶん、Wikipediaで「漢字直接入力」を調べたとき、どこかで見たのではないかと思います。

 そのどこかにある「無連想式」の説明に「ストロークから入力される漢字が連想できないもの」と書いてありますが、何かが微妙にずれています。「漢字の打ち方を覚えるための連想コードを用いず、打鍵の最適化を重視して設計されたもの」とでも言った方がしっくりします。

 上に挙げた4方式は、すべて無連想式です。それ以前にも無連想式の漢直はあったようですが、詳しい資料がないのでT-code以降の無連想式を念頭に置いて話を進めます。

無連想式は連想式よりも難しいのか

 漢字の打ち方を記憶するには連想式の方が有利です。言葉で覚えると忘れにくくなることは、掛け算の九九とか、歴史の年号や電話番号の語呂合わせなどで誰でも経験していることでしょう。それなのに、なぜわざわざ無連想式なんて覚えにくい方法にしたのだろうと疑問に思うのは当然のことです。

 そのへんのことは、T-codeを開発した山田尚勇さんの著書(*1)に詳しく書かれているのですが、ざっくり要約すると、あまり厳密ではないデータだけれども無連想式の習得は連想式に比べて特に難しいものではないようにみえるということです。また、連想式のラインプットでは漢字の頻度を考慮して最適化されているので、どっちがいいとは一概には言えません。

 私の経験からはっきり言えるのは、「練習すれば打てる漢字が増えていく」ことと「あまり使わない漢字はだんだん打てなくなっていく」ことぐらいです。運動不足で筋肉が衰えるのを防ぐために筋トレをやるのと同じようなことですね。

 そうは言っても、学業や仕事や趣味で日常的に日本語の文章を入力している人には、使えるようになるまでの練習期間は気になるでしょう。実は秘策があるのですが、それについては後日あらためて書くことにします。(乞う御期待)


 この記事は漢直 Advent Calendar 2015のためにあわてふためいて書いたものです。乱打・乱文を御容赦ください。

(*1) T-codeを開発した山田尚勇さんの著書 『コンピュータ科学者がみた日本語の表記と入力2 文字入力とテクノロジー』(山田尚勇 著・岡留剛 監修・くろしお出版・2014年・ISBN:9784874246290 C1081)の「第五部 日本文入力と認知科学」「第IX章 日本文入力技術の歴史的展開」「5 2ストローク入力方式とその変遷」を参照。

従来のローマ字入力や仮名入力に「親指でシフトする打鍵」を加えると、その打鍵が自由に使えるようになる。それを漢直に利用しようというのが「親指漢直」の基本的な考え方だ。当然、「親指でシフトする打鍵」をローマ字入力や仮名入力を楽にするために利用することもできる。 [ 続きを読む ]
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